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『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』

2005年02月16日 | 読書日記ーフランス
ゴーチエ作 田辺貞之助訳(岩波文庫)


《あらすじ》

フランス文学の魔術師テオフィル・ゴーチエ(1811
-72)の傑作短篇5篇を選び収める。ヨーロッパで
もっとも傑れた吸血鬼小説の一つと賞される
「死霊の恋」、青年のよせる烈しい思慕に古代
ポンペイの麗人が甦る「ポンペイ夜話」など、
いずれも愛と美と夢に彩られたあでやかな幻想
の世界へと読者をいざなう。


《この一文》

” しかも、わしは命が、刻々に水かさをまし、堰を切ってあふれる湖水のように、胸のうちに高まるのを感じました。血は脈管のなかで力づよく高鳴り、長いあいだおさえつけていた若さは、まるで花をつけるのに百年の歳月を要するアロエが雷のはためく音をたてて咲きいでるように、一時に爆発しました。
          --「死霊の恋」より    ”



幻想的です。
私が読むものにしては珍しく吸血鬼や悪魔がでてきます。
(そうでもないか。〈例〉『巨匠とマルガリータ』など多数)
描写がとても美しいです。ロマンです。
この本に収められた作品の中では、この「死霊の恋」がとりわけよく出来ていると思います。
恋と信仰の間で主人公は激しく揺れ動くのですが、そのあたりの展開が魅力的です。
う~む、面白い。
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にらみあってます

2005年02月14日 | 手作り日記
先日、近所の雑貨屋さんでとても素敵なクリップを見つけました。
書類を挟むと写真のようにちゃんと起き上がっておさまるので、とても可愛いです。
そして、「宝くじ」の招き猫のキーホルダーはK氏がロト6を買った時に
もらったそうです。
もともとはこの招き猫の顔は、目が一本線で和風なお顔だちだったのですが、
私が古代エジプト風なぱっちりした目を描き加えてあげました。(←「手作り日記」の部分)
両者がにらみあっていると、なにか近寄りがたい雰囲気を感じてしまいます。
私ときたら本当に暇ですね。
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『世界終末十億年前 異常な状況で発見された手記』

2005年02月12日 | 読書日記ーストルガツキイ
A&B・ストルガツキイ 深見弾訳(群像社)


《あらすじ》

天才的な科学者たちを突如襲う超自然現象。おそるべき力を発揮する見えざる意志は正体を現さず、彼らが研究から手を引くように脅迫するが・・・・。


《この一文》

” するとまた、ぼくの腹の中を見透かしたかのように、彼女がいった。
 「それに、あなたがどんな結論を下すかなんてことは、ぜんぜん問題にならないわ。肝心なのは、そういう発見をする能力があなたにあるってことよ・・・なにが問題なのかということぐらい話してくれてもいいでしょ? それとも、それもいえないことなの?」  ”


うお~、面白い!
今年はファンタジー年間にする予定だったのですが、
「ストルガツキイ祭り」が大変な盛り上がりをみせています。
まあ、ファンタジーはファンタジーですよね。
なぜストルガツキイという名前がもっと有名にならないのか、とっても不思議です。
あるいは知らなかったのは私だけで、業界(多分SF業界)では有名なんでしょうか。

『滅びの都』『そろそろ登れカタツムリ』の2作品とは少し違った雰囲気でした。
前の2作品も滅茶苦茶面白いのですが、今回の『世界終末十億年前』は、テーマとしてはドーマルの『類推の山』、コリン・ウィルソンの『賢者の石』に通じるものがあるような気がします。

昨夜は混乱してなかなか寝つけませんでした。
真理をもとめるというのはどういう態度をいうのか。
真理って何だ?
破滅に至る道があるとして、それが真理ならば避けられない道であると思っていたけれど、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
真理って何だ?
気が遠くなってきました。
ストルガツキイ、次は何を読もう。
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『対訳 ブレイク詩集』

2005年02月10日 | 読書日記ー英米
松島正一編(岩波文庫)



《内容》

「虎よ、虎よ、輝き燃える/
夜の森のなかで・・・」(「虎」)
--彫版師、画家、預言者
・・・と多面的な顔をもつイ
ギリスの詩人ウィリアム・
q`1827)。『無
垢と経験の歌』『セルの書』
『天国と地獄の結婚』『私的
素描』など、イギリス・ロ
マン派のさきがけとなった詩人
の神秘的な幻想詩のエッセンス
を対訳形式で収録。


《この一節》

”Truth can never be told so as to be understood,and not be believ'd.
 Enough! or Too much.

