◆ 学校に日の丸 何のため?
令和初日10連休の中…閣議決定受け (東京新聞【ニュースの追跡】)
令和が始まった一日、各地の学校で祝意を表す「日の丸」が掲揚された。国旗掲揚を促す政府の閣議決定を受けての実施だ。「改元に乗じてナショナリズムを押しつけるのか」と警戒する見方がある一方、連休中で人けがない学校に旗だけが揚がる光景に「何のため?」と疑問の声も上がった。(佐藤直子)
◆ 文科省「あくまでお願い」
「前の天皇ご自身は被災地訪問や戦没者の慰霊の旅を続けられ一生懸命だったと思う。けれど、即位に学校が日の丸を掲揚して祝意を示すのは、教育機関を通じて国家を敬えと、子どもに対して押しつけることにならないでしょうか」
宮城県の五十代女性教師は問い掛ける。勤め先の学校は十連休の間は完全施錠となるはずだったが、国旗掲揚作業などのために職員が出勤した。
政府は四月、明仁天皇(当時)の退位と徳仁天皇の即位に際し、地方公共団体や学校などに対し、国旗掲揚を求める閣議決定をした。
文部科学省は同月に二度、都道府県教育委員会を通じて、市町村教育委員会や学校などに通知した。
二日付「御即位当日における祝意奉表について」は事務次官名で十四の宛先が並ぶ。
二十二日付の「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について」では、「国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われます」と要請している。
同省教育課程課の名子学課長補佐は「代替わりに祝意を示す閣議決定を受けて通知した。あくまでお願いで強制はしていない」と話す。
しかし、こうした説明には疑問の声が上がる。
◆ ナショナリズム高揚に利用懸念も
全国の公立小中高校では、一九八九年の学習指導要領改定に基づき、卒業式や入学式の場で国旗掲揚や国歌斉唱を実施している。
これは、教育機関を通じて子どもたちの内心の自由に踏み込むものだと批判を浴びてきた。
大阪府の高校教員、増田俊道さん(57)は「誰もいない学校での掲揚は誰のためかと思う。三十年前の平成の代替わりでは感じなかった危険な祝賀ムードを感じた」という。
大阪府の公立学校では橋下徹府知事時代の二〇一一年に国旗国歌条例が定められて以来、国旗は常時掲揚されてきた。増田さんの勤務校でも屋上のポールに掲揚したままだ。
「平成の代替わりのときには喪中を示す半旗を掲げる、掲げないで教育委員会と攻防があったが、今回は日の丸に慣らされていました」という。
増田さんの勤務校では四月下旬、教室に一枚の通知が張り出された。「天皇陛下のこ退位と皇太子殿下のご即位が同時に行われ、私たちにとってまさに平成から令和への大きな時代の幕開けが訪れる時期になります」と記されていた。「子どもたちが読んでどう思うのか」と心配になった。
全国的な状況は把握されていないが、宮城のほか、東京や京都、沖縄などでも五月一日に日の丸が掲揚された。
琉球大学非常勤講師の宮城晴美さん(沖縄戦研究)は「天皇自身は政治的発言はできないが、政治の側が新元号フィーバーに乗じて、日の丸や君が代を国威発揚に利用しょうとしているのを感じる」と指摘する。
「日の丸は他国にとっては先の戦争のシンボル。日本軍の兵士は日の丸を抱えて出征した。その歴史や旗や歌の意味、役割の検証は昭和も平成も十分にされてこなかった。再びナショナリズムの高揚に利用されるのは危ない」
『東京新聞』(2019年5月9日)
令和初日10連休の中…閣議決定受け (東京新聞【ニュースの追跡】)
令和が始まった一日、各地の学校で祝意を表す「日の丸」が掲揚された。国旗掲揚を促す政府の閣議決定を受けての実施だ。「改元に乗じてナショナリズムを押しつけるのか」と警戒する見方がある一方、連休中で人けがない学校に旗だけが揚がる光景に「何のため?」と疑問の声も上がった。(佐藤直子)
◆ 文科省「あくまでお願い」
「前の天皇ご自身は被災地訪問や戦没者の慰霊の旅を続けられ一生懸命だったと思う。けれど、即位に学校が日の丸を掲揚して祝意を示すのは、教育機関を通じて国家を敬えと、子どもに対して押しつけることにならないでしょうか」
宮城県の五十代女性教師は問い掛ける。勤め先の学校は十連休の間は完全施錠となるはずだったが、国旗掲揚作業などのために職員が出勤した。
政府は四月、明仁天皇(当時)の退位と徳仁天皇の即位に際し、地方公共団体や学校などに対し、国旗掲揚を求める閣議決定をした。
文部科学省は同月に二度、都道府県教育委員会を通じて、市町村教育委員会や学校などに通知した。
二日付「御即位当日における祝意奉表について」は事務次官名で十四の宛先が並ぶ。
二十二日付の「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に際しての学校における児童生徒への指導について」では、「国民こぞって祝意を表する意義について、児童生徒に理解させるようにすることが適当と思われます」と要請している。
同省教育課程課の名子学課長補佐は「代替わりに祝意を示す閣議決定を受けて通知した。あくまでお願いで強制はしていない」と話す。
しかし、こうした説明には疑問の声が上がる。
◆ ナショナリズム高揚に利用懸念も
全国の公立小中高校では、一九八九年の学習指導要領改定に基づき、卒業式や入学式の場で国旗掲揚や国歌斉唱を実施している。
これは、教育機関を通じて子どもたちの内心の自由に踏み込むものだと批判を浴びてきた。
大阪府の高校教員、増田俊道さん(57)は「誰もいない学校での掲揚は誰のためかと思う。三十年前の平成の代替わりでは感じなかった危険な祝賀ムードを感じた」という。
大阪府の公立学校では橋下徹府知事時代の二〇一一年に国旗国歌条例が定められて以来、国旗は常時掲揚されてきた。増田さんの勤務校でも屋上のポールに掲揚したままだ。
「平成の代替わりのときには喪中を示す半旗を掲げる、掲げないで教育委員会と攻防があったが、今回は日の丸に慣らされていました」という。
増田さんの勤務校では四月下旬、教室に一枚の通知が張り出された。「天皇陛下のこ退位と皇太子殿下のご即位が同時に行われ、私たちにとってまさに平成から令和への大きな時代の幕開けが訪れる時期になります」と記されていた。「子どもたちが読んでどう思うのか」と心配になった。
全国的な状況は把握されていないが、宮城のほか、東京や京都、沖縄などでも五月一日に日の丸が掲揚された。
琉球大学非常勤講師の宮城晴美さん(沖縄戦研究)は「天皇自身は政治的発言はできないが、政治の側が新元号フィーバーに乗じて、日の丸や君が代を国威発揚に利用しょうとしているのを感じる」と指摘する。
「日の丸は他国にとっては先の戦争のシンボル。日本軍の兵士は日の丸を抱えて出征した。その歴史や旗や歌の意味、役割の検証は昭和も平成も十分にされてこなかった。再びナショナリズムの高揚に利用されるのは危ない」
『東京新聞』(2019年5月9日)
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