◆ 絶対使わせたくない道徳教科書
公開議題は報告事項6点。
①都立中高一貫教育校検証委員会報告について
②教科用図書選定審議会の答申について~中学校道徳教科書調査研究資料について~
③来年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について
④「商業教育コンソーシアム東京」について
⑤東京都英語村TOKYO GLOBAL GATEWAYの開設について
⑥昨年度の体罰の実態調査について。
非公開議題は議案(停職以上の処分)が7件、報告(減給以下)もあがっていた。
① 都立中高一貫教育校検証委員会報告について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/administration/action_and_budget/plan/secondary_school/files/release20180628_01/02.pdf
都立中高一貫教育校10校(中等教育学校5校、高校入学時に一般中学校から受検して入学する生徒もいる、併設型中高一貫教育校5校)の取り組みの成果や課題を検証したとしてその報告がされた。
中高一貫教育校の設置目的である「将来のリーダーとなり得る人材の育成」は概ね図られている。「中等教育の複線化」も適切に機能しているという。「進学実績」がその根拠の第一か。生徒を競走馬としか、見ていないよう。
中高一貫教育校及び併設型中学校入学時には受検倍率が5~6倍ある一方で、併設型高校の受検倍率が1倍以下となる学校も出ている。付属中からの生徒と馴染めるか、不安を持つ故とのこと。
また、一般の教員人事だけでなく、「指導力のある教員を確保するため」に公募制人事を行っているが、応募者数が大きく減少している(充足率53.1%)とのこと。
旧学区ごとに偏差値が2番目の学校を中高一貫教育校にして、「成果」を挙げたいと都教委は目論んだのだが、こうした落とし穴があったのだ。偏差値がトップの学校は伸び幅が少ないが、2番目ならば、まだ伸びるという計算だったと、数年前の定例会で発言があったと記憶する。
中等教育の複線化は要らぬお世話だし、「リーダーの人材育成」も不要。事実をもとに考え判断する力を育てることを公立の中等教育の柱に据えてもらいたい。
② 教科用図書選定審議会の答申について~中学校道徳教科書調査研究資料について~
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/textbook/elementary_and_junior_high/files/research_2019_js/31_32_jh.pdf
1980年代までは各学校が選定した結果を集計し、討議した上で区市町村ごとに教科書が採択されてきたが、教育委員会の肥大化=介入と相まって、教員の声が採択に反映されなくなって久しい。
教育委員が教科書を採択するにあたり、その参考となるよう教育委員会が作るとされているのがこの調査研究資料。
調査資料は、各社ごとに
「『主として自分自身に関すること』を扱っている教材」
「『主として人との関わりに関すること』を扱っている教材」
「『主として集団や社会との関わりに関すること』を扱っている教材」
「『主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること』を扱っている教材」
「情報モラルや現代的な課題を扱っている教材」「先人の伝記等が取り上げられている教材」
等について、教材名とその数を挙げる。
また、都教委方針に基づき、これまでのように、
「国旗・国歌の扱い」「防災や自然災害の扱い」
「性差と家族に関する表現」
「オリンピック・パラリンピックの扱い」
「北朝鮮による拉致問題の扱い」
についても教材名を挙げる。
「北朝鮮による拉致問題の扱い」については、「記載のないことを確認した」と記述する。笑止千万。
安倍首相のブレーンで、育鵬社の歴史・公民教科書を作成した日本教育再生機構理事長の八木秀次氏が立ち上げた日本教科書会社の教科書は絶対に使わせたくない教科書。反面教師的に使用すれば、ツッコミどころ満載とも言えるのだが。
同社教科書が、「『主として自分自身に関すること』を扱っている教材」として挙げているのが「十四歳の責任」。その内容は14歳になったら刑事罰があると脅す。脅しで「非行」が予防できるのではないのに、自身の生き方を考える機会を持つことで心が成長するのに、そこがわかっていない読み物だ。
「先人の伝記等が取り上げられている教材」では、台湾でダム建設など水利事業を行なった八田を称える「大地 八田與一の夢」。日本が植民地にした台湾であることには一言も触れず、誤った歴史認識を与える。
加えて、「込められた想い『和解の力』」と題して2016年12月27日に安倍首相が真珠湾で行った演説を掲載。まるで、安倍首相の言う「日米同盟は世界最強の同盟」の宣伝のようだ。教育委員がこうした問題点を注意深く観てくれるだろうか。
なお、小学校道徳学習指導要領解説書は次のように述べる。中学校の解説書にも書かれるだろう。
そして、「国家の価値観」を刷り込む道徳の教科化の問題点を広め、撤廃にもっていかねばと思う。
③ 来年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/textbook/high_school/research_2019.html
この一年間で新たに検定に合格した教科書も採択の対象になるので、それに関する調査研究資料が出された。
こちらも、「国旗・国歌の扱い」「防災や自然災害の扱い」「性差と家族に関する表現」「オリンピック・パラリンピックの扱い」「北朝鮮による拉致問題の扱い」について挙げる。
④ 「商業教育コンソーシアム東京」について
「都立高校改革 新実施計画」(2016年)に沿って商業科をビジネス科に改編し、企業や大学等との連携でビジネスを実地に学ぶのだという。
新たな施策・事業展開ばかりが都教委の方針だが、こうしたことによって教員のオーバーワークは肥大するばかり、肝心の生徒たちと向き合う時間がさらに奪われるのではないか、と危惧する。
⑤ 東京都英語村TOKYO GLOBAL GATEWAYの開設について
巨額な金を投資した英語村が9月に開設となる。すでに今年度学校利用予約が45932名(362団体)入っているとのこと。教員定数を増やすなどに使われるべきお金がここに向けられたのだ。
⑥ 昨年度の体罰の実態調査について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2018/files/release180628_04/besshi_h29.pdf
調査を開始した2012年度と比べると、体罰、不適切な行為を行った者は1/8に減少した。
しかし、一方で、体罰には至らない不適切な行為のうち、暴言等の行為は前年度比で8%増加している。
体罰では、悪質・危険な行為を行った事案が依然として発生している(設定時間内に走ることができなかった生徒に通常の練習量の3倍を超えて走らせる体罰を行い、うち1名に熱中症及び多臓器不全の障害を負わせた、永福学園の事例他)。
都教委は体罰根絶に向けて、7・8月を体罰防止月間とし、校内研修を実施する、全公立学校が体罰根絶宣言をする等を挙げるが、それでは根絶には程遠い。
指導=指示=支配を良しとする人間観が誤りであることに気付かないかぎり、体罰はなくならない。
教員自身が都教委・校長から指示=支配されている環境を誤りと感じなければ、生徒との関係にも気づかないだろう。
「熱心さが高じ、熱心な教員ほど体罰に陥りやすい。(体罰を問題視することで)そういう教員のやる気が削がれることを心配する。」との遠藤教育委員の発言は、指導=指示=支配の人間観から来るもので、日大アメフト部の事件に通底する考え方と思う。
遠藤教育委員の発言に対して都教委担当者も他の教育委員も批判できなかったのだが、彼らには意識して異なる考え方に接し、研鑽を積んでほしいと思う。
また、教員の服務事故(「君が代」不起立処分を除く)が減らないことと体罰とは相関関係にあるのではないだろうか。
これについても、都教委の面々は論じてほしいと思う。
『レイバーネット日本』(2018-07-02)
http://www.labornetjp.org/news/2018/0628nedu
公開議題は報告事項6点。
①都立中高一貫教育校検証委員会報告について
②教科用図書選定審議会の答申について~中学校道徳教科書調査研究資料について~
③来年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について
④「商業教育コンソーシアム東京」について
⑤東京都英語村TOKYO GLOBAL GATEWAYの開設について
⑥昨年度の体罰の実態調査について。
