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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

歴史修正主義や改憲の世論形成に向けた検定意見が露骨に示された検定

2016年04月12日 | こども危機
 ◆ 検定結果(4)現行版と同一記述の書き換え強要
   皆さま    高嶋伸欣です


 少し間が空きましたが、検定結果についての情報・コメントの続きです

 1.今回の検定の特色の一つは、前回までの検定で認められていた記述にも次々と修正(書き替え)を指示する検定意見が多数付けられたことです。「日本史A・B」の5冊では73件、「現代社会」では66件です。そのようになった理由を、教科書課は「これまでが寛容過ぎたと考えている」と説明したとのことです(NHK,3月18日)。
 2.現行版の検定は2011年度で民主党政権下でした。今回の2015年度は第2次安倍政権下です。「安倍カラー」「政府意向、色濃く反映」の各紙の見出しの通り、歴史修正主義や改憲の世論形成に向けた検定意見が露骨に示された検定でした。
 そのことを如実に示したのが上記の73件と66件の検定意見の存在ですし、教科書課の開き直り、且つ傲慢な説明です。
 3.そうした政権による介入、あるいは文科省の政権政党へのすり寄りは厳しく問題にすべきです。と同時に、そうした状況下でも、著者たちは言いなりにならずに切り返しています。結果として、政権勢力にとっては藪蛇の事態になるような修正記述が、今回も登場しています。
 その具体例を紹介します。いずれも『高校日本史A』(実教出版)です。

 4.1919年の植民地朝鮮における「3・1独立運動」に対する総督府の鎮圧について、同書申請本(白表紙本)では現行版と同様に「総督府は、軍隊を動員して運動を厳しく鎮圧して7500人もの死傷者をだした」と記述していました。
 これに対して「通説的な見解がないことが明示されておらず、生徒が誤解するおそれがある表現である(人数)」という検定意見がつきました。
 その結果、「~厳しく弾圧しおびただしい数の死者をだした」に書き換えられました。
 5.同様に、1923年の関東大震災の時の朝鮮人虐殺事件についての記述「警察や自警団が、6000人以上の朝鮮人と約700人の中国人を虐殺した」に対しても、上記4と同一の検定意見が付き、「~おびただしい数の朝鮮人~」に書き替えさせられました。
 6.ここまでであれば、著者の側は押されっぱなしですが、上記4と5の場合、著者の側が逆襲しているのです。それは、4と5のいずれにおいても、注記を新設して、検定側がいう「通説的見解がないことを明示」する形で、諸説の被害者数を具体的に記述したのです。
 「3・1独立運動」弾圧では、『朝鮮独立運動の血史』が約7500人、朝鮮総督府調査が約550人、朝鮮駐留日本軍調査が約400人。
 「関東大震災」での朝鮮人虐殺では、在日本関東地方罹災朝鮮同胞慰問班調査の約6600人、吉野作造報告書の約2600人、司法省調査の約230人など、という具合です。
 7.この注記からは一見すると「通俗的見解(定説)」がないようにも受け取れます。けれども同書は一般の啓蒙書や自習書ではなく、授業の主たる教材としての教科書です。教師の一声「所説を比較してみての特色は?」によって、生徒は「政権寄りの調査の数字はけた違いに小さい」ことに気付くはずです。
 8.いつの時代も、権力者は権力側の責任が問われる不祥事については、実態を曖昧にしたり、ことを矮小化してきたのだと、生徒が読み取ることにつながります。そうなれば、検定官の思惑は見事に外され、切り返されたことになります。
 9.さらにそうした事実の歪曲が、戦前の1919年や1923年の頃だけでなく今現在の日本で、自分たちの学びの主要教材である教科書の記述に対しても、同様に政治的思惑によって強行されているのだと、生徒が気付く事例にもなっているというわけです。
 上記の事例は新聞でも報道されています。検定の事例を教材とする授業実践は、1980年代前半の「現代社会」などで一般化しています。今回のこのケースは、そうした授業の新たな教材になります。
 10.この部分に関しての勝負は、”執筆者側の勝ち!”ではないでしょうか。
 また、甘いと言われそうですが。

 11.ちなみに、2014年度の中学歴史教科書検定でも、「学び舎」本が関東大震災での朝鮮人虐殺について、コラムの本文に「数千人の朝鮮人が虐殺された」としていた記述を、「おびただしい数の朝鮮人が~」に書き替えさせられています。けれども同書の場合も、注記で上記6、とほぼ同じ各種調査数字を列記することで、7~9の効果を得られるようにできています。
 結果として、こうした「学び舎」本の対応が『高校日本史A』に引き継がれていることにもなった、といわけです。
    以上 文責は高嶋です    転載・拡散は自由です

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