政治色が濃かった都立高校卒業式都教委挨拶

　◆ 都教委、挨拶文で五輪に３回言及
　　　～卒業式派遣幹部に宣伝バッジ着用も指示 （週刊新社会）

永野厚男・教育ジャーナリスト

　今春の卒業式で、都教委が政治色の濃い問題を学校教育に持ち込んでいる、悪（あ）しき事案を取材した。
　都教委が17年３月の全都立高校の卒業式で、「オリンピック・パラリンピック」に３回も言及する挨拶文を、派遣した幹部職員に読み上げさせていた。情報公開請求に取り組む都民らへの、６月１日までの取材で明らかになった。
　〝君が代〟強制の通達後、都教委は毎年、卒業式に幹部職員を派遣。壇上で"日本人としての自覚"や"愛国心"強調の挨拶文を読み上げさせてきた。今春の都立高１８６校（約２３０課程）の卒業式では、これら国家主義的な文言は消えたが、以下の①～③の通り３度も、五輪をＰＲした。
　①都立高卒業生の鹿沼由理恵（かぬまゆりえ）選手が、リオデジャネイロ・パラリンピック自転車競技で「我が国初の銀メダルに輝」き、「日本の選手たちが、過去最多のメダルを獲得し」た。
　②（ノーベル賞受賞の大隅良典（おおすみよしのり）氏と並べ）五輪日本代表選手の活躍は、努力や「助け合い支え合う」大切さを気付かせてくれた。
　③３年後、東京五輪開催。「豊かな国際感覚や多様性を受け入れる資質・・・を、今後より一層身に付けていくことが求められてい」る。
　都立国際高校（目黒区）の卒業式に出た保護者に取材すると、「近所の通達発出前の卒業生から、本校の卒業式は在校生すべての国の旗を掲げ、君が代の前に『起立しない自由もある』と説明があったと聞いたが、今はこれらの配慮は皆無」と述べ、都教委の③の演説には「画一化した式を強制しているのに、『多様性を受け入れる資質』などとよく言えるなと、白々しく感じた」と語った。
　同時に公開された「卒業式等派遣者用マニュアル」は、「国歌斉唱」時「国旗に正対」せよと明記。
　「当日の服装」では"五輪バッジ"着用を求め、"ラグビーワールドカップ""アンド東京"バッジも「ＴＰＯに応じて付けてください」と記述。
　都教委は、00年３月の国立市立小学校（２小・５小）の卒業式で、無文字のピースリボンを付けた教諭らの一部を、「地方公務員法の職務専念義務違反だ」と決め付け、戒告等の懲戒処分にした。
　だが式と無関係なのに、都の五輪推進政策に沿うからと、五輪バッジを着用させることとの憲法上の矛盾を、都教委は都民に説明できないままだ。
『週刊新社会』2017年６月13日号「ひとこと」欄掲載記事に加筆