諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

21 子どもの側の教育計画#2 アサガオと支柱

2019年05月12日 | 個別教育計画
 少年時代ラグビーをはじめたばかりの平尾誠二さんはラグビーシューズを買ってもらう。その時以上の嬉しさは、それ以後のラグビー人生でもなかったと生前言っていた。このタイミングのラグビーシューズが、平尾さんの潜在的な力を一気に引き出したのかもしれない。

 これと似たことは誰にでも多少なりともあるのだろう。
 誕生日のプレゼントに友人は顕微鏡をもらった。接眼レンズの中の世界にワクワクしたという。これがきっかけで理学部で生物を研究している。

 兄や姉の聴いているビートルズが流れていて、それがミュージシャンの入口になったとか、たまたま病気で臥せている時、本棚の本に興味をもって後年作家になったとかはよく聞く話である。

 何かとの出合いが、秘めていたポテンシャルが引き出されるきっかけなることが往々にしてある。ちょうどアサガオが双葉から本葉に移行したところで支柱を立てると、アサガオはひとりで蔓を絡ませ、上へ上へと効率よく光合成しながら成長していくように。

 もともと、子ども(大人も)は、なんらかのポテンシャルをもっていて、何かのきっかけでそれが表現された時、思いがけない自分の中のパワーを実感できるのではないか。それが成長につながったり、自信になったりするだろう。 

 だとすると、その子にあった「支柱」を時期を見計らって立ててあげること、あるいは「支柱」に代わるものを自ら見つけられる条件を作ることが教育であると言えるように思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

20 蟻

2019年05月08日 | エッセイ
(写真)シャクナゲ

芝生の向こうにツツジと白いミズキ。出てきたばかりの虫の感じ。
5年生も外へ出てきて、木の下の砂場に向かうらしい。

途中、ナルちゃんが座り込む。同伴の先生もしゃがむ。
静かに近づくと芝生の中を探検する蟻を見ているらしい。
膝にあごを乗せて見ている。

「蟻だー」
とボソッと言った先生も同じ表情で蟻を見ている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

19 子どもの側の教育計画#1 教育計画の危うさ

2019年05月05日 | 個別教育計画

連休で久しぶりに実家にもどってくつろいでいると、母親がうれしそうに何かをもってくる。


「片付けをしてたら、こんなものが出てきたんだよ」


 


-平成〇〇年度 タカシの個別教育計画  〇月〇日更新-


 


なんてことがあったら怖い。


 


めくってみると6年分が重なっている。中身は一定の形式の表だ。


健康面、生活習慣、学習面、友達等とのコミュニケーション、社会性、今後の方針。


そして、下の方に、関心、意欲、態度とあってチェックボックスまでついている。


 


「お母さんもおまえのためにがんばったんだよォ」


そんな母親の横で内容を読んでみる。


 


健康面「ここ半年は良好。早めの就寝が大切」


生活習慣「日常的な生活習慣は概ねできてるが、確実性がない。特に帰宅後手洗いを忘れること、やさい(ピーマン)を残すこと


学習面「算数が苦手。分数と少数で少しつまづき、好きだった図形も理解が遅い。新しいドリルにして


友達等「もう少し友達が多いといい。特に女の子は苦手のようで、分け隔てなく、学校の先生とも相談してみる」


社会性「テレビ番組も厳選して、ニュースや教養番組について家族で話し合って



今後の方針「テレビゲームは癖になるのでマサオくんからのテレビゲームは借りないこと。5年生になったらサピックスに行かせるので


 


そして、最後のチェックボックスにはどれにもチェックがない。(えっ、失礼な!。)


だまって、それをテーブルに置くと、母親はけげんな顔をしている。


 


 


こんなこと実際はないと思うが、「計画」は熱心であるほど「ボク」から離れていく危険がある。


 


この時期のボクは、4人の友達と戯れるのが楽しくて仕方がなかった。将来には夢もあったし不安もあったけど友達と一緒ならなんとかなると思っていた。


でも、いつでもどこか必死だった。いじめられたりいじめたりは多少はあったし、やっぱり母が言うように成績は気になった。その中で大事なことの優先順位をそれなりにつけてやってきた。


で、その「生きる術」の延長線上に大人になったボクがある。


でも、あの時母のすすめで行ったサピックスで頑張ったことは今の仕事に通じているような気がする。


 


 


個別の教育計画と子どもの側からの「成長計画」との関係を考えてみる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

18 林檎とセザンヌ

2019年05月01日 | エッセイ
(写真)5月の南アルプス鳳凰三山。青空と新緑がきれい!。


小林秀雄は、

「見るとか聴くとかいう事を、簡単に考えてはいけない。……頭で考える事は難しいかも知れないし、考えるのには努力がいるが、見たり聴いたりする事に何の努力が要ろうか。そんなふうに、考えがちなものですが、それは間違いです。
 見ることも聴くことも、考えることと同じように、難しい、努力を要する仕事なのです。」(美を求める心)

という。

 見る、聴くにも努力がいる!。

 セザンヌは、来る日も来る日も林檎を描いた。だから展覧会にいくと林檎の画がならぶ。
 どうして他のテーマに移らないのか、このことが分からなかった。

 
 どうやら感性とかセンスは、努力によってかなりの深化を遂げていくもののようだ。
 セザンヌの画は眼力の深化を表しているようにも感じる。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする