魔の手

留学中、ある女性にルームシェアしないか、と誘われました。彼女は本当にいい人で、私もホームステイは楽しいけど大学から遠いし、年配の同居人がちょっとでも帰宅が遅くなると心配するので友人と遊びに行くことができず、悩んでいた頃でした。そこで、彼女と物件を見に行ったりして、かなり気持ち的には固まっていました。ところが、別の友人が声をかけてくれたのです。「彼女は危ない宗教にハマっていると聞いた。一緒に住むのは止めた方がいい」と。彼女は純粋に、おとなしそうな日本人の私とルームシェアしたかっただけかもしれないけど、もし最初から布教が目的だったとしたら……。


ものすごく落ち込んで、銀行をズル休みし、渋谷のセンター街をボーっと歩いていたとき、妙に元気なお姉さんに声をかけられました。「アンケートに答えていただくだけで、沢山商品を差し上げます！」。別に何の予定も無かった私はフラフラと付いていきました。ある女性グッズの新商品開発に向けたアンケートでした（今その商品は市場でかなりのヒット商品）が、あの時声をかけてきたのが、バイト熱心なただのお姉さんじゃなくて、ヒトの失意につけこみ、麻薬の世界に引きずり込もうとするヒトだったとしたら……。


そんなコトを、選挙の話題などそっちのけで、のりピー事件ばかり報道しているニュースを見ながら、つらつらと考えていました。決定的な魔の手に合う前に、「石橋叩いても、そう簡単に渡るべからず」なパートナーと出会えて、ラッキーだったな、わたしは。