旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

虹色の電車と大宮八幡宮と焼き鳥は塩で 京王井の頭線を完乗!

2025-01-25 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

神泉トンネルを抜けたサーモンピンクが、駒場東大前に向けて武蔵野台地を駆け上がってくる。
前照灯を煌めかせて、グリーンに白く抜いた急行のLED表示も誇らしげに、5両編成が通過していった。

井の頭線の起点は『大人発信基地』渋谷マークシティイーストの2階部分に広がっている。
呑み人の知っている渋谷駅からすると、ずいぶんと洗練されていて隔世の感があるなぁ。
この休日は学生時代にお世話になった井の頭線を、途中下車しながら小さな旅をしたい。

アイボリーホワイトの5両編成が急行の後を追うように1番線を発つと、直ぐに渋谷トンネルに飛び込む。
暗闇を抜けると一瞬の明かり区間を挟んで神泉駅、ここはすでに神泉トンネルの中。
ボクの知っているこの駅、前寄りか後寄りか2両がホームにかからなかった覚えがあるのだが、
今は全てのドアが開くんだね、いやぁ旧い話で申し訳ありません。

渋谷から6分、アイボリーホワイトは小田急線と交差する下北沢駅に滑り込む。
「若者の街」「サブカルチャーの街」など、通称に事欠くことがない「シモキタ」は若者を魅了してきた。

そんな文化の発信基地の一つが「本多劇場」で、この日も開場待ちの観客が列を作っていた。

ちょっと中心街から外れて「ザ・スズナリ」は、それこそ昭和な匂いがプンプンする小劇場。
階下の「鈴なり横丁」で一度呑んでみたい気もするけれど、オヤジはお呼びで無いかも知れないね。

さらに下北沢から5分、オレンジベージュが滑り込む明大前駅、頭上を京王線が横切っている。
続く永福町駅は路線延長のちょうど半ば、この駅では渋谷行きも吉祥寺行きも急行の通過待ちがある。

コンコースのガラス面には「#永遠に幸せな町」なるほど良いフレーズだね。途中下車したくなる。

駅から15分、大宮八幡宮まで歩いてみる。学生時代、善福寺川緑地を歩いて何度か訪ねたなぁ。
応神天皇が主祭神の八幡宮は、前九年の役を鎮めた源頼義が、その凱旋の帰路に創建したという。

4年間暮らした浜田山を発車したライトブルーは、緩やかに左カーブしながら環八を跨ぐ高架を上がる。
ここに聳える杉並清掃工場の煙突は、風呂なし6畳のアパートからも存在感があった。

高架を降りた5両編成は富士見ヶ丘駅に滑り込む。
隣接する検車区は井の頭線のレインボーカラー29編成145両の塒だ。3色並んだ姿がなかなかキレイだ。

終点を目前に井の頭公園駅にも途中下車したい。
知らないうちに瀟洒な駅舎に建て替わって、閑静な住宅地によく似合っているね。

井の頭公園が白鳥の飛来地とは知らなかった。ざっと数えて30羽が狭い池尻に集まって、
優雅なイメージとは裏腹に、バチャバチャとけたたましく外輪が水面を叩いている。

5両編成のライトブルーは神田川を渡ると、緩やかなカーブと勾配で吉祥寺駅への高架を上っていく。
乗り通せば各駅停車でさえ僅か30分、油圧ダンパの車止めに行く手を塞がれ、短い旅は呆気なく終わった。

キラリナ京王吉祥寺というらしい。新しい駅ビルは壁面緑化を施して、見る人の目に優しい。
井の頭通りに並行した末広通りは、老若男女が溢れ出して、賑わいを醸している。さぁ呑みに行こうか。

吉祥寺駅前交差点に立ったらその店はすぐに見つかる。
真っ昼間から赤ちょうちんが灯り、間口からは濛々と白い煙を吐いている。
「いせや総本店」は昭和3年創業の老舗であり、吉田類酒場放浪記のオープニング店の店でもある。

混んでいる店であっても、おひとり様は案外入り易い。ほどなくカウンターに席を占める。
冷たい “生ビール” と 名物の大ぶりな “手作りシューマイ” で始める。辛子をたっぷりつけて美味しい。 

皮が厚めで素朴な “冷やしトマト” が良い。昭和っぽいよね。これっ箸休めに最高。
二杯目は “レモンサワー”、これがかなり酸っぱくて焼き鳥にはピッタリだと思う。

相変わらず焼き台から煙と匂いが襲いかかってきて目が痛い。でもなんだか楽しいね。
目を瞬きながら “ひなどり”、“つくね”、“ネギ” を焼いてもらう。ボクは圧倒的に塩が好きだ。
お代わりは “梅酒ロック” を、やっぱり酸っぱいのが焼き鳥には合いそうだ。

井の頭線とその沿線は、呑み人にとっては懐かしさと新しい発見が相まって、とても楽しい旅となった。
それにしてもダウンジャケットもニット帽も、犬が付いて来そうなくらい焼き鳥の匂いに塗れたね。
帰り道にボクとお乗り合わせた方には、寛大な心でお許しをいただきたい。

京王井の頭線 渋谷〜吉祥寺 12.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
ハートのイアリング / 松田聖子 1984



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