自分には才能がない、「情」に欠けた人間か、とあきらめているけれど、新聞の俳句欄には目をやることがあります。かなり古い切り抜きですが、天声人語で、中村汀女さんの句が紹介されておりました。
雑誌「俳句四季」の子育てを巡る名句から天声人語氏が抜き出したものだそうです。
咳の子のなぞなぞ遊びきりもなや
懐かしい句でした。汀女さんは我が家からもさして遠くない下北沢駅の近くにお住まいでした。子どもたが通う小学校は同じ校区でした。そんなご縁でPTAの文化事業で講演会の講師をお願いしたことがありました。
汀女さんは、ごく普通の主婦としての生活の中で、句を作っている。とおっしゃっていました。
そのとき一番に取り上げられたのがこの句でした。子どもを育てる主婦・母として素直にうなずける句でした。
もうお熱も下がったのでしょうか。寝床で横になっているのにも飽きたのでしょう、ともすれば飛び出て遊びたいようです。母親は、今日はまだ静かにね、と宥めます。じゃあなぞなぞしよう!母親が問題を出します、風邪の子が答えます。いくつかやっているうちに、母親の種が切れてきます。ねえ、問題は?きりもない子供の要求です。針仕事でもしながら相手をしている母親、子どもとの間がなんと暖かいこと。
17音で描く母子の世界です。