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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

教育の政治的中立性に反する都教委の「半旗掲揚強制文書」の言い訳

2022年09月01日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

 ◆ 都教委が自民・安倍氏葬儀日、半旗掲揚強制文書を発出
   都総務局文書垂れ流し~〝国葬〟で繰り返さぬよう要請を
(マスコミ市民)

永野 厚男(教育ジャーナリスト)

都総務局は"半旗"掲揚強制文書発出理由の1つを「安倍氏は東京五輪大会で尽力頂いた」と言うが、都教委発行の『オリパラ学習読本』は国家主義教化に固執し、訴訟も起こった。写真は小学生用。


 主権者教育に関心を持つ都立高校生Aさんは、入学式や先輩の卒業式で式場内に加え、校門そばのポールにも学校側が掲揚する日の丸旗が、7月12日の登校時、半分の高さに上がっているのを発見。違和感を感じ、保護者に携帯メールで通報した。
 知人を介し、当該保護者と連絡をとれた筆者が調査・取材すると、〝震源地〟はやはり、これまでも保守系政治家に忖そんたく度し、卒業式等の異常な〝君が代〟強制問題で癒ゆちゃく着し続けてきた東京都教育委員会(都教育庁)の〝御用役人〟らだった。

 ◆ 都総務局総務課→都教委→校長という上意下達

 改憲政治団体・日本会議所属の自民党衆院議員・安倍晋三氏が7月8日、67歳で死去。この後、都庁総務局の猪口(いのぐち)太一総務部長・近藤豊久(とよひさ)総務課長の部下、大河原彰仁(おおがわらあきひと)・広報調整担当課長代理は7月11日、各局等庶務担当課長宛、「安倍晋三元総理の葬儀等における半旗の掲揚について」と題する、〝事務連絡〟なる文書を発出した。
 同文書は「令和4年7月11日、12日に葬儀等が行われることに伴い、本庁舎において半旗の掲揚を行います。つきましては、各局等の所管する事業所等においても、同日の半旗の掲揚につき、特段の御配慮をお願いいたします」と記述(傍線は筆者。以下、同。なお、都庁第1・第2庁舎の1階ポールには総務局の警備担当者が、常時掲揚している日の丸と都旗を半旗にして掲げた)。
 都庁の〝各局〟には都教委も入る。都教委ナンバー3の総務部長・田中愛子氏は、この文書を都立学校教育部長・村西紀章(のりあき)氏→同部都立高校教育課長・臼井宏一(ひろかず)氏の順番で下ろし、臼井氏の部下・長沢太士(たいじ)統括課長代理が7月11日、全都立255校(高校・中等教育学校・特別支援学校等)の校長に対し、安倍氏の通夜と葬儀に合わせ、〝半旗〟(いわゆる弔旗)掲揚を強制する(8月8日12時6分のNHKのオンライン首都圏ニュースは「促す」と表現しているが、後掲の理由で、強制と言える)文書を一斉メールしてしまったのだ。

 憲法第14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」、第15条2項は「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と規定。
 地方公務員法は、第13条・30条でこれら憲法の規定と同様、「平等取扱いの原則」や「公務員は一部の(権力者の)奉仕者ではない」旨を定め、かつ、第36条5項で「本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政(略)の業務の公正な運営を確保する(略)という趣旨において解釈され、及び運用されなければならない」と明記している。
 地方公務員である都総務局や都教委の職員(役人)が、特定の保守政党の政治家の葬儀等の日に〝半旗〟掲揚を強制するのは、この「政治的中立性」の規定に違反する、と指摘する人は多い。更に、特定の政党を支持・反対する政治的活動を禁じている教育基本法14条2項でも縛りを受ける都教委の役人が学校に強制する行為は、二重の違法性があると言えよう。