非公開議題は議案(停職以上の処分)が7件、報告(減給以下)もあがっていた。
① 都立中高一貫教育校検証委員会報告について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/administration/action_and_budget/plan/secondary_school/files/release20180628_01/02.pdf
都立中高一貫教育校10校(中等教育学校5校、高校入学時に一般中学校から受検して入学する生徒もいる、併設型中高一貫教育校5校)の取り組みの成果や課題を検証したとしてその報告がされた。
中高一貫教育校の設置目的である「将来のリーダーとなり得る人材の育成」は概ね図られている。「中等教育の複線化」も適切に機能しているという。「進学実績」がその根拠の第一か。生徒を競走馬としか、見ていないよう。
中高一貫教育校及び併設型中学校入学時には受検倍率が5~6倍ある一方で、併設型高校の受検倍率が1倍以下となる学校も出ている。付属中からの生徒と馴染めるか、不安を持つ故とのこと。
また、一般の教員人事だけでなく、「指導力のある教員を確保するため」に公募制人事を行っているが、応募者数が大きく減少している(充足率53.1%)とのこと。
旧学区ごとに偏差値が2番目の学校を中高一貫教育校にして、「成果」を挙げたいと都教委は目論んだのだが、こうした落とし穴があったのだ。偏差値がトップの学校は伸び幅が少ないが、2番目ならば、まだ伸びるという計算だったと、数年前の定例会で発言があったと記憶する。
中等教育の複線化は要らぬお世話だし、「リーダーの人材育成」も不要。事実をもとに考え判断する力を育てることを公立の中等教育の柱に据えてもらいたい。
② 教科用図書選定審議会の答申について~中学校道徳教科書調査研究資料について~
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/textbook/elementary_and_junior_high/files/research_2019_js/31_32_jh.pdf
1980年代までは各学校が選定した結果を集計し、討議した上で区市町村ごとに教科書が採択されてきたが、教育委員会の肥大化=介入と相まって、教員の声が採択に反映されなくなって久しい。
教育委員が教科書を採択するにあたり、その参考となるよう教育委員会が作るとされているのがこの調査研究資料。
調査資料は、各社ごとに
「『主として自分自身に関すること』を扱っている教材」
「『主として人との関わりに関すること』を扱っている教材」
「『主として集団や社会との関わりに関すること』を扱っている教材」
「『主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること』を扱っている教材」
「情報モラルや現代的な課題を扱っている教材」「先人の伝記等が取り上げられている教材」
等について、教材名とその数を挙げる。
また、都教委方針に基づき、これまでのように、
「国旗・国歌の扱い」「防災や自然災害の扱い」
「性差と家族に関する表現」
「オリンピック・パラリンピックの扱い」
「北朝鮮による拉致問題の扱い」
についても教材名を挙げる。
「北朝鮮による拉致問題の扱い」については、「記載のないことを確認した」と記述する。笑止千万。
安倍首相のブレーンで、育鵬社の歴史・公民教科書を作成した日本教育再生機構理事長の八木秀次氏が立ち上げた日本教科書会社の教科書は絶対に使わせたくない教科書。反面教師的に使用すれば、ツッコミどころ満載とも言えるのだが。
同社教科書が、「『主として自分自身に関すること』を扱っている教材」として挙げているのが「十四歳の責任」。その内容は14歳になったら刑事罰があると脅す。脅しで「非行」が予防できるのではないのに、自身の生き方を考える機会を持つことで心が成長するのに、そこがわかっていない読み物だ。
「先人の伝記等が取り上げられている教材」では、台湾でダム建設など水利事業を行なった八田を称える「大地 八田與一の夢」。日本が植民地にした台湾であることには一言も触れず、誤った歴史認識を与える。
加えて、「込められた想い『和解の力』」と題して2016年12月27日に安倍首相が真珠湾で行った演説を掲載。まるで、安倍首相の言う「日米同盟は世界最強の同盟」の宣伝のようだ。教育委員がこうした問題点を注意深く観てくれるだろうか。
