The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

BBCドラマ『そして誰もいなくなった』

2018-01-06 | アガサ・クリスティ
BBC ”And Then There Were None”


英国BBCにより制作され、2016年に放送されたドラマです。 (3エピソード)

数か月前にBSで放送された時、吹き替え版であった為途中で脱落しまして 字幕版を待っていた
のですが 今回AXNミステリーでもやはり吹き替え版で(残念!)、仕方なく(暴言)吹き替え版
で視聴しました。

原作は1939年発行された アガサ・クリスティーによる作品
クローズド・サークル、童謡による見立て殺人の代表作と言われ、彼女の作品の中でも最も評価
人気共に高い作品の1つとされています。

過去にも何度か映画化、ドラマ化された作品ですが、他の作品も観た様な曖昧な記憶があるものの
すっかり忘却の彼方。 原作も大昔読んだきりだったので、今回再読しました。

原作を読んでいない方、そして、これからドラマをご覧になる方の為になるべくネタバレしない様
に書くつもりですが・・・・。

脚本 : サラ・フェルプス
演出 : クレイグ・ヴィヴェイロス
原作 : アガサ・クリスティー

出演
アンソニー・マーストン : ダグラス・ブース
ロレンス・ウォーグレイヴ : チャールズ・ダンス
ヴェラ・クレイソーン : メイヴ・ダーモディー
ウィリアム・ブロア : バーン・ゴーマン
エセル・ロジャーズ : アンナ・マックスウェル・マーティン
ジョン・マッカーサー : サム・ニール
エミリー・ブレント : ミランダ・リチャードソン
エドワード・アームストロング : トビー・スティーブンス
トマス・ロジャーズ : ノア・テイラー
フィリップ・ロンバード : エイダン・ターナー
派手では無いですが豪華なキャストです。

舞台は原作と同じ1939年の設定です。
イギリス、デヴォン州にある孤島 ”兵隊島”にある屋敷に招待された男女8人。 そこで執事の
ロジャース夫妻に迎えられる。 全員お互いに面識はなく、皆主人のオーウェン夫妻からの招待
状により集まって来た人々。



招かれた人々は招待者のオーウェン夫妻を直接知っている者はおらず、又当の招待者も後から来
るとの事で不在。

高名な判事であるウォーグレイヴ、家庭教師のヴェラ、元陸軍大佐のロンバード、皮肉屋の老婦人
エミリー、退役した将軍マッカーサー、医師のアームストロング、遊び人のマーストン、元警部
のブロア。そして同じく雇われただけの執事ロジャースとその妻で料理人のエセルの10人。

招待された理由は全員異なり、何となく不審に思いながらも島に集まった8人(プラス2人)

招待者の各部屋にはわらべ歌「10人の兵隊」の詩が飾られている。
そして食卓には10体の人形が置かれていた。 (この人形像は他作品ではインディアン人形
だったり、兵隊人形だったりした記憶があるのですが、この作品の像はデフォルメされた人形像)


初日の夕食後突然スピーカーからオーウェン氏らしき人物の声が流され 集まった10人がそれ
ぞれ過去に犯した罪が法で裁かれず過ごしている事を糾弾する。
当然ながら全員動揺しつつ その言葉を否定したり、言い訳したり認めようとしないが、それ
ぞれは心の奥底に潜んでいた過去の罪の記憶にさいなまれ始める。

そして、その晩アンソニー・マーストンが飲み物を飲んだ食後急死する。
死因が毒殺であると判明した直後、例の人形が1つ減って9個になっていた。
その後、ロジャースの妻が、そして続いて1人づつ殺されていく。
そして、その死に方は わらべ歌「10人の兵隊さん」になぞらえられ、そして、飾られていた人形
の数が1つづつ減っていく。

「10人の兵隊さん」”Ten Little Solgier Boys” の内容は :

Ten little Soldier boys went out to dine;
One choked his little self and then there were nine.  
10人の兵士が食事に行った。1人がのどを詰まらせて9人になった

Nine little Soldier boys sat up very late;
One overslept himself and then there were eight.
9人の兵士が夜更かしをした。1人が寝坊をして8人になった。

Eight little Soldier boys traveling in Devon ;
One said he’d stay there and then there were seven.  
8人の兵士がデヴォンを旅した。1人がそこに残り7人になった。

Seven little Soldier boys chopping up sticks;
One chopped himself in halves and then there were six.  
7人の兵士がまき割をした。1人が自分を真っ二つにして6人になった。

Six little Soldier boys playing with a hive;
A bumblebee stung one and then there were five.  
6人の兵士がハチの巣で遊んだ。 1人が蜂に刺されて5人になった。

Five little Soldier boys going in for law;
One got into Chancery and then there were four.
5人の兵士が法律を志した。1人が大法官府に入って4人になった。

Four little Soldier boys going out to sea;。
A red herring swallowed one and then there were three.
4人の兵士が海に出掛けた。1人が燻製のニシンに飲まれて3人になった。

Three little Soldier boys walking in the zoo;
A big bear hugged one and then there were two.
3人の兵士が動物園を歩いた。1人が大きなクマに抱きしめられて2人になった。

Two little Soldier boys playing in the sun;
One got frizzled up and then there was One.
2人の兵士が日光浴をしていた。 1人が焼け焦げて1人になった。

One little Soldier boy left all alone;
He went out and hanged himself and then there were none.
1人の兵士があとに残された。自分で首を括って、そして誰もいなくなった

