◆ セネガル戦でまたも「旭日旗」 (ハーバー・ビジネス・オンライン)
日本代表を応援するのに旭日旗を出すべきではないこれだけの理由
ワールドカップ・ロシア大会、日本代表が8年ぶりにグループリーグを突破して、次戦は世界ランキング3位のベルギーとのベスト8進出をかけた戦いとなる。前戦での西野朗監督の時間切れを狙った消極的な采配は、日本国内のみならず世界でも賛否両論となっているようだが、その是非はともかくとして、まだ到達がしたことがない高みを目指した次の一戦には日本中の期待が集まることだろう。
そのようなサッカー日本代表の戦いに水を差しかねない出来事があった。先に行われたグループリーグ2戦目、日本-セネガル戦で、日本のサポーターから旭日旗が出されたということが韓国メディアによって指摘されている。韓国メディアはそのときの映像をあわせて紹介しているため、これは事実と思われる。
旭日旗の問題について、熱心なサッカーファンならすでに承知していることが知られていないようだ。この状況を放置しておくと一般の人たちに誤解を生みかねないだけではなく、今の日本代表の善戦とグループリーグ突破の快挙に泥を塗るようなことが起こりかねない。
よってここに旭日旗の問題について改めて注意喚起をしておくとともに、この旭日旗が禁止された背景について筆者なりの見解を記すことにする。
◆ 旭日旗はすでにサッカースタジアムの公式戦では禁止されている
旭日旗の使用はすでに、FIFA(国際サッカー連盟)の下部組織で、日本サッカー協会が所属するAFC(アジアサッカー連盟)が「discriminatory symbol relating to national origin and political opinion(国家の起源や政治的意見を表明する差別的なシンボル)」ということで禁止している。
これは昨年に行われたアジアチャンピオンズリーグの川崎フロンターレ(日本)と水原三星(韓国)の試合で、川崎のサポーターが試合中の旭日旗をあげ、両チームのサポーター間で大きなトラブルとなった時に下された裁定である。
この時、川崎フロンターレは、1年間の執行猶予付きでホームゲーム1試合の無観客試合と罰金1万5000ドルの処分も受けている。
川崎フロンターレはAFCにこの判断を不服として上訴しているが、この申し立ては棄却された。この裁定はここで確定となったのである。
これまで日本サッカー協会は、国際試合での旭日旗を応援のために使うことについて玉虫色の判断をしており、中国や韓国といった国々との試合でのみ、これをスタジアムにおいて没収するなどの処置をしてきていた。
だが、この裁定により、大きなトラブルを巻き起こしかねない旭日旗の使用は、日本サッカー協会の上位組織であるAFCが公式に処分の対象として公に禁止されることになった。
これについて、一部のメディアやネット上の議論の中には「旭日旗についてクレームをつけているのは韓国だけ」というような論調があるのだが、これは大きな間違いである。
AFCはマレーシアのクアラルンプールに本部を置き、歴代マレーシアをはじめとするムスリム諸国や東南アジアの国々の影響力が強い。AFCはもともとこうしたイギリスやオランダというサッカー大国の植民地であった国々から組織されたものだ。
これらの国々に比べれば東アジアの日本や韓国といった国はサッカー後進国ともいえる。ちなみに、アジアで最初にワールドカップに出場したのは、蘭領東インド、つまり戦前の独立前のインドネシアだ。これらの国々と中近東のイスラム国が強い影響力をもっているのが、AFCである。
なお、この旭日旗の裁定を下したAFCの倫理委員会には韓国の理事は入っていない。委員長はシンガポール人、副委員長はイエメンと中国の委員である。
◆ AFCに強い影響力をもつ東南アジアと戦争の記憶
そのAFCに強い影響力をもつ東南アジアの国々は第二次世界大戦の記憶をいまだ忘れることなく語り続けている。
日本の右派サイドの主張やネットの議論によると、アジアの人たちは第二次世界大戦で「日本が戦ってくれたことを感謝して」いるとのことだが、確かにそういう論調は東南アジアの国々の一部にはないとはいえないものの、一般の人々の反応の大勢は、日本の東南アジアへの侵略は極めてネガティブなイメージしかない。
また、東南アジアの国定歴史教科書や歴史博物館のような「正史」を語る場では、日本がプロパガンダとして東南アジアの国々に押し付けた「大東亜共栄圏」の意味を、極めて正確に語っている。
曰く、「日本が東南アジアにやってきたとき最初は植民地支配から脱出できると歓迎したが、欧州の支配より日本のほうがより苛烈であり、たくさんの人たちが殺された。大東亜共栄圏と日本は言っていたが、その実態は日本人による支配であり、私たちは天皇の崇拝を押し付けられた。」
旭日旗はこの象徴として機能していることは、この大東亜共栄圏の記憶を語る場で、必ずと言っていいほど旭日旗の意匠が使われていることからはっきりしてとわかる。
海軍の軍艦旗や陸軍の連隊旗として戦場で使われてきた旭日旗は、そもそも当時のアジアの人たちはそんなに見ることはなかった。では、これがなぜそこまで日本の侵略の象徴となっているかといえば、この大東亜共栄圏のプロパガンダで日本自ら、大々的にシンボルとしてきたからだ。
私は、マレーシアとその隣国でもともとマレーシア連邦の一部だったシンガポールで、旭日旗のイメージとスポーツの場での使用について、現地の人たちにインタビューやアンケートを多数行ってきた。
そこでの結果は、過半数の人たちが否定的な見解を記している。なぜ、スポーツの場でそのようなものを使うのか意味が分からないし、日本国旗で十分ではないかというものだ。
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2018年07月01日)
https://hbol.jp/169476
