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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

人権デー・JWCHRアクション(3)

2014年12月08日 | 日の丸・君が代関連ニュース
法務大臣 上川陽子 殿 
外務大臣 岸田文雄 殿 
文部科学大臣 下村博文 殿
◎ 国連勧告パラグラフ22を真摯に受けとめ、
東京都の教育現場に国際標準の「思想・良心・宗教の自由」
の保障を求める要請書
2014年12月4日
東京・教育の自由裁判をすすめる会

 1,「日の丸・君が代」強制を巡る懲戒処分は延べ463人、その数は今も年々増え続けている。
 東京都では2003年「10・23通達」以来延べ463人の教職員が、学校行事における国歌斉唱時の不起立等を理由に懲戒処分を科され、今も絶えることがない。2012年最高裁は減給以上の累積加重処分には取り消しを命じたが、都教委はその後も良心的不服従教員に思想改造を迫る「服務事故再発防止研修」を量的にも質的にも強化するなどして、「日の丸・君が代」強制を改めていない。
 直接強制できない児童・生徒に対して愛国心を刷り込むために、教員に起立斉唱を強制し続ける真の意図が浮かび上がってきている。
 2,国連は「思想・良心・宗教の自由」に対するいかなる制約も控えるよう勧告した。
 当会はこの事態を、規約18条違反として自由権規約委員会に報告した。それに対し委員会は、『リストオブイシュー』パラグラフ17<別添資料1>でこの問題を取り上げ、日本政府に意見を求めた。政府回答は「許容される人権制約」であるとの主旨であったが<別添資料2>、それに対する委員会の最終見解が、今回の『総括所見』のパラグラフ22である<別添資料3>。
 そこには、規約18条3項<別添資料4>の「厳しい条件」を満たさない限り「思想・良心・宗教の自由」に対する「如何なる制約をも課すことを控えるよう強く要請する」と書かれている。すなわち、日本政府回答は、国際基準を満たしていないと判定されたのである。
 3,最高裁判決は、「思想・良心・宗教の自由」の制約に関する国際基準を満たしていない。
 起立斉唱行為が「思想及び良心の自由」の問題であることは、最高裁判決文<別添資料5>の中に「その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い」と認定されていることから明らかである。一方人権制約条件は、「秩序の確保」や「式典の円滑な進行」とされているが、これらがおよそ規約18条3項の「厳しい条件」のいずれにも該当しないことは一見明白である。すなわち勧告に照らすなら、この最高裁判決は国際規約に違反する可能性が高いものと言わなければならない。
 これまで司法の場において、規約18条3項の「厳しい条件」に照らして審査されたことはなかった。それどころかわが国司法には、「公共の福祉」「思想・良心・宗教の自由」を制約できるかのような通念が存在することは、下級審において「公共の福祉」がしばしば用いられてきたことから明らかである。<別添資料6>
 4,今回の勧告を受けて、国際社会で尊敬され信頼される日本であるために、以下のことを即時実行するよう求める。
 (1)「君が代」強制など「思想・良心・宗教の自由」に関わる裁判においては、人権の国際標準である規約18条3項の「厳しい条件」に照らして厳格な審査を必ず行うこと。
 (2)規約18条3項の条件を満たさない「思想・良心・宗教の自由」に対する制約に当たる通達・命令の見直しも必要であり、『リストオブイシュー』パラグラフ17で取り上げられた教職員に対する「制裁」の元となっている東京都の『10・23通達』及び「職務命令」「懲戒処分」「再発防止研修」は直ちに撤回・中止の措置を執ること。
 (3)「国際社会で尊敬され、信頼される日本人として成長していくために」は、法的拘束力のある自由権規約を遵守すると同時に、国際機関からの勧告は確実に履行することが何よりも大切であることは言を俟たない。国際人権を普及推進すべき責任官庁である貴省には、国際理解教育及び人権教育の模範を率先して示していただきたい。
以上


 ※ 別添資料 (東京・教育の自由裁判をすすめる会)
 【資料1】 国連人権委員会第6回日本審査『リストオブイシュー』(CCPR/C/JPN/Q/6)パラグラフ17(2013年11月)
 17. 委員会の前回最終勧告(CCPR/C/JPN/CO/5、パラ10)に照らし、「公共の福祉」の概念を定義し、かつ「公共の福祉」を理由に、宗教、意見及び表現の自由に科される制約が本規約の下で許容されている制約を超えることがない旨明記する立法をとることを予定しているか否か、明らかにしていただきたい。教員及び学校職員が、学校行事の際、国歌の起立斉唱を拒んだために、減給、停職及び解雇を含む制裁の対象となってきたという報告に関してコメントを願いたい
 【資料2】 『リストオブイシュー』17に対する『日本政府回答』パラグラフ187~190(2014年2月)
 187. 入学式・卒業式において、教職員が国歌を起立斉唱するよう職務命令を発することは、教育委員会及び校長の権限上認められるものである。
 188. そして、最高裁の判例は、公立高等学校の校長が教職員に対し卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた旨の職務命令の適法性が問題となった事案において、当該職務命令の目的及び内容並びにこれによってもたらされる制約の態様等を総合的に衡量すれば、当該職務命令については、当該教職員の思想及び良心の自由についての間接的な制約を許容しうる程度の必要性及び合理性が認められると判示している(2011年6月6日最高裁第一小法廷判決)。なお、「公共の福祉」は、本件における思想及び良心の自由の間接的な制約とはされていない。
 189. 一般に、教育公務員は、住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従わなければならない立場にある。
 190. そして、教職員の職務命令違反について、懲戒権者は、懲戒処分をすべきかどうか、また懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており、懲戒権じゃにおいて、その権限と責任に基づき適切に判断するものと考えている。もっとも最高裁の判例によれば、教職員に対する懲戒処分は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、態様、結果、影響等の他、当該教職員の上記行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情に照らし、その判断が社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合には、違法となるものと解されている(2012年1月16日最高裁第一小法廷判決)。
 【資料3】 国連人権委員会第6回日本審査『総括所見』(CCPR/C/JPN/CO/6)パラグラフ22(2014年7月)
 「公共の福祉」を理由とした基本的自由の制約
 22 本委員会は、「公共の福祉」の概念は、曖昧で、制限がなく、規約の下で許容されている制約を超える制約を許容するかもしれないという懸念を改めて表明する。(2条、18条、19条)
   委員会は、以前の最終所見(CCPR/C/JPN/CO/5、パラ10)を想起し、規約18条・19条のそれぞれ第3項に規定された厳しい条件を満たさない限り、締約国が、思想・良心・宗教の自由表現の自由の権利に対していかなる制約を課すことをも差し控えるように強く要請する。
 【資料4】 『自由権規約』 第18条(思想・良心・宗教の自由)(1966年採択)
 1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
 2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
 3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。
 4 この規約の締結国は、父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。
 【資料5】 『君が代不起立再雇用拒否裁判最高裁判決』(2011/6/6)から
 ○ 上記国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。
 ○ 本件各職務命令は,一般的,客観的な見地からは式典における慣例上の儀礼的な所作とされる行為を求めるものであり,それが結果として上記の要素との関係においてその歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで上告人らの思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があるものということができる。他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。
 【資料6】 『ピアノ裁判下級審判決文』から
 ○ 「思想・良心の自由も、公共の福祉の見地から、公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けると解するのが相当である。」(『ピアノ裁判東京地裁判決』(2003/12/3))
 ○ 「思想・良心の自由の制約は、公共の福祉にかなうものとしてやむを得ないものであって、公教育に携わる公務員として受忍せざるを得ず、このような受忍を強いられたからといって憲法19条に違反するとは言えない。」 (『 同 東京高裁判決』(2004/7/7))
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