 ◆ 的外れな都総務局の〝半旗〟掲揚強制文書発出〝理由〟

 都総務局総務課等に抗議した都民らによると、同課は〝半旗〟掲揚強制文書発出の〝理由〟として、次の3点を挙げた。
 (1)内閣府等、政府から文書は来ていないが、松野博一(ひろかず)・内閣官房長官(自民党衆院議員)が「政府が半旗を掲揚する」旨述べたのを聞き、内閣府に電話で「国の機関が掲揚する」のを確認した
 (2)センセーショナルな(銃撃)事件で、都民に影響があった
 (3)安倍氏には、東京オリンピック・パラリンピック(以下、オリパラと略記)大会の招致から始まり、コロナ禍で延期の時、苦難の中、実施する方向に対応頂くなど、都政にご尽力頂いた

 これら都総務局総務課の主張する3点を、以下論破する。

 第一に、(1)の「国(官房長官)が掲げると言っているから、都の事業所等でも掲げろ」との〝理由〟は、「国と地方公共団体(注、東京都も当然入る)は対等だ」という趣旨で、四半世紀前に改正した、地方自治法第1条の二に違反している。
 即ち同法第1条の二は、1項が「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」、2項が「国は、前項の規定の趣旨を達成するため、(略)住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、(略)地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と規定。
 政治的中立であるべき都政を、国・政府の顔色を伺って歪(ゆが)めてしまうのは、同法の規定する自主性自立性に悖(もと)る。

 また、学校での〝半旗〟掲揚の是非を問う世論調査はないようだが、8月8日のNHK『ニュース7』は「政府が来月27日に安倍元総理大臣の国葬を行うことへの評価を聞いたところ、『評価する』が36%、『評価しない』が50%でした」という世論調査結果を報じた。「国葬反対」が半数に達している事実から、都の事業所等(注、学校を含む)への〝半旗〟掲揚強制についても、反対意見の方が多数であろうと推認できる。ゆえに今回、都総務局総務課は多数派の反対意見を無視し〝半旗〟掲揚強制文書を出した、と言えよう。

 第二に、(2)の主張は、情緒的・感情的なものであり、客観的な理由になっていない。公的機関にあるまじき、お話にならない〝理由〟だ。

 第三に、(3)の主張は、オリパラ大会は①開催そのもの、②都教委流オリパラ教育、特に③小中高校生等の観戦動員等に、反対意見がかなり多かったという事実に、目を閉ざしている。
 即ち、①は莫大な税金の浪費、具体的には本誌4月号で指摘した通り、各競技会場の建設・改修費や大会終了後の維持・管理費、選手村の贅ぜいたく沢な食事やボランティア用弁当を含む大量の廃棄=食品ロス問題、ボラの余剰ユニフォーム問題等に、多くのメディアや人々の反対が湧き起こったこと。
 ②は、筆者が月刊『紙の爆弾』2017年8月号・18 年9月号等で暴いてきた、都教委が16年4月から6年間、東京の公立学校の小4~高3全員に配布し続けた『オリパラ学習読本』の「表彰式で国旗・国歌を使う」というウソの記述(IOCの五輪憲章は「国際的な五輪活動の各国内又は地域内組織=NOCが採用し承認を得た旗・歌」だと明記。高嶋伸欣(のぶよし)琉球大名誉教授ら都民約100人が都側と係争中)を始めとする、国家権力側の〝国威発揚〟・国家主義(これ自体、平和・友好というオリの建て前に反するが・・・)の偏向教育。
 ③は、多数の保護者の反対意見はもとより、21年8月18日夜開催の都教育委員会・臨時会で、出席した全教育委員の反対すら押し切り、都教委の藤田裕司(ゆうじ)教育長(当時)と瀧沢佳宏(よしひろ)指導推進担当部長が(希望校とはいえ)コロナ禍での小中高校生等のパラ観戦動員を強行決定し(詳細は『週刊新社会』同年10月20日号拙稿参照)、批判の声が噴出した。
 都総務局総務課は、こういう市民側の反対を無視し、権力者・安倍氏のオリパラ推進の言動を〝是だ〟と決め付けて、〝半旗〟掲揚強制文書を出してしまったのだから、極めて一面的な思考・判断しかしていない、と言えよう。

