11月23日(勤労感謝の日)の、日経新聞「春秋」に国字を取り上げていました。まずは魚の名前。
鰯(いわし)。鱈(たら)。鯒(こち)。鰰(はたはた)。鯑(かずのこ)。
魚篇の文字には国字が多い。海の幸の持つイメージを我ら先哲はじつにうまくあらわした、と。
春秋氏はエッセーの最後をこんな国字を使った味わい深い作品で締めている。
辻(つじ)で行く先に惑い、凩(こがらし)に耐え、峠(とうげ)を越えて梺(ふもと)に下り、ようやく穏やかな凪(なぎ)がおとずれる。そう思いたい。
そして国字で一番使われているのは「働」に違いないと書いています。
「動」ににんべんを添えて、「はたらく」ーーーこの文字を考案した人はきっと働くという営為に、人間の希望や夢や悲しみ、苦しみを重ねていたに違いないと。
「にんべん」に「動(うごく)」で「はたらく」。そうか、人間が動くことは、即ち「働く」ことだったのですね。
私はかなり旧式な人間と思っていましたが、「人間が動く」と聞いて渋谷のあの交差点を群になって蠢いていく人波を思い浮かべてしまいました。
また、コロナ禍にもかかわらず、go・toキャンペーンとやらで、沸き立って観光地に動いていく人群れを思いました。いつの間にか私の頭の中でも「働くこと」が薄まってきているのでしょうか。
コロナの所為で、働く場を失い、収入を奪われた人、就職内定率が下がって焦る若者、親の収入が減り、大学を中退せざるを得ない学生も出てきていると言います。
「働ける」ことのありがたさ、を思います。