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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

3部制高校とはどんな仕組みか、長所も短所も現場リポート

2018年11月20日 | こども危機
  《『いまこそ』シリーズ「いま学校現場では」》
 ◆ 東京都立浅草高等学校の紹介


 *はじめに
 東京における最も有名な観光地のひとつ「浅草」の名を冠する本校は,閉校した都立台東商業の跡地に,平成18年に開校した。2学期制・単位制・3部制であることをアピールポイントにする,現在13年目の比較的若い学校である。
 一般に,2学期制や単位制の学校は近年増加傾向にあるためよく知られているが,3部制というシステムを表す言葉はあまり知られていない。私自身,本校に着任するまで詳しくは知らなかった。
 3部制とは,簡単にいえば,1日の授業時間帯を,1~4校時を指す「Ⅰ部」5~8校時を指す「Ⅱ部」9~12校時を指す「Ⅲ部」に3分割している学校のことである。
 都教委ウェブサイトでは,「昼夜間定時制」と説明している。(類似校は,一橋,荻窪,八王子拓真など。)
 以下は,本校への異動後半年が経過した時点で私が感じていることの簡単な紹介である。
 *教育課程その他

 全生徒は,各部ごとに募集定員を割り振られた学力検査を受検し,合格した部に所属する。
 校内ではⅠ部生(ABC組),Ⅱ部生(DEF組),Ⅲ部生(GH組)と呼び分けられるが,すべて普通科である。
 在校生は基本的に,自分の所でない2つの部(他部という)の授業も比較的自由に選択履修することが可能である。
 定時制課程であるため,修業年限4年間74単位以上の単位を修得することにより卒業要件が満たされる,というのが原則だが,3年次終了時点で上記要件を満たした生徒に対しては,修業年限を1年短縮しての卒業も認めている。他部の授業を履修して単位修得することで,それが可能となるのだ。
 校内では「3修生」(=3年修了者),「4修生」(=4年修了者)などと呼んでいる。毎年,6割程度の3修生がいるようだ。
 単位認定に関しては,外部団体主催の検定試験などにより,「教育課程外の資格取得等による認定単位」という位置づけでの認定単位もある。その他,教育課程外での単位認定を行なうことがあるが,詳細な説明は省略する。
 *校内の日常

 続いて,本校生徒・教員の1日に目を向ける。
 1校時は8時40分開始だが,SHRは基本的に行なわないため,登校した生徒は授業を受ける教室へ直行する
 本校の特徴として,45分授業を2コマ連続で行なうことが基本だ。そのため,例えば数学Ⅱ(4単位)は,(火)1~2校時と(金)1~2校時という具合に分割され,数学Ⅱ(3単位)ならば(月)1~2校時と(水)1校時のようになる。
 生徒は,1日平均3科目(5~6コマ)の授業を履修していることが多いようだ。
 選択科目の時間割次第では,「空き時間」が生じることもあり得る。その場合,その時間にファミレスやコンビニに行ったり,図書室や近隣の公園等で時間を暑過ごすことも自由である。
 なお,Ⅲ部の開始直前に,給食時間(30分)が置かれている
 その後,12校時終了の21:05まで授業が続く。

 ところで,教員と副校長の勤務時間は,A勤8:30~17:00B勤13:00~21:30である。特別に,学校行事や式典,考査期間等には全教員がC勤10:15~18:45となる。
 副校長A,Bに各1名。長居するのが好きらしい学校長は,出張時を除くと大体8:00~22:00で在校している。
 *一長一短

 2コマ連続を基本として時間割を組むことで,例年3月に次年度時間割を編成する教務部は,大いに助かっている。1日12校時で週5日の時間枠を埋めるのは,かなり難儀な作業となるからだ。
 時間割枠が多いことに合わせ,選択科目も多く開講している。生徒にとって,好きな科目・講座を都合の良い時間帯に履修する,といった自己裁量が増えるため,生徒からの評判はよい。
 一方,生徒の中には上記「空き時間」に自由を謳歌しすぎる余り,授業をサボる者がいたり,学校近隣での喫煙が発覚したりと,生活指導上の懸念や生徒管理上の問題も少なからず発生している。
 更にいえば,本校は元々,義務教育での学習の定着度が低かった中学生が多く集まる学校である。それゆえ,2コマ連続の長い授業時間では,集中力が持続しない生徒が多い。それゆえ,嫌気が差した科目を途中で投げ出したり,夏休み前後で「未履修」を抱えるケースも多数ある。
 高校入学時から,大学生のような授業システムで学校生活を送ることになる一方,自主性や自己管理をハイレベルで要求されるのが本校である。
 いわゆる教育困難校に近く,義務教育課程の「学び直し」が必要な学力レベルの生徒も多数いる中で,本校のシステムと生徒の実情との乖離は大きいと痛感しているところである。(Y.M)
予防訴訟をひきつぐ会通信『いまこそ 17号』(2018年10月11日)

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