 理解されるように語られても信じられない真理というものはありえない。
 十分に! または十分以上に。

            --『天国と地獄の結婚』「地獄の格言」より ”

” Arise, and drink your bliss, for every thing that lives is holy!

 起きなさい、おまえの至福を飲みなさい。なぜなら生けるものはすべて神聖なのです!

            --『アルビヨンの娘たちの幻覚』より ”

”  Auguries of innocence

 To see a World in a Grain of Sand
 And a Heaven in a Wild Flower,
 Hold Infinity in the palm of your hand
 And Eternity in an hour.

   無垢の予兆

 一粒の砂にも世界を
 一輪の野の花にも天国を見、
 君の掌のうちに無限を
 一時のうちに永遠を握る。          
             --『ピカリング稿本』より”


ウィリアム・ブレイクのことを長らく知らずにいた私ですが、勉強はしなければならないものですね。
そんな苦い記憶と結びついているブレイク--。
それはともかく、この人の詩は読めば読む程知りたくなるような魅力があります。
特に『天国と地獄の結婚』に興味があるのでした。
岩波文庫に収められている部分からはわかりませんが、《青空文庫》にて訳されているのを読んだ時は、凄く衝撃を受けました。
う~む、面白い。
いくつかの詩に何度か登場する「生けるすべてのものは神聖である」という宣言は、常に私の心に響き続けています。
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『暴君 ベビネロ 暴君ハバネロ幼年時代』

2005年02月09日 | 読書ー雑記
(東ハト)


《この一文》

”ベビーに何が起きたのか!?
 後年、世界を絶叫させる
 あの暴君にも、
 心やさしき時代があった!
 思いやりと正義感。母への想い。
 世界への愛。
 しかし、抑えきれない
 辛さへの衝動が
 少年に芽生えはじめていた--。
 暴君ハバネロ、幼き日の
 意外なウマさが今明かされる!  ”



お菓子です。
今話題の激辛菓子「暴君ハバネロ」の辛さを控えめにしたものです。
どこが「読書日記」なのかという感じですが、包装の裏に書いてある
宣伝文句が非常に面白いのです。
久しぶりの傑作でした。
一体どんな人が考えたのでしょうか。
恐ろしいほどの文章力!
面白過ぎます。
は、母への想い。!!。

お菓子の宣伝文句はたまに超ド級の名文にでくわすので、侮れません。
焼き菓子などがとてもおいしい「ブールミッシュ」というお店の
チョコスフレか何かの説明文でも2週間ほど笑いました。
いいなあ、私もこんなふうに面白い文章が書きたいものだ~、
と思いつつ、いつもおいしくいただいております。
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『そろそろ登れカタツムリ』

2005年02月08日 | 読書日記ーストルガツキイ
A&B・ストルガツキイ 深見弾訳(群像社)



《あらすじ》
偉大な力を持つ森の謎を究明する男と森を外から管理する男。
森のなかで子をはらみ森とともに生きる女たち。変態する「森」にもてあそばれる人間に未来はあるのか?
政治的圧力のなかで全貌が明らかにされるまで四半世紀を要した幻の作品のパラレル・ワールド。


《この一文》

”「あなたって人はまだ赤ん坊なのね。」彼女がいった。「この世には愛と食物と誇り以外にはなにもないということがどうしてわからないの。もちろん、なにもかももつれてしまって糸玉のようになっているのよ。でもどの糸をひっぱっても、かならず愛か権力か食物にいきつくはずだわ・・・」
 「いや」ペーレツがいった。「そんなのはごめんだ」
 「いいこと」彼女は静かにいった。「あなたが望むか望まないかなんてことはどうだっていいの・・・わたしはあなたに訊ねているのよ、ペールチク、なにを夢みているの? まだ他になにがいるのよ?」   ”



