日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(1110)「動物は象である」の「述語論理」。

2022-06-04 20:15:50 | 「は」と「が」

(01)
(ⅰ)
1  (1) ∀x(象x→ 動物x)  A
 2 (2) ∃x(~動物x&象x)  A
1  (3)    象a→ 動物a   1UE
  4(4)    ~動物a&象a   A
  4(5)    象a        4&E
1 4(6)        動物a   35&I
  4(7)       ~動物a   4&E
1 4(8)   動物a&~動物a   67&I
  4(9)~∀x(象x→ 動物x)  18RAA
 2 (ア)~∀x(象x→ 動物x)  249EE
12 (イ) ∀x(象x→ 動物x)&
      ~∀x(象x→ 動物x)  1ア&I
1  (ウ)~∃x(~動物x&象x)  2イRAA
(ⅱ)
1  (1)~∃x(~動物x&象x)  A
1  (2)∀x~(~動物x&象x)  1量化子の関係
1  (3)  ~(~動物a&象a)  1UE
 2 (4)    象a        A
  3(5)       ~動物a   A
 23(6)    ~動物a&象a   45&I
123(7)  ~(~動物a&象a)&
          (~動物a&象a)  36&I
12 (8)      ~~動物a   37RAA
12 (9)        動物a   8DN
1  (ア)    象a→ 動物a   29CP
1  (イ) ∀x(象x→ 動物x)  アUI
従って、
(01)により、
(02)
①   ∀x(象x→ 動物x)
② ~∃x(~動物x&象x)
に於いて、すなはち、
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
②(動物でないxで、象であるx)は存在しない。
に於いて、
①=② である。
従って、
然るに、
(03)
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
といふことは、
① 象であるならば、それは動物である。
といふこと、すなはち、
① 象について言へば、それは動物である。
といふことである。
然るに、
(04)
「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよというメンタルスペースのセットアップであり、そのメンタルスペースのスコープを形成する働きをもつと主張する(この場合は「長い」までをスコープとする)。また、「鼻が」は主格の補語にすぎなく、数ある補語と同じ格であるとする。基本文は述語である「長い」だけだ(三上文法! : wrong, rogue and log)。
従って、
(02)(03)(04)により、
(05)
① ∀x(象x→動物x)⇔
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。⇔
① For any x, if x is an elephant then x an animal.⇔
① 象であるならば、それは動物である。 ⇔
① 象について言へば、それは動物である。⇔
① 象は動物である。
といふ「等式」が、成立する。
従って、
(01)~(05)により、
(06)
①   ∀x(象x→ 動物x)
② ~∃x(~動物x&象x)
に於いて、すなはち、
① 象は動物である。
②(動物でない象)は存在しない。
に於いて、
①=② である。
従って、
(06)により、
(07)
① ∀x(動物x→ 象x)
② ~∃x(~象x&動物x)
に於いて、すなはち、
① 動物は象である。
②(象でない動物)は存在しない。
に於いて、
①=② である。
従って、
(07)により、
(08)
xの変域={、兎、河馬、ライオン}
であるならば、
① 動物は象である。
② 象以外は動物ではない。
といふ「命題」は、「ウソ(偽)」である。
然るに、
(09)
xの変域={桜、電車、鉛筆、机、
であるならば、
① 動物は象である。
② 象以外は動物ではない。
といふ「命題」は、「本当(真)」である。
従って、
(01)(08)(09)により、
(10)
確かに、
①   ∀x(動物x→ 象x)
② ~∃x(~象x&動物x)
といふ「命題」に於いて、すなはち、
①  動物は象である。
②(象でない動物)は存在しない。
といふ「命題」に於いて、
① の「真理値」と、
② の「真理値」は、「等しい」。


