★ 東京・業績評価裁判 教員勝利一周年集会
東京都世田谷区立の三浦健康学園(神奈川県三浦市。05年3月閉園)に在職中の04年度、都教育委員会の業績評価制度で、不当に下位評価を付けられ、不利益を受けた大嶽昇一教諭が、東京地裁で得た勝訴判決1周年の5月13日、支援者たちが世田谷区内で集会を開き、高裁勝利を誓い合った。世田谷区と都側が東京高裁(梅津和宏裁判長)に控訴した争点を、一審原告の高橋拓也弁護士の講演を中心にまとめる。
★ 控訴に法的根拠なし
この裁判は、当時の校長・教頭の付けたC評価により、昇給延伸や年3回の研修受講強制等、不利益を受けた大嶽さんが、区教委への苦情相談却下後、05年8月、都人事委員会(都人委)に昇給延伸の取り消しを請求したが、都人委が2年半放置の末、棄却判定した裁量判断の違法性が争点の一つ。
この都人委の裁量判断の違法性を裁判所が審査する基準を、都側は「都人委の裁量判断が、全く事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え、又はその裁量権を濫用されたと認められる場合に限り、違法と判断すべき」と主張している。「行政のやることは何でも正しい」かのような主張は、おかしい。
また、事実関係でも、「児童を大声で叱責した」等、大嶽さんへのC評価の根拠事実なるものが「日付時刻未記載」だった件で、都教委も世田谷区も「職務実績記録は標準的な様式、備忘録的な役割として用いる記録に過ぎない」などと、弁解している。
しかし都教委の『職務実績記録の記入方法』の文書自身が「校長・教頭は相互で記入内容を確認し、相互で再確認した上で、押印する」と明記。メルクマールとなる公文書だ。
また、「危険な行動をしたり他の児童をからかう言動をしたりする児童」に、教員が大きな声で叱ることは、どの小学校でも時々はある。この「大声の叱責」に関し大嶽さん側は「世田谷区がマイナスの評価根拠はないかと渉猟した上で、職務実績記録の最下段に日付時刻未記載のまま、後付けした可能性大」と指摘。
02~04年度、健康学園に在園していた元児童たちは、「当時、大嶽先生に大声で怒られたという記憶はありません」などと陳述書に明記している。なお元児童たちの陳述書は、「別の教諭が児童たちを頻繁に大声で怒鳴っていた」旨記述。大嶽さん側は「世田谷区は明らかな虚偽主張を展開したことを猛省すべき」と警告している。
さらに世田谷区側は、大嶽さんがーコマ45分の理科の授業で毎時約15分、「園庭での植物観察授業等」を行っていたと、難癖を付けている。
しかし当時の教頭は、①当該授業内容、②園庭の観察授業内容、③前記①②の関連性の有無、の3つとも全く把握していない上に、日時すら不明なのだ。また、元児童たちもこぞって「事実でない」と陳述している。
『週刊新社会』(2011/5/31)
永野厚男(教育ライター)
東京都世田谷区立の三浦健康学園(神奈川県三浦市。05年3月閉園)に在職中の04年度、都教育委員会の業績評価制度で、不当に下位評価を付けられ、不利益を受けた大嶽昇一教諭が、東京地裁で得た勝訴判決1周年の5月13日、支援者たちが世田谷区内で集会を開き、高裁勝利を誓い合った。世田谷区と都側が東京高裁(梅津和宏裁判長)に控訴した争点を、一審原告の高橋拓也弁護士の講演を中心にまとめる。
★ 控訴に法的根拠なし
この裁判は、当時の校長・教頭の付けたC評価により、昇給延伸や年3回の研修受講強制等、不利益を受けた大嶽さんが、区教委への苦情相談却下後、05年8月、都人事委員会(都人委)に昇給延伸の取り消しを請求したが、都人委が2年半放置の末、棄却判定した裁量判断の違法性が争点の一つ。
この都人委の裁量判断の違法性を裁判所が審査する基準を、都側は「都人委の裁量判断が、全く事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え、又はその裁量権を濫用されたと認められる場合に限り、違法と判断すべき」と主張している。「行政のやることは何でも正しい」かのような主張は、おかしい。
また、事実関係でも、「児童を大声で叱責した」等、大嶽さんへのC評価の根拠事実なるものが「日付時刻未記載」だった件で、都教委も世田谷区も「職務実績記録は標準的な様式、備忘録的な役割として用いる記録に過ぎない」などと、弁解している。
しかし都教委の『職務実績記録の記入方法』の文書自身が「校長・教頭は相互で記入内容を確認し、相互で再確認した上で、押印する」と明記。メルクマールとなる公文書だ。
また、「危険な行動をしたり他の児童をからかう言動をしたりする児童」に、教員が大きな声で叱ることは、どの小学校でも時々はある。この「大声の叱責」に関し大嶽さん側は「世田谷区がマイナスの評価根拠はないかと渉猟した上で、職務実績記録の最下段に日付時刻未記載のまま、後付けした可能性大」と指摘。
02~04年度、健康学園に在園していた元児童たちは、「当時、大嶽先生に大声で怒られたという記憶はありません」などと陳述書に明記している。なお元児童たちの陳述書は、「別の教諭が児童たちを頻繁に大声で怒鳴っていた」旨記述。大嶽さん側は「世田谷区は明らかな虚偽主張を展開したことを猛省すべき」と警告している。
さらに世田谷区側は、大嶽さんがーコマ45分の理科の授業で毎時約15分、「園庭での植物観察授業等」を行っていたと、難癖を付けている。
しかし当時の教頭は、①当該授業内容、②園庭の観察授業内容、③前記①②の関連性の有無、の3つとも全く把握していない上に、日時すら不明なのだ。また、元児童たちもこぞって「事実でない」と陳述している。
『週刊新社会』(2011/5/31)
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