『滅びの都』(12月17日の記事を参照ください)に引き続き、2冊目のストルガツキイです。
相変わらず最初のほうは何だかよくわからなくて読むのが辛いのですが、少しずつ少しずつ、状況が把握できてくると、もう止まりません。
2冊読んでみて、ストルガツキイとはこのさきも長くつきあっていきそうな予感がします。
私にはやや難しい内容なのですが、そこがまた良いのでしょう。
いつかもっとわかるようになる日が来るかもしれないと思うと、また楽しくなります。

邦題の『そろそろ登れカタツムリ』というのは、この作品の最初に引用されている

かたつむり そろそろ登れ 富士の山   一茶

からとったそうです。原題を直訳すると『坂のうえのカタツムリ』となるところを、訳者の方の考えでこのようにされたとのこと。
私も『そろそろ登れカタツムリ』のほうが物語の内容にも合っていると思います。
それにしても妙にしっくりくる言葉の響きと思ったら、俳句だったのか、道理で。

すでに同じ人の『世界終末十億年前』を借りてきてあります。
はやく読まなくては。
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『なめくじ艦隊』

2005年02月06日 | 読書日記ー日本
古今亭志ん生 (ちくま文庫)



《内容》

「あたしはちょうど、うちにおったなめくじみたいに、切られようが突かれようがケロンとして、ものに動ぜず、人に頼らず、ヌラリクラリとこの世のなかの荒波をくぐり抜け・・・」(本文より)。酒がいっぱいあるということで満州行を決意した話など、酒、女、バクチ、芸をしみじみと語り、五代目古今亭志ん生の人柄がにじみでた半生記。


《この一文》

” 地面がひくくって、ジメジメと湿気が多いもんだから、ナメクジ族にとっちゃまたとない別天地・・・雨あがりのあとなんざァちょうど、日本海軍がはなやかだったかつての大艦隊のように、戦艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦と、大型小型のいりまじった、なめくじ連合艦隊が、夜となく昼となく、四方八方からいさましく攻めよせてくる。
  そればかりではない、夜になると、蚊軍の襲撃がまたものすごい、ものを言うてえと、ウワーと口の中へ蚊の群がとびこむんで、口をきくのも飯を食うのも、すべては蚊帳の中というしだいで、その防戦にはイヤハヤなやまされたもんですよ。
          ---「まくら」より ”



予約してあった本を借りに図書館へ行ってふと目に止まったので手に取ったが最後、ついそのままそこで読破してしまいました。
大変に面白いです。
以前から読んでみたいとは思っていたのですが、はやく読めば良かったです。
落語家特有の語り口というか、江戸ことばというか、すらすらと読んでしまいました。
志ん生さんというのは非常にエネルギーに満ちた人だったのだな、と感服しました。
芸で身を立てる人というのはこうでないといけないのかもしれません。
酒ばかり飲んで、借金もあって、借家も追い出されて・・・と次々と苦労の種が増え続けるのに何とか乗り切る姿はほとんど感動的です。
それにくらべると、私は明日の御飯を心配する必要もないくらい恵まれた生活を送っていながら、随分と消極的過ぎて、チャンスを見逃していることも多いのだろうと激しく反省しています。
私にはエネルギーも信念も足りません、そろそろ覚悟を決めなければならないでしょう。
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ブックカバーを作ってみた(その3)

2005年02月05日 | 手作り日記
製作期間が3日にも及んだ理由のひとつとして、同時にもうひとつ作っていたことも
あるでしょうか。
一応、友人の希望通りの「黄色」でも作っておいたほうがいいかなー、と心配になった
肝の小さい私。
せっかく作ったので、頼まれてはいないのですが、ふたつとも差し上げたいと思っています。
もちろん、それ以前に気に入ってくれるかどうかわかりませんけれど。
ふたつあれば、春夏は黄色、秋冬はオレンジ色、と使い分けできて楽しいんじゃないかなー、
と言って勧誘する予定なのでした。
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ブックカバーを作ってみた(その2)