日本代表を応援するのに旭日旗を出すべきではないこれだけの理由
ワールドカップ・ロシア大会、日本代表が8年ぶりにグループリーグを突破して、次戦は世界ランキング3位のベルギーとのベスト8進出をかけた戦いとなる。前戦での西野朗監督の時間切れを狙った消極的な采配は、日本国内のみならず世界でも賛否両論となっているようだが、その是非はともかくとして、まだ到達がしたことがない高みを目指した次の一戦には日本中の期待が集まることだろう。
そのようなサッカー日本代表の戦いに水を差しかねない出来事があった。先に行われたグループリーグ2戦目、日本-セネガル戦で、日本のサポーターから旭日旗が出されたということが韓国メディアによって指摘されている。韓国メディアはそのときの映像をあわせて紹介しているため、これは事実と思われる。
旭日旗の問題について、熱心なサッカーファンならすでに承知していることが知られていないようだ。この状況を放置しておくと一般の人たちに誤解を生みかねないだけではなく、今の日本代表の善戦とグループリーグ突破の快挙に泥を塗るようなことが起こりかねない。
よってここに旭日旗の問題について改めて注意喚起をしておくとともに、この旭日旗が禁止された背景について筆者なりの見解を記すことにする。
◆ 旭日旗はすでにサッカースタジアムの公式戦では禁止されている
旭日旗の使用はすでに、FIFA(国際サッカー連盟)の下部組織で、日本サッカー協会が所属するAFC(アジアサッカー連盟)が「discriminatory symbol relating to national origin and political opinion(国家の起源や政治的意見を表明する差別的なシンボル)」ということで禁止している。
これは昨年に行われたアジアチャンピオンズリーグの川崎フロンターレ(日本)と水原三星(韓国)の試合で、川崎のサポーターが試合中の旭日旗をあげ、両チームのサポーター間で大きなトラブルとなった時に下された裁定である。
この時、川崎フロンターレは、1年間の執行猶予付きでホームゲーム1試合の無観客試合と罰金1万5000ドルの処分も受けている。
川崎フロンターレはAFCにこの判断を不服として上訴しているが、この申し立ては棄却された。この裁定はここで確定となったのである。
これまで日本サッカー協会は、国際試合での旭日旗を応援のために使うことについて玉虫色の判断をしており、中国や韓国といった国々との試合でのみ、これをスタジアムにおいて没収するなどの処置をしてきていた。
だが、この裁定により、大きなトラブルを巻き起こしかねない旭日旗の使用は、日本サッカー協会の上位組織であるAFCが公式に処分の対象として公に禁止されることになった。
これについて、一部のメディアやネット上の議論の中には「旭日旗についてクレームをつけているのは韓国だけ」というような論調があるのだが、これは大きな間違いである。
AFCはマレーシアのクアラルンプールに本部を置き、歴代マレーシアをはじめとするムスリム諸国や東南アジアの国々の影響力が強い。AFCはもともとこうしたイギリスやオランダというサッカー大国の植民地であった国々から組織されたものだ。
これらの国々に比べれば東アジアの日本や韓国といった国はサッカー後進国ともいえる。ちなみに、アジアで最初にワールドカップに出場したのは、蘭領東インド、つまり戦前の独立前のインドネシアだ。これらの国々と中近東のイスラム国が強い影響力をもっているのが、AFCである。
なお、この旭日旗の裁定を下したAFCの倫理委員会には韓国の理事は入っていない。委員長はシンガポール人、副委員長はイエメンと中国の委員である。
◆ AFCに強い影響力をもつ東南アジアと戦争の記憶
そのAFCに強い影響力をもつ東南アジアの国々は第二次世界大戦の記憶をいまだ忘れることなく語り続けている。
日本の右派サイドの主張やネットの議論によると、アジアの人たちは第二次世界大戦で「日本が戦ってくれたことを感謝して」いるとのことだが、確かにそういう論調は東南アジアの国々の一部にはないとはいえないものの、一般の人々の反応の大勢は、日本の東南アジアへの侵略は極めてネガティブなイメージしかない。
また、東南アジアの国定歴史教科書や歴史博物館のような「正史」を語る場では、日本がプロパガンダとして東南アジアの国々に押し付けた「大東亜共栄圏」の意味を、極めて正確に語っている。
曰く、「日本が東南アジアにやってきたとき最初は植民地支配から脱出できると歓迎したが、欧州の支配より日本のほうがより苛烈であり、たくさんの人たちが殺された。大東亜共栄圏と日本は言っていたが、その実態は日本人による支配であり、私たちは天皇の崇拝を押し付けられた。」
旭日旗はこの象徴として機能していることは、この大東亜共栄圏の記憶を語る場で、必ずと言っていいほど旭日旗の意匠が使われていることからはっきりしてとわかる。
海軍の軍艦旗や陸軍の連隊旗として戦場で使われてきた旭日旗は、そもそも当時のアジアの人たちはそんなに見ることはなかった。では、これがなぜそこまで日本の侵略の象徴となっているかといえば、この大東亜共栄圏のプロパガンダで日本自ら、大々的にシンボルとしてきたからだ。
私は、マレーシアとその隣国でもともとマレーシア連邦の一部だったシンガポールで、旭日旗のイメージとスポーツの場での使用について、現地の人たちにインタビューやアンケートを多数行ってきた。
そこでの結果は、過半数の人たちが否定的な見解を記している。なぜ、スポーツの場でそのようなものを使うのか意味が分からないし、日本国旗で十分ではないかというものだ。
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2018年07月01日)
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