オーク樽をテーブルにして、外国人のカップルがジンを楽しんでいる。
投宿した旅館から下駄を鳴らして温泉街を漫ろ歩く夕方、野沢温泉蒸留所を訪ねることにした。
銅板のサインボードを手がかりに、民宿が並ぶ細い道を登っていく。
えっ、こんなところにあるのと訝しみながら進むと、突然に洒落たテラスが現れた。
ガラス張りの建屋は2階の高さまで吹き抜けて、無骨な木枠の棚には真新しいオーク樽が天井まで積み上がる。
樽たちにはシングルモルトが寝かされて、琥珀たちはやがて訪れる出番を夢見て、熟成の時間を待っている。
2022年12月に開業した野沢温泉蒸留所だから、未だウイスキーをリリースしていない。
その代わり、50年の時を隔てて湧き出た雪解け水、地元産のボタニカルで抽出したクラフトジンが味わえる。
ブルーラベルの “NOZAWA” は、爽やかな味わいのシグネチャードライジン。すぎの香りがするね。
和風のテイストのボタニカルクラフトジンは、ブラックラベルの “CLASSIC DRY”、山椒が効いているね。
“IWAI” は、レモン、スモモ、桜の葉が効いている。春の味わい、新緑と祝いの季節を表現したグリーンラベルだ。
これまた春を感じる爽やかなテイストは “SHISO”、アップルウッド、赤紫蘇、青紫蘇の風味だそうだ。
ガラスの向こう、胴が鈍く光る蒸留釜を眺めながら、深い眠りにつくシングルモルトの樽に語りかけながら、
ゆっくりと食前酒のボタニカルジンとの時間を愉しんで、夏の終わりの陽は傾いていく。
さてと、旅館に戻っての宴は、水尾に北光正宗に、北信濃の酒肴を思う存分味わおう。
<40年前に街で流れたJ-POP>
夢伝説 / スターダストレビュー 1984