▼ 食品のセシウム規制強化 4月から新基準導入
~飲料水は20分の1に
食品中の放射性物質を規制する新たな許容基準が四月から導入される。新基準では、福島第一原発事故直後に定められた暫定規制値「食品一キログラム当たりセシウム五〇〇ベクレル」が野菜や魚介類など一般食品で五分の一の同一〇〇ベクレルに下がる。ただ、全ての食品を検査するのは難しく、厚生労働省などが公表している検査結果を参考にするしかなさそうだ。 (稲熊美樹)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/8b/1a11ebf6051bd9f19abb3f02750e95b4.jpg)
今月十日、名古屋市の市衛生研究所に、市中央卸売市場で試料として採取した静岡県産の大根一本が届いた。
研究員は葉を落として水洗いした後、皮付きのまま一センチ角に刻み、一部をさらに細かくカット。「水分が多い食品は刻み過ぎても正確な測定ができず、加減が難しい」。みじん切りになった大根は検査用の容器に詰められ、地下の一室にある「ゲルマニウム半導体検出器」まで運ばれた。
セシウムなどのガンマ線を測るには、一検体の検査だけで、下処理も含めて一時間半から三時間ほどかかる。この日調べた大根は、検出下限値の五ベクレルを下回る「不検出」という結果だった。
同市では、東北や関東地方の一都六県から入荷した食品の一部を抜き打ちで検査している。検査体制強化に向け、二台目の検出器の導入が決まっているものの、「検出器を増やしても手間がかかるのは同じ。全ての食品を検査するのは無理」(市の担当者)という。
◇
厚労省の薬事・食品衛生審議会の部会が新基準案をまとめたのは昨年十二月二十二日。食品を、飲料水▽乳児用食品▽牛乳▽一般食品-の四つに分類。放射性物質のうち、半減期が長いセシウム134と137の合算で、それぞれ一〇、五〇、五〇、一〇〇ベクレルと設定した。加工食品は、原材料だけでなく、製造・加工された状態で、それぞれ一般食品の基準を適用する。
新基準決定の過程では、年間のセシウムの被ばくを年間一ミリシーベルトに抑えようと、まず各年代、男女ごとに限度値を算出。この値を基に食品から摂取するセシウムの許容線量を導き出し、それぞれの基準を設定した。「流通している全ての食品が汚染されているわけではなく、輸入食品も多く含まれる」として、一般食品の汚染割合は50%と仮定して計算している。
暫定規制値で二〇〇ベクレルとされていた飲料水は新基準では一〇ベクレルと厳格化。全ての人が相当量を摂取し、代替がきかない点、世界保健機関(WHO)が一〇ベクレルを指標としていることが理由だ。
昨年、乾燥した状態で高濃度のセシウム検出が相次いだ製茶は新基準では、茶葉に湯を注いで茶を浸出した状態で、飲料水と同じ一〇ベクレルが適用される。
「小児の期間は、感受性が成人より高い可能性」があるとして、粉ミルクなどの乳児用食品は五〇ベクレルに。牛乳も、子どもが飲む量が多いことを考慮し、同じ五〇ベクレルになった。
◇
厚労省や水産庁が全国の自治体による検査結果を集約してインターネット上で公開している情報を見ると、産地によっては、一部の回遊魚や海底に生息する魚介類などから、最近も一〇〇ベクレルを超えるセシウムが検出されていることが分かる。ワカサギやアイナメ、カレイなどで五〇〇ベクレルを超えた例もあるが、流通はしていない。水産庁のホームページ(HP)のほか、「原発事故による農畜産物等への影響」で検索し、厚労省のページを選ぶと、最新の検査結果を見られる。
http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/
食品の安全問題に取り組んできた「食政策センタービジョン21」の安田節子代表は新基準について「恒久的な基準としては一〇〇ベクレルは甘すぎる」と指摘。「もっと厳しい基準にしても食べ物が足りなくなることはない。より厳しくすることで、流通している食品は全て安心して食べられるようにするべきだ」と指摘している。
『東京新聞』(2012年1月16日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012011602000058.html
~飲料水は20分の1に
食品中の放射性物質を規制する新たな許容基準が四月から導入される。新基準では、福島第一原発事故直後に定められた暫定規制値「食品一キログラム当たりセシウム五〇〇ベクレル」が野菜や魚介類など一般食品で五分の一の同一〇〇ベクレルに下がる。ただ、全ての食品を検査するのは難しく、厚生労働省などが公表している検査結果を参考にするしかなさそうだ。 (稲熊美樹)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/8b/1a11ebf6051bd9f19abb3f02750e95b4.jpg)
今月十日、名古屋市の市衛生研究所に、市中央卸売市場で試料として採取した静岡県産の大根一本が届いた。
研究員は葉を落として水洗いした後、皮付きのまま一センチ角に刻み、一部をさらに細かくカット。「水分が多い食品は刻み過ぎても正確な測定ができず、加減が難しい」。みじん切りになった大根は検査用の容器に詰められ、地下の一室にある「ゲルマニウム半導体検出器」まで運ばれた。
セシウムなどのガンマ線を測るには、一検体の検査だけで、下処理も含めて一時間半から三時間ほどかかる。この日調べた大根は、検出下限値の五ベクレルを下回る「不検出」という結果だった。
同市では、東北や関東地方の一都六県から入荷した食品の一部を抜き打ちで検査している。検査体制強化に向け、二台目の検出器の導入が決まっているものの、「検出器を増やしても手間がかかるのは同じ。全ての食品を検査するのは無理」(市の担当者)という。
◇
厚労省の薬事・食品衛生審議会の部会が新基準案をまとめたのは昨年十二月二十二日。食品を、飲料水▽乳児用食品▽牛乳▽一般食品-の四つに分類。放射性物質のうち、半減期が長いセシウム134と137の合算で、それぞれ一〇、五〇、五〇、一〇〇ベクレルと設定した。加工食品は、原材料だけでなく、製造・加工された状態で、それぞれ一般食品の基準を適用する。
新基準決定の過程では、年間のセシウムの被ばくを年間一ミリシーベルトに抑えようと、まず各年代、男女ごとに限度値を算出。この値を基に食品から摂取するセシウムの許容線量を導き出し、それぞれの基準を設定した。「流通している全ての食品が汚染されているわけではなく、輸入食品も多く含まれる」として、一般食品の汚染割合は50%と仮定して計算している。
暫定規制値で二〇〇ベクレルとされていた飲料水は新基準では一〇ベクレルと厳格化。全ての人が相当量を摂取し、代替がきかない点、世界保健機関(WHO)が一〇ベクレルを指標としていることが理由だ。
昨年、乾燥した状態で高濃度のセシウム検出が相次いだ製茶は新基準では、茶葉に湯を注いで茶を浸出した状態で、飲料水と同じ一〇ベクレルが適用される。
「小児の期間は、感受性が成人より高い可能性」があるとして、粉ミルクなどの乳児用食品は五〇ベクレルに。牛乳も、子どもが飲む量が多いことを考慮し、同じ五〇ベクレルになった。
◇
厚労省や水産庁が全国の自治体による検査結果を集約してインターネット上で公開している情報を見ると、産地によっては、一部の回遊魚や海底に生息する魚介類などから、最近も一〇〇ベクレルを超えるセシウムが検出されていることが分かる。ワカサギやアイナメ、カレイなどで五〇〇ベクレルを超えた例もあるが、流通はしていない。水産庁のホームページ(HP)のほか、「原発事故による農畜産物等への影響」で検索し、厚労省のページを選ぶと、最新の検査結果を見られる。
http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/
食品の安全問題に取り組んできた「食政策センタービジョン21」の安田節子代表は新基準について「恒久的な基準としては一〇〇ベクレルは甘すぎる」と指摘。「もっと厳しい基準にしても食べ物が足りなくなることはない。より厳しくすることで、流通している食品は全て安心して食べられるようにするべきだ」と指摘している。
『東京新聞』(2012年1月16日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012011602000058.html
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