※ 次回第9回弁論:12月3日(水)15時~ 東京地裁103号法廷
▼ 脱原発でテントの正当性
裁判を大衆的に維持しよう
台風19号が関東を通過した翌日、10月14日10時30分から11時40分頃まで、東京地裁103号室でテント裁判第8回口頭弁論が開かれた。
10月9日以来川内原発再稼働のための「住民説明会」が開催されており、また前々日12日に第2テントが襲撃されるという緊迫した情勢下での口頭弁論であった。
法廷に入ると経産省側が左の原告席、テントひろば側が右の被告席、被告席には、河合弘之、大口昭彦、宇都宮健児などの弁護士、正清太一、渕上太郎の両被告が並び、冒頭、若干の手続き確認と書面の字旬修正などが行われた。
そのあとで被告=テント側から原告の主張に対して反論がなされた。
▼ 敷地の本来的用途を証明
大口弁護士は、テント設置場所の「本来的用途」について反論。
①原告側作成の図をもとに、テント設置の場所はその図において「ポケットパーク」とされており、原告が主張するような経産省の業務に支障をきたすような場所ではなく、それゆえ経産省業務の妨害とはなっておらず、およそ損害などあり得ないこと、
②しかも原告は仮処分申請の際はその図を書証として提出したのに本件訴訟では「秘匿している」、と経産省の卑劣な法廷対勘を暴露し、裁判官に準備書面の写真、図を示して、はっきり見て判断するよう訴えた。
大口弁護士の声は力強く、経産省側の不当な主張を覆す論旨は明快で、原告側を圧倒し傍聴者を勇気づけるものであった。
▼ 経産省の原発政策を批判
次いで河合弁護士が登場、原告である経産省の責任を列挙した。
第一に福島第一原発事故は、最悪の場合首都圏住民2000~3000万人の避難という事態を招く、まさに国家存亡・消滅の危機であったこと、その責任はあげて原発を推進してきた経産省・科学技術庁にある。その責任を自覚させるため、また批判・抗議の意思表示としてテントはあること。
第二に、福島第一原発の事故の結果、15万人以上が避難生活を続け、故郷喪失、コミュニティの崩壊、内部被曝・後遺症による子どもの未来への不安におびえている、そのような現実に対する経産省の責任、さらに「除染」と一言っても所詮は「移染」に過ぎず、山積する放射性物質の中間貯蔵地を大熊町、双葉町に建設し、二つの町を「放射能のゴミ捨て場」にしようとする経産省の責任を厳しく断罪した。そして、再度の原発事故のリスクは大きく経産省の施策は「ロシアン・ルーレット」のようなものと批判した。
それに続き、大飯原発裁判判決など最近の裁判・司法の動きを「司法への大きな望み」と評価し、裁判への期待を表明して、裁判所に重大な責務の自覚を促した。
河合弁護士の主張は説得力に富み、聞く者に改めてテントの意義と正当性を確信させた。
▼ 撤去要求はスラップ訴訟
再び大口弁護士が弁論。テントは憲法に保障される正当防衛ともいうべき権利の主張で、主権者としての地位回復の行為であり、設置場所についても、国土交通省によっても当該地が「広場」という公共の空き地で通行人が休憩したりする場所とされていることを指摘し、原告の「経産省の土地」との主張に反論した。
さらに10月12日の右翼による第2テント襲撃にふれながら、主権者としての正当な行為に多額の損害賠償請求で桐喝・脅迫するこの訴訟は、「スラップ訴訟」にほかならないと経産省を弾劾した。
▼ 「カネより命」「撤退しない」
最後に被告とされた正清、渕上両氏の陳述。
正清さんは、責任ある施策の不在、とりわけ福島への支援対策、被災者への救援もなされず、事故の原因さえ究明されていないにもかかわらず、鹿児島川内原発などの再稼働を推進していると経産省を批判した。国民の70~80%、女性の90%が脱原発を支持している今こそ、経済成長のための原発推進をやめるべきである、まさに、「カネより命」だと、脱原発を説き、テントの正当性を訴えた。
渕上さんはテントは政治的主張の場であり、いくら「出て行け」と言われても、「脱原発はやめない、撤退はしない」と力強く決意を表明した。
▼ 傍聴を終えて
その点で、事務局や関係者にさらなる負担を求めることになり心苦しいが、「本日の弁論の要点」、「法廷案内」といった簡単な裁判レジュメ的なものがあると、ありがたい。
裁判にとって傍聴者の多寡は裁判官に与える影響とともに、裁判闘争の持続のうえでも極めて重要で、ぜひ検討をお願いしたい。
ともあれ、弁護団、被告の説得力ある、力のこもった弁論・陳述は原告を圧倒し、傍聴者に強い共感を呼び起こした。
とはいえ、法理・条理を兼ね備え、当事者の動機の真摯性、行為の正当性が明らかであっても行政の意をくむ司法の壁は厚いのが行政訴訟の実態である。
いわんや敵は政・財・官複合の原子力村の中枢である経産省という巨大権力、闘いの圧殺、テント撤去の策動は今後とも陰に陽に続くであろう。
今回の弁論を傍聴して、原発推進の是非という国策をめぐる闘いでもあるこの訴訟、負けられないとの思いを改めて強くした。
川内原発など再稼働を巡る厳しい攻防の中で、テントの存在、そしてテント裁判の重要性はさらに大きくなっている。この裁判を長期、大衆的に維持していくことはそれ自体が闘いである。
次回も傍聴に来なければ、との思いで裁判所を後にした。
次回弁論は12月3日(水)15時~16時、大結集で裁判所を包囲しよう。
『週刊新社会』(2014/11/25)
▼ 脱原発でテントの正当性