 ◆ 「特段の御配慮」は命令表現~校長の判断の余地すらなく強制

 都教委による都立学校への〝半旗〟掲揚強制問題は、
 ①8月6日付『東京新聞』が、「都教委の担当者は取材に『事務連絡を転送しただけで、掲揚するかは各校の校長に任せた。弔意を強制したつもりはない』と回答」、
 ②8月8日12時6分のNHKオンライン首都圏のニュースも「都の教育委員会は『事務連絡を転送しただけで強制する意図は全くなかった』と説明しています」などと、共に都教委都立学校教育部都立高校教育課の職員らしき、氏名不詳の人物の弁解を掲載している。

 この「××しただけで」という言い回しは、例えば満員電車での痴漢の犯人が「たまたま手が触れただけで」「バランスを崩しただけで」といった表現で弁解するように、疾やましい行為を過小に印象付けたりごまかしたりする常套句だ。
 そこで、5次にわたる対都教委〝君が代〟不起立等不当処分撤回訴訟で、「減給超の懲戒処分、全て取消し」を勝ち取っている(5次訴訟は東京地裁で係争中)、「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会、東京『君が代』裁判原告団」の近藤徹(とおる)事務局長(元都立高教諭)に、〝強制〟の有無等を取材した。近藤さんは以下のように述べた。
 〔1〕日本語として「よろしくお取り扱い下さい」なら校長に一任する、つまり掲揚するか否か校長が判断できるニュアンスもあるが、それとは違い、(問題の都側文書の)「特段の御配慮をお願い」の「特別の配慮」という表現は、日本語としてはほとんど命令に近いのではないか。
 〔2〕人事考課(業績評価)制度徹底の下、都教委からの文書は普通の文書でも、校長は都教委の言う通りに動いてしまう。いわんや今回は「特段の御配慮」と書いてあるので、校長は「都教委の言う通りにしないとまずいな」となり、校長の判断の余地はなくなる。校長に任せたのではなく、強制だ。
 〔3〕かなり多数の高校で(校長が一方的に)掲揚したのではないか。

 ◆ 〝国葬〟で〝半旗〟・黙祷等強制しないよう都教委要請を

 弁護士の団体である自由法曹団は、8月5日から、
 ――岸田首相は、安倍元首相の国葬の理由として「その功績は素晴らしいものがある」と言いますが、それこそ賛否が大きく分かれるところです。/安倍元首相はその在任中、集団的自衛権の行使は憲法違反となるとしてきた従前の政府の立場を変更する閣議決定をおこない、集団的自衛権行使を容認する安保法制を多くの国民の反対の声を押し切って成立させました。また、特定秘密保護法や共謀罪の成立を強行し、規制緩和を進めて国民の中の貧富の格差を大きく拡大させました。さらに、森友・加計学園問題、「桜を見る会」等にみられる政治の私物化にかかわる疑惑等を首相自らが引き起こし、行政文書の改ざん問題も起き、未だそれらの真相は明らかとなっていません。/こうした安倍元首相の「業績」への正当な批判が封じられることになっては決してならないと考えます。――
 といった内容のChange.orgの「国葬反対電子署名」を実施し、8月中旬時点で既に9万人超が賛同署名している。
 これらにある戦争法等に加え、教育基本法に〝国を愛する態度〟を盛る改悪を強行した安倍晋三氏の評価は、人々の間で賛否が分かれている。

 一方、その教育基本法14条2項は改悪後も前述通り、学校教育の政治的中立性保持を規定し、1976年の最高裁旭川学力テスト判決は「(国家権力が)誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制する」のは、「憲法26 条・13条・・・からも許されない」と判じている。そして、最高法規である憲法第19条は「(国家権力は一人一人の)思想・良心の自由は、これを侵してはならない」と定め、第20・21条は「(児童・生徒・教職員・保護者一人一人の)信教の自由、一切の表現の自由は、これを保障する」と規定している。
 9月27日の〝国葬〟なるものでは、これら憲法や法律、判例に違反する〝半旗〟掲揚と黙祷とう、(朝礼等での安倍氏を讃える)校長講話等を強制する文書を出さないよう、都教委に対し、請願提出を始めとする抗議・要請の声を集中させていく取組が必要だ。

『マスコミ市民』(2022年9月号)


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