(01)
(ⅰ)
1 (1) P→Q A
2 (2) P A
3(3) ~Q A
12 (4) Q 12MPP
123(5)~Q&Q 34&I
1 3(6)~P 25RAA
1 (7)~Q→~P 36CP
(ⅱ)
1 (1)~Q→~P A
2 (2)~Q A
3(3) P A
12 (4) ~P 12MPP
123(5) P&~P 34&I
1 3(6)~~Q 25RAA
1 3(7) Q 6DN
1 (8)P→Q 37CP
従って、
(ⅰ)(ⅱ)により、
(02)
① P→ Q=PであるならばQである。
② ~Q→~P=QでないならばPでない。
に於いて、
①=② であって、
この「等式」を、「対偶(contraposition)」といふ。
cf.
命題「PであるならばQである」の真偽とその対偶「QでないならPでない」の真偽とは必ず一致する(すなわち真理値が等しい)。
(ウィキペディア改)
然るに、
(03)
① P→ Q
② ~Q→~P
に於いて、
Q=(Q&R)
といふ「代入(置換)」を行ふと、
① P→ (Q&R)
② ~(Q&R)→~P
に於いて、
①=②
は、「対偶(contraposition)」である。
然るに、
(04)
(ⅱ)
1 (1)~(Q& R) A
2 (2) Q A
3(3) R A
23(4) Q& R 23&I
123(5)~(Q& R)&
(Q& R) 14&I
12 (6) ~R 35RAA
1 (7) Q→~R 26CP
(ⅲ)
1 (1) Q→~R A
2 (2) Q& R A
2 (3) Q 2&E
2 (4) R 2&E
12 (5) ~R 13MPP
12 (6) R&~R 45&I
1 (7)~(Q& R) 26RAA
従って、
(05)
② ~(Q& R)
③ Q→~R
に於いて、
②=③ である。
従って、
(03)(05)により、
(06)
① P→(Q& R)
② Q→~R→~P
に於いて、
①=②
は、「対偶(contraposition)」である。
従って、
(06)により、
(07)
①( )を省略すると、
① P→ Q& R
② Q→~R→~P
に於いて、
①=②
は、「対偶(contraposition)」である。
従って、
(08)
① P→ Q& R
② Q→~R→~P
に於いて、
P=象a
Q=∃y(鼻ya&長y)
R=∀z(~鼻za→~長z)
といふ「代入(置換)」を行ふと、
① 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)
② ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z)→~象a
に於いて、
①=②
は、「対偶(contraposition)」である。
然るに、
(09)
(ⅱ)
1 (1)~∀z(~鼻za→~長z) A
1 (2)∃z~(~鼻za→~長z) 1量化子の関係
3(3) ~(~鼻ba→~長b) A
3(4) ~(~~鼻ba∨~長b) 3含意の定義
3(5) ~(鼻ba∨~長b) 4DN
3(6) ~鼻ba&~~長b 5ド・モルガンの法則
3(7) ~鼻ba& 長b 6DN
3(8) ∃z(~鼻za& 長z) 7EI
1 (9) ∃z(~鼻za& 長z) 238EE
(ⅲ)
1 (1) ∃z(~鼻za& 長z) A
2(2) ~鼻ba& 長b A
2(3) ~(鼻ba∨~長b) 2ド・モルガンの法則
2(4) ~(~~鼻ba∨~長b) 3DN
2(5) ~(~鼻ba→~長b) 4含意の定義
2(6)∃z~(~鼻za→~長z) 5EI
1 (7)∃z~(~鼻za→~長z) 126EE
1 (8)~∀z(~鼻za→~長z) 7量化子の関係
従って、
(09)により、
(10)
② ~∀z(~鼻za→~長z)
③ ∃z(~鼻za& 長z)
に於いて、
②=③ である。
従って、
(08)(10)により、
(11)
② ∃y(鼻ya&長y)→~∀z(~鼻za→~長z)→~象a
③ ∃y(鼻ya&長y)→ ∃z(~鼻za& 長z)→~象a
に於いて、
②=③ である。
従って、
(08)(11)により、
(12)
① 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z)
③ ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za&長z)→~象a
に於いて、
①=③
は、「対偶(contraposition)」である。
従って、
(12)により、
(13)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
に於いて、
①=③
は、「対偶(contraposition)」である。
従って、
(13)により、
(14)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}⇔
③ すべてのxについて、あるyがxの鼻であって、yが長いならば、あるzがxの鼻でなくて、zが長いならば、xは象ではない。
に於いて、
①=③
は、「対偶(contraposition)」である。
然るに、
(15)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふことは、
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyは象の鼻であって長く、すべてのzについて、zが象の鼻でないならば、zは長くない。
といふ、「意味」である。
従って、
(15)により、
(16)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふことは、
① 象は、鼻が長く、鼻以外は長くない。
といふ、「意味」である。
然るに、
(17)
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}⇔