招待者の名前、”O.N.Owen” は入れ替えると ”Unknown” (誰でもない)と気付き オーウェンが実在
しない事が判明する。 では、この招待者は誰なのか? 
屋敷の中には他に誰もいない筈、或は殺人鬼が何処かに隠れているのではない、それとも招かれた招
待客の1人が犯人なのではないか・・・・。

外界から閉ざされた孤島から脱出する事も出来ない状況の中、残された人間達は追い詰められ、お互
いに不信感を抱き疑い、そんな極限状態の中生き延びようと必死になる。
又、それぞれが犯した犯罪の記憶が映像可され挿入されるので それぞれの状況が分かりやすく丁寧
に描かれている。

3話構成ですが、最初の2人の犠牲者が出るまでは1話使っていますが、その後ピッチが上がり次第に
緊迫感が増す構成になっている様で原作を知っていてもハラハラ感が募って来ます。

後半はヴェラに視点が充てられていて 記憶のフラッシュ・バックシーンが多く入れられているので 
彼女が糾弾されていた犯行の経緯が丁寧に描かれています。
そして、次第に追い詰められて精神的に究極状態になって来たヴェラの表情がどんどん変化してきて、
髪を振り乱し、顔色が悪くなり、目の下にクマが出て狂気をはらんだ迫真の演技が際立ってきます。

全体を通してかなり原作に近い構成になっていると思いますが、ただラストだけが原作と大きく違っ
ていて 最後の1人の前に犯人が姿を現し 何故自分がこの様な犯行を決行するに至ったかを話す作
り方になっていて、これは評価が分かれる部分かもしれませんが、犯人の心情が分かりやすく描かれ
ている様にも思えます。
(原作では犯人が経緯を書き残したボトルレターを海に捨て、偶然拾った刑事達が真相を知るという
経緯だったと思います。) 

経験豊かな出演者達の演技に惹きつけられ、中でもウォーグレイブ判事を演じるチャールズ・ダンス
はあちこちでお見かけするんですけど、何と言っても”ゲーム・オブ・スローンズ”のタイウィン・
ラニスタ―ですよね。 冷徹な眼差しや傲慢な雰囲気を醸し出すのがお上手(偉そう)で強烈な印
象で 存在感がある俳優さんだと思います。

それと、マッカーサー元将軍のサム・ニールも懐かしかったし、ブロア元刑事のバーン・ゴーマンは
”トーチ・ウッド”で初めて知って以来随分アチコチで見かけます。”ゲーム・オブ・スローンズや、
”ドクター・モーガンの事件簿”等々にも。

この作品で目立っちゃったのは、ロンバートを演じたエイダン・ターナー。 もう無駄にセクシーさ
全開でね。
腰にタオルのシーンは、オイオイ、危ないじゃないか?とついつい気になってしまって・・・・。
↓ これですもん!

(これは、ロンバートが持ち込んだ銃が行方不明になった為、全員の部屋の捜査と身体検査をする為
にこんな事になっているんです)
このエイダン君、私は「ビーイング・ヒューマン」の記憶が大きいのですが、「ホビット」にも出演
していました。
2016年度の「最もセクシーな男性」の1位だったそうで、なにやら007の次期ボンド候補の1人にもなって
いるとか・・・。 
あ、話がそれました。

このドラマは英国では”R-15 “の指定だそうです。
と云うのも、あまり直接的では無いもののラブシーンがアリの、同性愛に関して触れるセリフはアリの、
コカイン(?)らしき薬物で乱痴気パーティーはするは、言葉が汚いの 等々原作からの改変に関して
本国では「BBCはアガサ・クリスティーに対して何てことやらかしたんだ!」 みたいな見解もあった
様で。

↓ デイリー・メイル・オンライン記事
http://www.dailymail.co.uk/tvshowbiz/article-3357749/What-BBC-Agatha-Christie.html


そんなこんなはありますが、実力のある俳優陣の演技と共に、非常に丁寧に作られている作品であった
と感じます。

ところで、個人的に拘っていた字幕版ですが、下記の予定で再放送になります。
AXNミステリーチャンネルにて、
1月8日(月)8:00pm ~(オリジナルノーカット版、字幕版)

↓ 公式案内はこちら
https://www.mystery.co.jp/programs/and_then_there_were_none

もう一度観なくちゃ!


こちらが原作翻訳本

(ハヤカワ文庫 -クリスティー文庫)2010年版

こちらが既に発売されているDVD(NHKエンタープライズ)




ところで、
余談ですが、先日(1月3日) 「夜の来訪者」の再放送があり、偶然再試聴したのですが そのドラマで
高慢な母親を演じていたのが この作品にも出演している ミランダ・リチャードソンでした。
全く記憶に残っていないボケでした。
実は、番組表を全くチェックしていなかった為 このドラマの再放送も全く気付いていなかったのですが、
当日たまたま「アクセスランキング」を覗いたところ、お昼ごろからこのドラマについて書いた記事
(1年半程前ですが)の閲覧数が急激に増えたのです。
もしや?と思いAXNミステリーを見たら やはり再放送になってて、丁度始まったところでしたので久々
にこのドラマを再試聴する事が出来ました。

皆様の反応の速さに又もやビックリすると共に、ご訪問頂いたお蔭でこのドラマに再度巡り合える機会を
頂いた様で、皆様に感謝しております。
有難うございました。