(01)
与えられた対象aが{x:Fx}のメンバー(要素)であるためには、aがその条件を満たすとき、またそのときに限られる。
すなわちFaであり、またそのときに限られるのである。『aは{x:Fx}のメンバー(要素)である』を意味するものとして、
a∈{x:Fx}と書くならば、この想定は、任意の条件Fx(xはFである)に対して、
(1) a∈{x:Fx}⇔Fa(aはFである)
ということになる。
(公理的集合論、E.J.レモン 著、石本新・高橋敬吾 訳、1972年、序論・改)
従って、
(01)により、
(02)
① Fa(aはFである。)⇔ a∈{x:Fx}
に於いて、
① a=私,F=幹事
であるならば、
① Fa(私は、幹事です。)⇔ a∈{x:Fx}
である。
従って、
(02)により、
(03)
① Fa(私は、幹事です。)⇔ a∈{x:Fx}
に於いて、「倒置」を行ふと、
② aF(幹事は、私です。) ⇔{x:Fx}∈a
然るに、
(04)
② F=幹事
は、「集合(クラス)」であるため、「複数」であることも、「単数」であることも、可能であるが、
② a=私
は、「集合の要素(メンバー)」であるため、必ず、「単数」である。
従って、
(03)(04)により、
(05)
② aF(幹事は、私です。) ⇔{x:Fx}∈a
であるならば、必然的に、
② 私は幹事であり、私以外は、幹事ではない。
従って、
(05)により、
(06)
② 幹事は私です。
③ 私は幹事であり、私以外は、幹事ではない。
に於いて、
②=③ である。
然るに、
(07)
無題化というのは、「Ⅹは」の「は」を消すことですから、センテンスの形のままでもできないことはありませんが、
センテンスの形では、本当に無題になりきれない場合も起こります。たとえば、
私は、幹事です。
私が幹事です。
のように、「は」を消しても、センテンスの意味は、
幹事は、私です。
というのに近く、題が文中の別の個所に移り隠れたにすぎません。つまり、本当には無題化していないわけです。
(山崎紀美子、日本語基礎講座、― 三上文法入門、2003年、65・66頁)。
従って、
(07)により、
(08)
① 私が幹事です。
② 幹事は私です。
に於いて、
①=② である。
従って、
(06)(08)により、
(09)
① 私が幹事です。
② 幹事は私です。
③ 私は幹事であり、私以外は、幹事ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
従って、
(07)(09)により、
(10)
私は、幹事です。
私が幹事です。
のように、「は」を消しても、センテンスの意味は、
幹事は、私です。
というのに近く、題が文中の別の個所に移り隠れたにすぎません。つまり、本当に無題化していないわけです。
といふのであれば、山崎先生は、
① 私が幹事です。
② 幹事は私です。
③ 私は幹事であり、私以外は、幹事ではない。
に於いて、
①=②=③ である。
といふことを、踏まへた上で、「無題化」といふ「用語(現象)」を、説明すべきである。
(11)
無題化の手続きにより、「Ⅹは」の「は」は、「がのにを」またはゼロ(時の格)を代行している。
(山崎紀美子、日本語基礎講座、― 三上文法入門、2003年、67頁)
といふのであれば、
無題化の手続きにより、「Ⅹが」の「が」は、「はのにを」またはゼロ(時の格)を代行している。
とも、言へることになる。
(01)
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」は、『直観』として、
① 象に関して言へば、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 鼻に関して言へば、象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。
といふ「意味」である。
cf.