③ すべてのxについて、あるyがxの鼻であって、yが長いならば、あるzが、xの鼻でなくて、zも長いならば、xは象ではない。
といふことは、
③ すべてのxについて、xの鼻であるyが長く、その上、xの、鼻でないzが、長いのであれば、xは象ではない。
といふ、「意味」である。
従って、
(17)により、
(18)
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
といふことは、
③ 象は、鼻が長く、鼻以外は長くない。
といふ、「意味」である。
従って、
(13)(16)(18)により、
(19)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
③ ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
といふ「論理式」は、互いに、「対偶(contraposition)」であって、両方とも、
① 象は、鼻以外は長くない。
③ 象は、鼻以外は長くない。
といふ、「意味」である。
然るに、
(20)
① 私は、あなた以外は好きではない。
と言ふのであれば、
① 私は、あなたは好きです。
とは、言はずに、
① 私は、あなたが好きです。
と、言ふことになる。
従って、
(20)により、
(21)
① 象は、鼻以外は長くない。
と言ふのであれば、
① 象は、鼻は長い。
とは、言はずに、
① 象は、鼻が長い。
と、言ふことになる。
従って、
(19)(20)(21)により、
(22)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
といふ「論理式」は、互いに、「対偶(contraposition)」であって、両方とも、
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻が長い。
といふ、「意味」である。
然るに、
(19)により、
(23)
③ 兎の耳は長く、兎の耳は鼻ではない。
とした上で、
④ ある兎は象である(すべての兎が象でない。といふわけではない)。
とするならば、
④ ある象は、鼻以外は長くないのに、耳も長い。
といふことになって、「矛盾」する。
従って、
(22)(23)により、
(24)
次の「述語計算(Predicate calculation)」は、「正しい」。
1 (1) ∀x{ 象x→ ∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→ ~長z)} A
1 (2) ∀x{ ∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx& 長z)→~象x} 1対偶(contraposition)
3 (3) ∀x{ 兎x→∃y(耳yx&長y)&∀z(耳zx→ ~鼻zx)} A
4 (4)~∀x(兎x→~象x) A
1 (5) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
1 (6) ∃y(鼻ya&長y)→∃z(~鼻za&長z)→~象a 2UE
3 (7) 兎a→∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 3UE
4 (8)∃x~(兎x→ ~象x) 4量化子の関係
9 (9) ~(兎a→ ~象a) A
9 (ア) ~(~兎a∨ ~象a) 9含意の定義
9 (イ) ~~兎a&~~象a ア、ド・モルガンの法則
9 (ウ) 兎a& 象a イDN
9 (エ) 兎a ウ&E
9 (オ) 象a ウ&E 1 9 (カ) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 5オMPP
1 9 (キ) ∃y(鼻ya&長y) カ&E
ク(ク) 鼻ba&長b A
ク(ケ) 長b ク&E
1 9 (コ) ∃z(~鼻za&長z)→~象a 6キMPP
13 9 (サ) ∃y(耳ya&長y)&∀z(耳za→~鼻za) 7エMPP
13 9 (シ) ∃y(耳ya&長y) サ&E
ス(ス) 耳ba&長b A
ス(セ) 耳ba ス&E
13 9 (ソ) ∀z(耳za→~鼻za) サ&E
13 9 (タ) 耳ba→~鼻ba ソUE
13 9 (チ) ~鼻ba セタMPP
13 9ク(ツ) ~鼻ba&長b ケチ&I
13 9ク(テ) ∃z(~鼻za&長z) ツEI
13 9 (ト) ∃z(~鼻za&長z) キクテEE
13 9 (ナ) ~象a コトMPP
13 9 (ニ) 象a&~象a オナ&I
134 (ヌ) 象a&~象a 89ニEE
13 (ネ)~∃x~(兎x→~象x) 8ヌRAA
13 (ノ)∀x~~(兎x→~象x) ネ量化子の関係
13 (ハ)∀x(兎x→~象x) ノDN
13 (〃)すべてのxについて、xが兎であるならば、xは象ではない。 ノDN
13 (〃)兎は象ではない。 ノDN
従って、
(22)(23)(24)により、
(25)
たしかに、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
② ∀x{∃y(鼻yx&長y)→∃z(~鼻zx&長z)→~象x}
といふ「論理式」は、互いに、「対偶(contraposition)」であって、両方とも、
① 象は鼻が長い。
② 象は鼻が長い。
といふ、「意味」である。
然るに、
(25)により、
(26)
「意味」はともかく、「語順」から言へば、
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
である。
然るに、
(27)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれ
が主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
然るに、
(28)
括弧は、論理演算子のスコープ(scope)を明示する働きを持つ。スコープは、論理演算子の働きが及ぶ範囲のことをいう。