なお、小学校道徳学習指導要領解説書は次のように述べる。中学校の解説書にも書かれるだろう。
「『特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育が目指す対極にあるものと言わなければならない』解説書は教科書が書く価値観と異なる価値観にも誠実に向き合うことを勧める。教員たちには、臆することなくこのことを実践してほしい。
『多様な価値観の、時に対立する場合を含めて、誠実にそれらの価値に向き合い、道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質である』との(中教審:筆者)答申を踏まえ、発達の段階に応じ、答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童が自分自身の問題と捉え、向き合う『考える道徳』、『議論する道徳』へと転換を図るものである。」
そして、「国家の価値観」を刷り込む道徳の教科化の問題点を広め、撤廃にもっていかねばと思う。
③ 来年度使用都立高校用教科書の調査研究資料について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/textbook/high_school/research_2019.html
この一年間で新たに検定に合格した教科書も採択の対象になるので、それに関する調査研究資料が出された。
こちらも、「国旗・国歌の扱い」「防災や自然災害の扱い」「性差と家族に関する表現」「オリンピック・パラリンピックの扱い」「北朝鮮による拉致問題の扱い」について挙げる。
④ 「商業教育コンソーシアム東京」について
「都立高校改革 新実施計画」(2016年)に沿って商業科をビジネス科に改編し、企業や大学等との連携でビジネスを実地に学ぶのだという。
新たな施策・事業展開ばかりが都教委の方針だが、こうしたことによって教員のオーバーワークは肥大するばかり、肝心の生徒たちと向き合う時間がさらに奪われるのではないか、と危惧する。
⑤ 東京都英語村TOKYO GLOBAL GATEWAYの開設について
巨額な金を投資した英語村が9月に開設となる。すでに今年度学校利用予約が45932名(362団体)入っているとのこと。教員定数を増やすなどに使われるべきお金がここに向けられたのだ。
⑥ 昨年度の体罰の実態調査について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2018/files/release180628_04/besshi_h29.pdf
調査を開始した2012年度と比べると、体罰、不適切な行為を行った者は1/8に減少した。
しかし、一方で、体罰には至らない不適切な行為のうち、暴言等の行為は前年度比で8%増加している。
体罰では、悪質・危険な行為を行った事案が依然として発生している(設定時間内に走ることができなかった生徒に通常の練習量の3倍を超えて走らせる体罰を行い、うち1名に熱中症及び多臓器不全の障害を負わせた、永福学園の事例他)。
都教委は体罰根絶に向けて、7・8月を体罰防止月間とし、校内研修を実施する、全公立学校が体罰根絶宣言をする等を挙げるが、それでは根絶には程遠い。
指導=指示=支配を良しとする人間観が誤りであることに気付かないかぎり、体罰はなくならない。
教員自身が都教委・校長から指示=支配されている環境を誤りと感じなければ、生徒との関係にも気づかないだろう。
「熱心さが高じ、熱心な教員ほど体罰に陥りやすい。(体罰を問題視することで)そういう教員のやる気が削がれることを心配する。」との遠藤教育委員の発言は、指導=指示=支配の人間観から来るもので、日大アメフト部の事件に通底する考え方と思う。
遠藤教育委員の発言に対して都教委担当者も他の教育委員も批判できなかったのだが、彼らには意識して異なる考え方に接し、研鑽を積んでほしいと思う。
また、教員の服務事故(「君が代」不起立処分を除く)が減らないことと体罰とは相関関係にあるのではないだろうか。
これについても、都教委の面々は論じてほしいと思う。
『レイバーネット日本』(2018-07-02)
http://www.labornetjp.org/news/2018/0628nedu
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