つれづれに 

老いてゆく日々、興味ある出来事に私見を添えた、オールドレディーの雑記帳です。

介護殺人、涙を誘った法廷・・・

2006-06-30 | Weblog
 28日のNHK番組のクローズアップ現代は、「防げなかった悲劇~相次ぐ介護心中・殺人事件~」であった。事件の概要をくわしく知っていただくために『毎日新聞 4・20』より全てを引用したが、番組放送中で紹介されたときも、これを読んでいるときも涙を止められなかった。「母と一緒に生きたかった」と彼は言ったそうだが、母親への追慕の情が込められた痛恨の一言であろう。

 『認知症の母親(86)の介護で生活苦に陥り、相談の上で殺害したとして承諾殺人などの罪に問われた京都市伏見区の無職K被告(54)の初公判が20日、京都地裁であった。K被告が起訴事実を認めた後、検察側がK被告が献身的に介護をしながら失職などを経て追いつめられていく過程を詳述。殺害時の2人のやりとりや、「母の命を奪ったが、もう一度母の子に生まれたい」という供述も紹介。目を赤くした裁判官が言葉を詰まらせ、刑務官も涙をこらえるようにまばたきするなど、法廷は静まり返った。
 事件は今年2月1日朝、京都市伏見区の桂川河川敷で、車椅子の高齢女性とK被告が倒れているのを通行人が発見。女性は当時86歳だった母で死亡、K被告は首から血を流していたが、一命を取りとめた。
 検察側の冒頭陳述によると、K被告は両親と3人暮しだったが、95年に父が死亡。そのころからく母に認知症の症状が出始め、1人で介護した。母は2005年4月ごろから昼夜が逆転、徘徊で警察に保護されるなど症状が進行した。K被告は休職してデイケアを利用したが介護負担は軽減せず、9月に退職。生活保護は、失業給付金などを理由に認められなかった。介護と両立する仕事は見つからず、12月に失業保険の給付がストップ。カードローンの借り出しも限度額に達し、デイケア費やアパート代が払えなくなり、2006年1月31日に心中を決意した。
 「最後の親孝行に」。K被告はこの日、車椅子の母を連れて京都市内を観光し、2月1日早朝、同市伏見区の桂川河川敷の遊歩道で「もう生きられへん。ここで終わりやで」などと言うと、母は「そうか、あかんか。康晴、一緒やで」と答えた。K被告が「すまんな」と謝ると、母は「こっちに来い」と呼び、K被告が額を母の額にくっつけると、母は「康晴はわしの子や。わしがやったる」と言った。この言葉を聞いて、K被告は殺害を決意し、母の首を絞めて殺害、自分も包丁で首を切って自殺を図った』というものである。

 このK被告の場合、生活保護が認められなかった理由をケアマネージャーが福祉事務所に問い合わせたところ、個人情報保護法をたてに答えられないという返事だったという。ケース・バイ・ケースで臨機応変に対処できない杓子定規なお役所仕事が、こういった事件の根にあることを認識し、今後適切な対策がなされることを願う。
 介護保険制度が始まって6年経つにもかかわらず、介護に疲れ、生活苦の末に、追いつめられた家族による殺人・心中事件が、今年に入ってすでに10件以上も起きているとか。介護保険の真の目的とは何か、介護保険で安心した老後が過ごせるのかと、つくづく考えさせられた事件であった。
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2 コメント

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とても悲しい事です。 (名無し)
2009-09-13 22:13:32
子供が親を殺さなければならない社会なんて。。。
涙がとまりませんでした。このような事件が無くなることを祈ります。
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Unknown (オールドレディー)
2009-09-14 08:43:43
コメントありがとう。

先日も妻の介護疲れで心中を図った夫に保護観察付きの執行猶予の判決が出た裁判がありました。
「今でも妻を愛している」という夫の悲痛な叫びが心に響きました。

介護の大変さは当事者でないと分からないといいます。お金さえあれば、人の助けがあれば救われる命、でも制度は杓子定規な対応しかしてくれません。
政権が変わって、少しでも介護制度がよくなることを期待しています。
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