(1109)「ラッセルの確定記述の理論」と「は・が」。

2022-06-04 18:42:26 | 「は」と「が」

(01)
① ヒトラーは我が闘争を書いた。
② タゴール記念会は、私理事長です。
といふ「日本語」は、
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争の著者x&∀y(我が闘争の著者y→y=x)}
② ∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}
といふ風に、すなはち、
① あるxは{ヒトラーであって、我が闘争の著者であって、すべてのyについて(yが我が闘争の著者であるならば、y=x である)}。
② すべてのxについて{xがタゴール記念会の会員であるならば、あるyは[私であって、xの理事長であって、すべてのzについて(zがxの理事長であるならば、y=z である)]}。
といふ風に、「翻訳」出来る。
然るに、
(02)
ラッセルの確定記述の理論を用いて、つぎの論証の健全性を確立せよ。
(a)我が闘争の著者は1945年に死んだ。ヒトラーは我が闘争を書いた。故にヒトラーは1945年に死んだ。
Using Russell's theory of definite description, establish the soundness of the following argument:
(a)The author of Mine Kamp died in 1945. Hitler wrote Mine Kamp. Hitler therefore died in 1945.
(E.J.レモン 著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、215頁と原文)
〔私による解答〕
1   (1)∃y(我が闘争の著者y&45年死y)                  A
 2  (2)   我が闘争の著者a&45年死a                   A
  3 (3)∃x{ヒトラーx&我が闘争の著者x&∀y(我が闘争の著者y→y=x)} A
   4(4)   ヒトラーb&我が闘争の著者b&∀y(我が闘争の著者y→y=b)  A
   4(5)                  ∀y(我が闘争の著者y→y=b)  4&E
   4(6)                     我が闘争の著者a→a=b   5UE
 2  (7)                     我が闘争の著者a       2&E
 2 4(8)                              a=b   67MPP
   4(9)   ヒトラーb                            4&E
 2 4(ア)   ヒトラーa                            89=E
 2  (イ)         45年死a                      2&E
 2 4(ウ)   ヒトラーa&45年死a                      アイ&I
 2 4(エ)∃y(ヒトラーy&45年死y)                     ウEI
 23 (オ)∃y(ヒトラーy&45年死y)                     34エEE
1 3 (カ)∃y(ヒトラーy&45年死y)                     12オEE
1 3 (〃)あるyはヒトラーであって、yは1945年に死んだ。           12オEE
(03)
ラッセルの確定記述の理論を用いて、つぎの論証の健全性を確立せよ。
(b)タゴール記念会は、私理事長です。然るに、小倉氏は私ではない。従って、タゴール記念会は、小倉氏は理事長ではない。
〔自問自答〕
1     (1)∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]} A
1     (2)   T会の会員a→∃y[私y&理事長ya&∀z(理事長za→y=z)]  1UE
 3    (3)   T会の会員a                             A
13    (4)          ∃y[私y&理事長ya&∀z(理事長za→y=z)]  23MPP
  5   (5)             私b&理事長ba&∀z(理事長za→b=z)   A
  5   (6)             私b&理事長ba                 5&E
  5   (7)                      ∀z(理事長za→b=z)   5&E
  5   (8)                         理事長ca→b=c    7UE
   9  (9)     ∃z(小倉z&~私z)                      A
    ア (ア)        小倉c&~私c                       A
    ア (イ)        小倉c                           ア&E
    ア (ウ)            ~私c                       ア&E
     エ(エ)               b=c                     A
    アエ(オ)            ~私b                       ウエ=E
  5   (カ)             私b                       6&E
  5 アエ(キ)            ~私b&私b                    オカ&I