「象と兎、どちらの鼻が長いか?」⇒「(鼻に関しては)象の鼻が長い。」
「兎と象、どちらの耳が長いか?」⇒「(耳に関しては)兎の耳が長い。」
然るに、
(02)
① 象に関して言へば、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 鼻に関して言へば、象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。
といふ「日本語」は、『直観』として、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zy→~長z)}。
② ∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。
といふ「意味」である。
然るに、
(03)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)∃x(兎x&象x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 2UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 象a 6&E
6 (8) 兎a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 47MPP
2 6 (ア) ∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 58MPP
2 6 (イ) ∃y(長y&耳ya) ア&E
ウ(ウ) 長b&耳ba A
1 6 (エ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
2 6 (オ) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
1 6 (カ) ~鼻ba→~長b エUE
2 6 (キ) 耳ba→~鼻ba オUE
ウ(ク) 耳ba ウ&E
2 6ウ(ケ) ~鼻ba キクMPP
12 6ウ(コ) ~長b カケMPP
ウ(サ) 長b ウ&E
12 6ウ(シ) 長b&~長b コサ&I
12 6 (ス) 長b&~長b イウシEE
123 (セ) 長b&~長b 36スEE
12 (ソ)~∃x(兎x&象x) 36セRAA
12 (タ)∀x~(兎x&象x) ソ量化子の関係
12 (チ) ~(兎a&象a) タUE
12 (ツ) ~兎a∨~象a チ、ド・モルガンの法則
12 (テ) 兎a→~象a ツ含意の定義
12 (ト)∀x(兎x→~象x) テUI
従って、 (03)により、
(04)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて、zがxの鼻でないならば、zは長くない}。 然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは長くて、xの耳であり、すべてのzについて、zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(04)により、
(05)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
然るに、
(06)
1 (1)∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x} A
1 (2) ∃y{(鼻ay&象y)→長a&~(鼻ay&象y)→~長a} 1UE
3 (3) (鼻ab&象b)→長a&~(鼻ab&象b)→~長a A
4 (4) ∃x∃y(鼻xy&兎y&~象y) A
5 (5) ∃y(鼻ay&兎y&~象y) A
6 (6) 鼻ab&兎b&~象b A
3 (7) ~(鼻ab&象b)→~長a 3&E
8(8) ~鼻ab∨~象b A
8(9) ~(鼻ab&象b) 8ド・モルガンの法則
3 8(ア) ~長a 79MPP
3 (イ) (~鼻ab∨~象b)→~長a 8アCP
6 (ウ) ~象b 6&E
6 (エ) ~鼻ab∨~象b ウ∨I
3 6 (オ) ~長a イエMPP
6 (カ) 鼻ab&兎b 6&E
3 6 (キ) 鼻ab&兎b&~長a オカ&I
3 6 (ク) ∃y(鼻ay&兎y&~長a) キEI
3 5 (ケ) ∃y(鼻ay&兎y&~長a) 56クEE
3 5 (コ) ∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x) ケEI
34 (サ) ∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x) 45コEE
1 4 (シ) ∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x) 23サEE
従って、
(06)により、
(07)
(ⅰ)∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。然るに、
(ⅱ)∃x∃y(鼻xy&兎y&~象y)。従って、
(ⅲ)∃x∃y(鼻xy&兎y&~長x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxとあるyについて{(xがyの鼻であって、yが象である)ならば、xは長く、(そうでない場合)は、xは長くない}。然るに、
(ⅱ) あるxとあるyについて( xはyの鼻であって、yは兎であって、象ではない)。従って、
(ⅲ) あるxとあるyについて( xはyの鼻であって、yは兎であって、xは長くない)。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(07)により、
(08)
(ⅰ)象の鼻が長い。然るに、
(ⅱ)ある兎の鼻は象の鼻ではない。従って、
(ⅲ)ある兎の鼻は長くない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(01)~(08)により、
(09)
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zy→~長z)}。
② ∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。
といふ「述語論理」に、「翻訳」出来る。
従って、
(01)(09)により、
(10)
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」が、
① 象に関して言へば、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 鼻に関して言へば、象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。
といふ「意味」である。
といふ『直観』は、「述語論理」といふ「観点」からすれば、「正しい」。
従って、
(09)(10)により、
(11)
① 象は鼻が長い。⇔ 象に関して言へば、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 象の鼻が長い。⇔ 鼻に関して言へば、象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。
といふ「解釈」は、
① 象は鼻が長い。⇔ ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zy→~長z)}。
② 象の鼻が長い。⇔ ∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。
といふ「述語論理への翻訳」を行ふ上で、「役に立つ」。
従って、
(11)により、
(12)
① 象に関して言へば、鼻は長く、鼻以外は長くない。
② 鼻に関して言へば、象の鼻は長く、象の鼻以外は長くない。
といふ「解釈」を行ふことは、
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」の、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zy→~長z)}。
② ∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。
といふ「論理構造」を把握する上で、「役に立つ」。
然るに、
(13)
例へば、
1 無題化ということ
象は鼻が長い
このセンテンスから、題を底(base)とする名詞を機械的に作ることができます。
底とは名詞句の末尾の名詞のことです。
鼻が長い象
次に、傍線部の名詞を底とする名詞句を作ろうとすると、今度は、新しく助詞が現れてきます。
象の長い鼻
さて、最初のセンテンスの中身(事柄、コト)は次のように書き表されます。
象の鼻が長いコト
このコトから傍線の名詞を取り立てれば、つまり、題として提示するば、最初の、
象は鼻が長い
に戻ります(山崎紀美子、日本語基礎講座、―三上文法入門、2003年、62~65頁改)。
といふことが、「確認」出来たとしても、
① 象は鼻が長い。
② 象の鼻が長い。
といふ「日本語」の、
① ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zy→~長z)}。
② ∀x∃y{(鼻xy&象y)→長x&~(鼻xy&象y)→~長x}。
といふ「論理構造」を把握することは、出来ない。