裁判を大衆的に維持しよう
テントひろば支援 山城 峻
台風19号が関東を通過した翌日、10月14日10時30分から11時40分頃まで、東京地裁103号室でテント裁判第8回口頭弁論が開かれた。
10月9日以来川内原発再稼働のための「住民説明会」が開催されており、また前々日12日に第2テントが襲撃されるという緊迫した情勢下での口頭弁論であった。
法廷に入ると経産省側が左の原告席、テントひろば側が右の被告席、被告席には、河合弘之、大口昭彦、宇都宮健児などの弁護士、正清太一、渕上太郎の両被告が並び、冒頭、若干の手続き確認と書面の字旬修正などが行われた。
そのあとで被告=テント側から原告の主張に対して反論がなされた。
▼ 敷地の本来的用途を証明
大口弁護士は、テント設置場所の「本来的用途」について反論。
①原告側作成の図をもとに、テント設置の場所はその図において「ポケットパーク」とされており、原告が主張するような経産省の業務に支障をきたすような場所ではなく、それゆえ経産省業務の妨害とはなっておらず、およそ損害などあり得ないこと、
②しかも原告は仮処分申請の際はその図を書証として提出したのに本件訴訟では「秘匿している」、と経産省の卑劣な法廷対勘を暴露し、裁判官に準備書面の写真、図を示して、はっきり見て判断するよう訴えた。
大口弁護士の声は力強く、経産省側の不当な主張を覆す論旨は明快で、原告側を圧倒し傍聴者を勇気づけるものであった。
▼ 経産省の原発政策を批判
次いで河合弁護士が登場、原告である経産省の責任を列挙した。
第一に福島第一原発事故は、最悪の場合首都圏住民2000~3000万人の避難という事態を招く、まさに国家存亡・消滅の危機であったこと、その責任はあげて原発を推進してきた経産省・科学技術庁にある。その責任を自覚させるため、また批判・抗議の意思表示としてテントはあること。
第二に、福島第一原発の事故の結果、15万人以上が避難生活を続け、故郷喪失、コミュニティの崩壊、内部被曝・後遺症による子どもの未来への不安におびえている、そのような現実に対する経産省の責任、さらに「除染」と一言っても所詮は「移染」に過ぎず、山積する放射性物質の中間貯蔵地を大熊町、双葉町に建設し、二つの町を「放射能のゴミ捨て場」にしようとする経産省の責任を厳しく断罪した。そして、再度の原発事故のリスクは大きく経産省の施策は「ロシアン・ルーレット」のようなものと批判した。
それに続き、大飯原発裁判判決など最近の裁判・司法の動きを「司法への大きな望み」と評価し、裁判への期待を表明して、裁判所に重大な責務の自覚を促した。
河合弁護士の主張は説得力に富み、聞く者に改めてテントの意義と正当性を確信させた。
▼ 撤去要求はスラップ訴訟
再び大口弁護士が弁論。テントは憲法に保障される正当防衛ともいうべき権利の主張で、主権者としての地位回復の行為であり、設置場所についても、国土交通省によっても当該地が「広場」という公共の空き地で通行人が休憩したりする場所とされていることを指摘し、原告の「経産省の土地」との主張に反論した。
さらに10月12日の右翼による第2テント襲撃にふれながら、主権者としての正当な行為に多額の損害賠償請求で桐喝・脅迫するこの訴訟は、「スラップ訴訟」にほかならないと経産省を弾劾した。
▼ 「カネより命」「撤退しない」
最後に被告とされた正清、渕上両氏の陳述。
正清さんは、責任ある施策の不在、とりわけ福島への支援対策、被災者への救援もなされず、事故の原因さえ究明されていないにもかかわらず、鹿児島川内原発などの再稼働を推進していると経産省を批判した。国民の70~80%、女性の90%が脱原発を支持している今こそ、経済成長のための原発推進をやめるべきである、まさに、「カネより命」だと、脱原発を説き、テントの正当性を訴えた。
渕上さんはテントは政治的主張の場であり、いくら「出て行け」と言われても、「脱原発はやめない、撤退はしない」と力強く決意を表明した。
▼ 傍聴を終えて
その点で、事務局や関係者にさらなる負担を求めることになり心苦しいが、「本日の弁論の要点」、「法廷案内」といった簡単な裁判レジュメ的なものがあると、ありがたい。
裁判にとって傍聴者の多寡は裁判官に与える影響とともに、裁判闘争の持続のうえでも極めて重要で、ぜひ検討をお願いしたい。
ともあれ、弁護団、被告の説得力ある、力のこもった弁論・陳述は原告を圧倒し、傍聴者に強い共感を呼び起こした。
とはいえ、法理・条理を兼ね備え、当事者の動機の真摯性、行為の正当性が明らかであっても行政の意をくむ司法の壁は厚いのが行政訴訟の実態である。
いわんや敵は政・財・官複合の原子力村の中枢である経産省という巨大権力、闘いの圧殺、テント撤去の策動は今後とも陰に陽に続くであろう。
今回の弁論を傍聴して、原発推進の是非という国策をめぐる闘いでもあるこの訴訟、負けられないとの思いを改めて強くした。
川内原発など再稼働を巡る厳しい攻防の中で、テントの存在、そしてテント裁判の重要性はさらに大きくなっている。この裁判を長期、大衆的に維持していくことはそれ自体が闘いである。
次回も傍聴に来なければ、との思いで裁判所を後にした。
次回弁論は12月3日(水)15時~16時、大結集で裁判所を包囲しよう。
『週刊新社会』(2014/11/25)
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