(産業図書、数理言語学辞典、2013年、四七頁:命題論理、今仁生美)
従って、
(27)(28)により、
(29)
① 象は、鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
といふことからすれば、
「これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する。」といふ「説明」は「正しい」。
然るに、
(30)
(ⅰ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、問題になっている変数が現れる少なくとも2つの箇所を含むであろう(その1つの箇所は量記号そのもののなかにある);
(ⅱ)論理式または命題関数において、量記号が現れる任意の箇所の作用範囲は、同じ変数を用いたいかなる他の量記号も含まないであろう。
(論理学初歩、E.J.レモン、竹尾 治一郎・浅野 楢英 訳、1973年、183頁)
然るに、
(31)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}⇔
① すべてのxについて、xが象であるならば、あるyはxの鼻であって長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない。
の場合、
① xの「作用範囲」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「論理式の、全体」である。
然るに、
(32)
① ∀x{象x→
① すべてのxについて、xが象であるならば、
といふことからすれば、
① xとは、すなはち、「象」である。
従って、
(31)(32)により、
(33)
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「論理式」に於ける。
① xの「作用範囲」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「論理式の、全体」であって、
① xとは、すなはち、「象」である。
従って、
(33)により、
(34)
私に言はせれば、
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
に於ける、
① 象は は、
① 象は鼻が長い。 といふ「文全体の、主語」である。
従って、
(34)により、
(35)
① 鼻が は、
① 象は鼻が長い。 といふ「文の、一部の、主語」である。
加へて、
(36)
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
であるため、
① 象は鼻が長い。
の場合も、
①{ ( )( ) }
といふ「形」の、「入れ子」である。
従って、
(27)(34)(35)(36)により、
(37)
「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。
とは言ふものの、
① 象は鼻が長い。⇔
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理式」からすれば、「複数主語も、主語の入れ子」も、「奇矯な技」であるとは、思はない。
然るに、
(38)
「象は」は「主辞」である。の「逆」は、
「主辞」は「象は」である。である。
従って、
(39)
「象は」は「主辞」であり、「鼻が長い」は「賓辞」である。
であるの「逆」とは、
「賓辞」は「鼻が長い」であり、「主辞」は「象は」である。
であると、思はれる。
然るに、
(40)
「象は」は「主辞」であり、「鼻が長い」は「賓辞」である。
「賓辞」は「鼻が長い」であり、「主辞」は「象は」である。
に於いて、2つは、「同じこと」であるとしか、思へない。
従って、
(40)により、
(41)
「象は鼻が長い」はどれが主辞がわからないから、このままでは非論理的な構造の文である、と言う人がもしあった(沢田『入門』二九ペ)とすれば、その人は旧『論理学』を知らない人であろう、これはこのままで、
象は 鼻が長い。
主辞 賓辞
とはっきりしている。速水式に簡単明リョウである。意味も、主辞賓辞の関係も小学生にもわかるはずの文である。これに文句をつけたり、それを取り次いだりするのは、人々が西洋文法に巻かれていることを語る以外の何物でもない。このまま定理扱いしてもよろしい。そしてこの定理の逆は真でないとして、鼻の長いもの例に、鞍馬山の天狗だの、池の尾の禅珍内供だのを上げるのも一興だろう。それでおしまいである(三上章、日本語の論理、1963年、13・14頁)。
に於ける、「そしてこの定理の逆は真でない(として、鼻の長いもの例に、鞍馬山の天狗だの、池の尾の禅珍内供だのを上げるのも一興だろう)。」といふ言ひ方が、私には、理解できない。
(42)
伝統的論理学を清水滉『論理学』(1916年)で代表させよう。わたしのもっているのが四十三年の第十九冊の一冊で、なお引き続き刊行だろうから、前後かなり多くの読者をもつ論理学書と考えられる。新興の記号論理学は、沢田允茂『現代論理学入門』(1962年)を参照することにする(三上章、日本語の論理、1963年、4頁)。
といふ風に、書かれてゐる一方で、『三上章、日本語の論理、1963年』に目を通す限り、その時点での三上章先生に、「現代論理学(述語論理)」を学んでゐた、「形跡」は無い。
然るに、
(43)
このうち、「象は鼻が長い」と「日本語の論理」をオススメする。あまりのクリアカットな主張に、愕然とする、なるほどそうだったのか、僕らは何も知らなかったのだなと(三上文法! : wrong, rogue and log)。
然るに、
(44)
「象は鼻が長い」にしても、「日本語の論理」にしても、何度、目を通しても、私には、「難解」過ぎて、ほとんど、「理解」出来ない。
(45)
「間違ってゐること」を、「正しい」と、「言ひ包めよう」とすれば、「難解にならざるを得ない」ことは、「当然」である。