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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

判決文に書かれた労使癒着の実態

2010年08月13日 | ノンジャンル
 ◆ 新運転団結権裁判判決文の事実認定について
全国一般東京東部労組 副委員長 石川源嗣

 今年3月、東京地裁においてきわめて注目すべき判決が言い渡された。
 それは、新産別運転者労働組合(以下、新運転という)東京地本の篠崎庄平委員長を相手取った新運転組合員8名を原告とする団結権侵害に対する損害賠償請求訴訟の判決であった。
 判決は、団結権侵害の事実を認め、被告の篠崎委員長に損害賠償の支払いを命ずる画期的なものであった
 しかし私が判決文で目を見張ったのはその結論よりむしろその裁判所による判決の根拠となる「事実認定」であった。
 今の日本の労働組合で、このような事実がありうるのか、ありえてよいのか、労働組合執行部がこの様なことを本当にするのか、という驚きであった。
 主な裁判所による「事実認定」を列記してみよう。
 (1)新運転の篠崎委員長(以下、被告という)らは新運転東京地本の重要な財産であった組合会館を執行委員会、組合大会にはかることなく勝手に、供給先企業と実質執行部一部幹部を構成員とする組織「事故防」(組合員は構成員ではない)に登記を移転し、その後売却した。
 (2)組合会館の売買契約直前の会合で、事故防の使用者側理事から新運転東京地本の反対派執行委員に対する恫喝が行われた。
 (3)労働協約の改定で、供給先企業と組合員との関係が「雇用」から「使用」に変更され、組合員は日々雇用労働者になったため、長期雇用であっても、有給休暇、退職金の適用を受けられなくなり、正社員と格差が生じた。事故防は企業に「組合員は企業内の社会保険に加入する必要はない」と説明し、組合員は年金未加入者が多い。
 (4)事故防は、就労先使用者から組合員の就労1日につき200円の拠出を受けて運営されているが、「他人の就業に介入して利益を得てはならない」という労基法6条に違反する可能性がある。
 (5)事故防は、使用者からの拠出金によって新運転東京地本役員などの給料、ガソリン代、保険料などを負担している。これは労働組合である新運転東京地本が事故防を介して使用者から経費の援助を受けているものであり、労働組合法2条2項でいう使用者から経済的援助をうけるものを「労働組合」でないということに該当する。
 (6)事故防は、組合員の福利厚生費を減少させる一方、接待交際費など業者団体の利益のための費用の支出を継続させている。新事故防の資金の大半が組合員の福利厚生でなく、人件費等に使用されている。
 (7)組合専従を辞めても報酬を得られるように定款を変更した。

 (8)労働者の健康診断労安法で使用者に義務づけられているのも関わらず、事故防が使用者の肩代わりをして行っている。
 (9)労働協約では作業中の事故、傷害は使用者が処理すべきと定められているのに、事故防新定款では、組合員に事故費負担の責任があることを前提にした規定に変えた上で、事故防が「組合員にかわって」使用者に対して「事故費」を支払うようにした。
 (10)組合員の通勤途上、作業中の労災事故について、労働協約では使用者が法定外補償を支払うことになっているのに、事故防新定款では、使用者に代わって事故防が法定外補償を支払う、使用者は法定外補償を支払わない運用がされている。また労災保険給付がされない3日目までの休業補償についても事故防が支払うものとしている。
 (11)1981年の新運転東京地本の執行委員会において、横浜の運輸会社で行われた運輸一般のストライキに対して、スト破り対策動員費83万円余が事故防会計から支出されたと報告されている。そのほか、事故防会計からの拠出金により、同様の違法な争議介入を繰り返していたことが被告の書いた文童に記載されている。
 (12)新運転東京地本が全額出資する派遣会社「タブレット」を通じて、同労組の役員は争議介入をするまでに至っている
 以上が私なりに行った判決の要約である。
 これらがもし本当に事実だとすればビックリぎょうてん、由々しき事態というほかない。
 判決文を読む限り、新運転東京地本の篠碕委員長ら一部幹部が事故防という組織を使って、企業経営者と結託共謀し、違法行為の積み重ねと私物化によって、組合員に被害を押しつけ、新運転一部幹部と経営者だけが莫大な不当利益を得ているとの認識を得るのではないだろうか。
 労働組合幹部の腐敗堕落、労使癒着である。
 労働組合の世界もすべてきれいごとでいかないことは百も承知である。組合によって考え方の違いもある。しかしものには限度というものがあるのではないか。
 少なくとも、組合会館の売却が本当に執行委員会、組合大会の承認なしに強行されたのだとしたら許されないだろう。
 また他組合が命がけでストライキを決行しているときに「スト破り」はまずいだろう。
 事実だとしたらこんなことがまかり通ってよいわけがない。

 だから控勝審に向けた今回判決文に対する佐藤昭夫教授の「意見書」では、「労働組合を名乗る団体が使用者と癒着して、組合員を言わば食いものにし、組合員の活動に障害を与える行為が明るみに出されたのは、おそらく本件が初めてであろう」との認識が出てくるのである。
 しかし本当にそうなのか。被告側の篠崎委員長ら新運転東京地本執行部として言いたいことはあるだろう、主張、弁明については十分聞く必要があると思う。
 やはり新運転東京地本の執行部、とりわけ当事者である篠崎庄平委員長、太田武二書記長この判決に正面から答えるべきである
 言うまでもなく裁判の判決がすべて正しいわけではない。「不当判決」もある。「事実誤認」もある。私たちも何度も苦い経験をした。しかし問題がここまで顕在化して社会問題化している以上、当事者は答える義務があるだろう。高裁に異議申し立てをしているからその結果を見てくださいではすまないと思う。
 私たちがほかの労働組合の問題について言及するのは例外中の例外である。
 しかし今回の判決は、「労働組合とは何か」、「労働者の利益とは何か、それはいかに守られるべきか」を労働組合に関わるすべての人に問いかける問題だと思う。問われているのは労働組合としての最低限の行動規範である。
 このような事態が隠然とウラで進行しつつあるにもかかわらず、表面だっては知らぬ顔では労働組合運動の真の再生はかちとれないのではないか。あえて言及する所以である。
 (2010/7/5)

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