  5 ア (ク)              b≠c                     エキRAA
  5 ア (ケ)                        ~理事長ca        8クMTT
  5 ア (コ)        小倉c&~理事長ca                    イケ&I
  5 ア (サ)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   コEI
  59  (シ)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   9アサEE
13 9  (ス)     ∃z(小倉z&~理事長za)                   45シEE
1  9  (セ)   T会の会員a→∃z(小倉z&~理事長za)              3スCP
1  9  (ソ)∀x{T会の会員x→∃z(小倉z&~理事長zx)}             セUI
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① ヒトラーは我が闘争を書いた。
② タゴール記念会は、私理事長です。
といふ「日本語」が、
① ∃x{ヒトラーx&我が闘争の著者x& ∀y(我が闘争の著者y→y=x)}
② ∀x{T会の会員x→∃y[私y&理事長yx&∀z(理事長zx→y=z)]}
といふ風に、「翻訳」出来るが故に、
① 我が闘争の著者は1945年に死んだ。ヒトラーは我が闘争を書いた。故にヒトラーは1945年に死んだ。
② タゴール記念会は、私理事長です。然るに、小倉氏は私ではない。従って、タゴール記念会は、小倉氏は理事長ではない。
といふ「推論」は、「健全(sound)」である。
然るに、
(05)
交換法則(commutative law)」により、
①(y=x)は(x=y)と「同じ」であって、
②(y=z)は(z=y)と「同じ」である。
従って、
(04)(05)により、
(06)
交換法則(commutative law)」により、
① ヒトラーは我が闘争を書いた。
② タゴール記念会は、私理事長です。
といふ「命題」は、それぞれ、
① 我が闘争を書いたのはヒトラーであった。
② タゴール記念会は、理事長は私です。
といふ「命題」に「等しい」。
然るに、
(07)
よく知られているように、「私理事長です」は語順を変え、
 理事長は、私です。 と直して初めて主辞賓辞が適用されるのである。また、かりに大倉氏が、
 タゴール記念会は、私理事長です。
と言ったとすれば、これは主辞「タゴール記念会」を品評するという心持ちの文である。
(三上章、日本語の論理、1963年、40・41頁)
従って、
(06)(07)により、
(08)
① A=B(B=A)
であること(交換法則が成り立つこと)は、
① AはBである。
といふ「日本語」が、
② ABである。
③ BはAである。
といふ風に、言ひ得る上での、『必要条件』である。
然るに、
(09)
記述の理論
〔英〕theory of descriptions
指示句には様々な種類があるが、基本的なものは(1)all で始まる名詞句、(2)a で始まる名詞句、(3)the で始まる単数形の名詞句の三つである(Webサイト:記述の理論)。
然るに、
(10)
定冠詞(the)は、それが厳密に用いられるときには、一意性を内含している。確かに、しかじかのひと(So-and-so)がいく人かの息子をもっている場合でさえ、the son of So-and-so という表現を使用するが、本当はその場合には、a son of So-and-so という方がより正しいといえよう。それゆえわれわれの目的のためには、the一意性を内含しているものと考えていく(頸草書房、現代哲学基本論文集Ⅰ、バートランド・ラッセル、指示について、1986年、53頁)。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
① A is B.
ではなく
① A is the B.
であることは、
① AはBである。
といふ「日本語」を、
② ABである。
③ BはAである。
といふ風に、言ひ得る上での、『必要条件』である。
然るに、
(12)
Consider the English setence below.
(1)Socrates is a philosopher.
(2)Paris is a city.
(3)Courage is a virtue.
(4)Socrates is the philosopher who taught Plato.
(5)Paris is the capital of France.
(6)Courage is the virtue I most admire.
(E.J.レモン著、竹尾治一郎・浅野楢英 翻訳、論理学初歩、1973年、204頁、原文)
従って、
(11)(12)により、
(13)
(1)Socrates is a philosopher.
(2)Paris is a city.
(3)Courage is a virtue.
ではなく
(4)Socrates is the philosopher who taught Plato.
(5)Paris is the capital of France.
(6)Courage is the virtue I most admire.
であれば、これらの「命題」は、
(4)ソクラテスプラトンを教へた哲学者である(プラトンを教へた哲学者はソクラテスである)。
(5)パリフランスの首都である(フランスの首都はパリである)。
(6)勇気私が最も賛美する徳である(私が最も賛美する徳は勇気である)。
といふ風に、言ひ得ることになる。