諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

184 肺胞のはたらき

2022年09月12日 | エッセイ
テーマ設定の山🈡 
山小屋の主人が拓いた道を登り、5月の残雪を踏み、遥か稜線を仰ぎ、背負ってきたもので自炊し、中世以来の峠道をいくと、さすがに心に何かが芽ばえます。写真は「雁も超えた」伝説の峠に続く道です。


「肺」というと、そこで呼吸をし、体内に酸素を供給するところ、ということになる。
体中の血液は肺静脈を通って、肺にもどり、不要になった二酸化炭素を出し、代りに体外から得た酸素を溶け込ませ再び肺動脈と通って体内各所へと流れていく。
全身の細胞は生存のためには、血液によるガス交換が順調に行われなければならない。
だからこそ、医療的なケアが必要な子は、バイタルチャックとして血中酸素濃度の測定を定時におこなうが、つまりはこのガス交換が順調に行われているかを確認しているのである。

以上の説明は、概ね妥当だろうし、「肺」の役割の重要性は理解できるだろう。

ところがである。
この「総論」では、体内のリアリティまでも網羅していないとも言える。
血液のガス交換を行っているのは、「肺」ではなく「肺胞」である、という見方である。
もちろんこれは視点の置き所の問題で、誤りを指摘するものではない。
ただ、実際視点を変えてみると、肺胞という小さな組織は肺の中に3億も存在し、気管支の末端でそれぞれの肺胞は毛細血管を経て流れてきた血液から二酸化炭素を放出させ、代りに酸素を担わせるというリアルを行っているのである。
そして実際にこの肺胞個々の働きなければ、概念上の肺はその役割を果たせないのである。
たしかに、「3億個のはたらき」というと想像しにくいし、「肺」という概念にまとめているのだが、3億の肺胞の絶え間ないはたらきが生命維持に不可欠だというのも思い出すことも必要である。

同様な構造が、教育を語る上でも生じる。
子ども達の日々のガス交換を行うのは、全国約2000万の家庭(あるいは家庭的環境)である。
この個々のはたらきがあって子ども達のリフレッシュが行われる。
概念上の教育はこの上に成り立っているという以上に、それが子どもの成長に不可欠なのである。
そのことを教師は日々実感している。

家庭という「末梢部」が教育を(ひろくとらえれば社会をも)維持させている。
これは「VUCA」の時代であっても当然変わらない。
営みともいえる家庭内の教育は教育という枠では捉えられないほどの大きさで子どもたちを育んでいることをときどき思い出す必要がある。
視点を変えれば、2000万の組織の健康はそれそのものが近未来への資産と言える。

肺機能の実質を担う肺胞は、その重要さに反して一度失われると再生しにくい組織だという。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする