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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

進む集団的自衛権の実体化(上)

2014年09月09日 | こども危機
 ◆ 軍事取り入れる教育行政
   学校に浸透する自衛隊の軍事訓練

永井栄俊(元都立高校教員)

 集団的自衛権の容認という憲法解釈を閣議で変更するという暴挙が行われた7月1日の翌日、全国の高校生に自衛隊募集のパンフレットが送られた。昨年の田無工業高校の防災に名を借りた自衛隊の介入以来、自衛隊の学校への介入が強まり、戦争のできる国にするための国民教育に拍車がかかっている。東京の高校での具体的な現れを明らかにする。
 ◆ 全国の高校3年生に『自衛隊パンフ』送付
 2014年7月1日は集団的自衛権が閣議決定された日である。その翌日に全国の高校3年生の自宅に、封書で自衛隊募集のパンフレットが送られた。地方によって多少版は異なるが、戦車や戦艦の写真があふれ、表紙をめくれば、「君の決意が国の力に!」の大見出しが踊っている。
 どの頁も戦場や重武器と自衛隊員の姿が輝かしく映し出されている。ところが、その戦場の写真の横に「平和のために」と書かれている。「戦争」と「平和」が共存する矛盾したパンフレットがこれなのだ。
 高校生の就職内定率が低下してきたここ10年以上も前から毎年行われていることだという。しかし、今年は特別であった。集団的自衛権の閣議決定に時期を合わせて発送を行っているのである。
 もっとも、東京新聞(7月3日)によれば自衛隊の政府担当者は閣議決定に合わせたことを否定していると述べているようだ。しかしいずれにしても、集団的自衛権の実態化の一つと見てよいであろう。それが高校生に向けられたことが重大だ。
 それにしても、全国の高校3年生の住所をどのように知り得たのかが問題だ。防衛省に問い合わせると住民基本台帳から人海作戦で写し取ったのだという。しかし、有力な情報筋では、やはり行政の一部が協力している事実が報告されている。自衛隊の教育への異常なまでの接近が顕著なのである。これは、自衛隊からの一方的なラブコールだけではない。教育行政の意向により、教育の中に積極的に凧事を取り入れる傾向が現場で進行しているのである。
 昨年、東京都立田無工業高校の朝霞駐屯地での防災訓練は、本紙でも取り上げ批判をしたが、その裾野は全国でドンドン広がっている。教育現場で軍事教練が行われた時代を彷彿させるものがある。
 ◆ 職場体験授業として小中学生も格闘訓練
 陸上自衛隊の駐屯地は全国に156カ所ある。その駐屯地で小・中学生の職場体験が頻繁に行われているのだ。名目は「総合的学習」の一環としての「職場体験」授業である。
 2000年より全国の小中学校で実施されてきており、この年だけで全国で450校にものぼった(朝日新聞2001年11月17日)。現在では累計で1万件を超えていると推定される。
 その実態は、自衛隊の各地方本部などがインターネットHPで公開している。戦車や戦闘機に乗り、銃を持つなどの体験だけではない。隊員と格闘の練習をしてゴム製のナイフで殺害する体験まで行っているのである。
 今年6月に練馬駐屯地に引率した中学校教師によれば、室内でNBC(核・生物・化学)兵器対応防毒マスクの装着や行軍を実施し、自衛隊のパンフレットを渡されたということだった。都立高校の自衛隊と連携した防災訓練が問題になっているが、すでに小中学生の段階からの軍事教育が密かに進んでいるのである。
 ◆ 教育現場に侵透す・る自衛隊の戦闘訓練としての銃剣道
 昨年(2013年)9月、第68回国民体育大会が東京で開催された。その中で、銃剣道が種目として採用され、少年男子の部で都立北豊島高校と都立光丘高校が出場した。両校のHPを見ても銃剣道部は存在しない。つまり、銃剣道普及のために政治的に生徒達は参加させられたのだ。
 この銃剣道を教育現場に普及させることが目的意識化されている。この銃剣道というのは、銃剣の形をした木銃で突くことで勝敗を決する。突く場所は決まっており、喉と胸(心臓)なのである。つまり極めて実践的な殺しの競技なのである。一般感覚からすれば「武道」と言えるか否かが疑問だ。
 もともと、旧日本軍において訓練されてきたもので、第二次大戦後、自衛隊の中で引き継がれてきている。自衛隊の中での競技の様子を映したビデオ見ると、集団が両軍に分かれ木銃を抱えてぶつかる。つまり、軍隊と軍隊との戦闘競技なのである。
 これを武道化しようというので、1998年に全日本銃剣道連盟を設立した。しかし、競技人口のほとんどが自衛隊員であり、戦闘イメージを薄め教育現場に入り込むことが課題化されている。教育の中への軍事教育化の現れであるといってよいだろう。
『週刊新社会』(2014/8/19)

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