少なからず失望した小泉首相・・・

　うっとうしい梅雨の最中のイライラに加えて、国内では連日悪質な事件や悲劇が繰り返されているのに、小泉首相は在任５年間の卒業旅行ではなかろうが、お気楽にアメリカ・カナダを訪問中である。昨日のニュースでは、念願のエルヴィス・プレスリー邸を訪れ、大ファンの首相は大はしゃぎ、また、ナイアガラの滝観光ではリラックスしている様子が見られた。会期延長もなく先送りした法案は後継者に任せ、もうあとは任期満了を待つばかりの気楽なご身分のようにお見受けする。

　昨年の衆議院解散、総選挙で圧勝した小泉内閣に、国民は「郵政民営化関連法案」成立を突破口に、構造改革、行政改革推進に向けて大いに期待した。しかし、小泉首相の５年間の功罪を考えるとき、私はなぜか失望感を覚える。難しいことや細部までは分らぬが、我々が生活する上で関係ある事例だけを見ても、メリットよりデメリットの方が多く、高齢者や弱者は暮らしにくい社会になりつつあるように思われる。
　長年の悲願であった「郵政民営化」が成立、来年９月から実施されるが、サービス低下はないと明言されたにも関わらず、再編リストでは、全国の1048郵便局で集配業務が廃止されることが判明した。それも大都市では少なく、地方に行くほどその数は多くなっている。民営化されれば収益向上が重視されるのは当たり前で、こうやって一つずつ切り捨てられてゆくのだろう。
　そして、年金制度問題では社保庁の旧悪・現悪の不祥事が暴露され、制度そのものは何一つ改革されていない。保険料は上がり、受給額は目減りするばかりで、公務員への優遇だけが目立つ。
　さらに、税制面では、配偶者特別控除廃止・老年者控除廃止で県民税・住民税が軒並み大幅に上がったそうである。そして、所得税・住民税の定率減税半減、酒税見直しで一部増税、たばこ税の増税、おまけに今秋には消費税アップが論議され、2009年には最低３％アップは確実らしい。
　また、医療制度改革は、高齢者の医療費窓口負担増、高額医療費の自己負担限度額増、さらに療養病床・福祉施設においても食費・居住費負担増となるなど、老後の生活は不安になるばかりだ。

　小泉流は旧来の政治システムに風穴を開けたのが功罪の功、光の部分であるといわれるが、「勝ち組」「負け組」に象徴される生活格差、所得格差、地域格差、教育格差などが拡大、社会不安を助長したことも確かである。天下り廃止も中途半端、公務員削減も掛け声ばかり、日中・日韓関係悪化、自衛隊イラク派遣、在日米軍再編費用負担、米国産牛肉の輸入再開など、積み残した課題は多い。
　確かに人の言うことを聞かぬ、他に追従、迎合しない点では、変人小泉純一郎首相も悪くはない。その点から言えば後継者候補のお歴々にはアクの強さがなく、何か物足りない感じがするのだが……。