2005年02月05日 | 手作り日記
この3日間というもの、全精力を傾けて、ブックカバーを製作していました。
なぜ3日もかかるのか・・・。
のろい、のろ過ぎます。
まあ、とりあえず出来たので、あとは友人の気に入ることを願います。
布見本を見せた段階では「黄色でお願い」と言われていたのに、
全く人の話を聞いていません。
結局私の好みで作ってしまいました。
それでも、電車の中で読む用に切符を入れるところを作ってほしい、
という要望は力の限り実現したつもりです。
写真のように、メトロカードも入れられるようにしました。(横向きだけど・・・)
切符は鳥型に切り抜いたところから差し込めるようになっています。(多分)

今回も詩を引用しました。

”あなたのなかで私は生きる、あなたが側にいなくとも。
 自分だけでは死んでいる、現にここに在りながら。
 どれほど遠く離れていようと、あなたはいつも側に在り、
 どれほどこの身が近かろうと、それだけでは私は不在。
  私が自分のなかよりもはるかにあなたのなかで生きるゆえ 
 自然が侮辱を受けたと感じるとしても、
 平然と働き、私のこの罰当たりの肉体に
 魂を注ぎ込んでくれる高き力が、
 自分だけでは本質を欠いたままである魂と見てとって、
 あなたのなかで拡充してくれる、これが最大限可能な大きさと。

   モーリス・セーヴ「デリー 144番」(『フランス名詩選』岩波文庫)より”

最初の2行を引用しました。
気持ちがこもりすぎて、いささか重くなったかもしれません。
でも、喜んでくれるといいなあ。
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『美しい水死人 ラテンアメリカ文学アンソロジー』

2005年02月02日 | 読書日記ーラテンアメリカ
ガルシア=マルケスほか 木村榮一ほか訳(福武文庫)


《内容》

浜辺に打ち上げられた巨大な物体。絡みつく
藻やゴミを取り除いて現われた水死体のあま
りの美しさに、村の人々は息をのみ、何くれと
なく世話を焼く。ガルシア=マルケスの表題作
「美しい水死人」をはじめ、17人の作家が、独特
の時間の流れの中に織りなされる日常と幻想
の交歓を描く。豊穣なラテンアメリカ文学の
薫りをあますところなく伝える短編集。


《この一文》

” 誰の言うこともきかず、ふざけていたずらばかりしていた。来客があると、その人の鼻をねじってみたり、玄関先に集金人が現われると平手打ちをくらわせたりした。また、自分のことを知らない人がやってくると、わざと、目につくところに寝そべって<死んだふり>をするのだが、そのあとだしぬけに卑猥な指形を作ってみせた。かつての主人である司令官の顎を軽く叩くのがひどく気に入っていたが、蠅がうるさくまとわりついたりすると根気よく追い払ってやったものだった。司令官は出来の悪い息子でも見るように、そんな手をうっすら涙を浮かべ、やさしい目でじっと見つめていた。
         -アルフォンソ・レイエス「アランダ司令官の手」より”


買ったのはもう随分と前のことですが、貴重な一冊です。
ラテンアメリカ文学をまとめて楽しむことができます。
他ではあまり読めないような作家も取りあげられているので、かなりの価値があります。
引用した「アランダ司令官の手」は、この本の一番最初に収められているのですが、初っ端からものすごい衝撃でした。
アランダ司令官は戦闘で右手首を失ってしまうのですが、記念としてその右手を大切に保管していたところ、実はまだ右手は生きていて、そのうち自我を持ち、好き勝手に動き回るようになった、そして--。
すごい設定です。
そして結末にまたびっくりです。
何度読んでも面白いのでした。
他にも、フアン・ルルフォ、ガルシア=マルケス、カルロス・フエンテス、ビオイ=カサーレス、フリオ・コルタサルなどなど、豪華絢爛の構成となっています。
全ての物語がはずれなしの面白さなのでございます。
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