2022年4月28日
大阪市長 松井一郎 様大阪市教育長 多田勝哉 様
◎ 大阪市の教育・教育行政に関わる要望書
子どもに「教育への権利」を!大阪教育研究会
この10年間、大阪市の教育行政においては、市長―教育委員会―区長―校長といった上意下達体制が強化され、教育委員会の行政からの独立性・主体性が失われています。
そうした下で、教育現場において、全国学力テストはもとより、チャレンジテスト、経年テストの実施等競争主義的な「『学力』テスト体制」・「学力」至上体制が強化され、授業も学テ対策が中心とならざるを得ず、子どもたちの成績如何で教員も人事評価されるといった事態になっています。
学校選択制、学校統廃合がこの体制に拍車をかけています。
コロナ禍とも重なった、「学力」至上、学テ中心の学校生活が、大阪市の全国一の不登校率と無縁だと言い切れるでしょうか。
今回「不登校特例校」なるものが考えられていますが、それは不登校の児童・生徒を固定し、他の児童・生徒と一層分断し切り捨てることになりませんか。
いずれにしてもこの10年間、大阪市の教育行政は、家庭生活・経済生活も含めてさまざまに立場の弱い子どもたちに寄り添った施策を進めてきたとは思えません。
そこで私たちは、大阪市の教育行政に対し、幾つかの問題について要望を行います。緊急を要するものも含まれます。
これらの要望に真摯に向き合い、応えていただくことを要望します。また要望に対する見解等もお聞かせ下さい。
【要望項目】
1 子どもたちと教職員に対するコロナ感染防止のための対策を徹底すること
①陽性者が一人でも出れば、当該学校の児童・生徒、教職員全員のPCR検査を行い、陽性者及び濃厚接触者拡大の有無を科学的に調査すること。
②休校等の措置を行った学校について、授業代替や学習支援等のための予算配分を含む措置を各学校からの要望調査に基づいて適切かつ誠実に実施すること。
③当面の間、陽性者の確認がない場合にも、児童・生徒及び教職員全員のPCR検査を定期的に実施すること。
④抗原検査キットを児童・生徒全員分用意し、各家庭でのセルフチェックを可とすること。
⑤各教室への空気清浄機やサーキュレーターの設置など感染対策の内容について現場からの意見聴取を徹底し、要求に対応する措置を行うこと。
2 コロナ禍の下でも安心して学校生活がおくれる環境の整備を促進すること
①少人数学級の枠組みを大阪市独自でさらに拡大すること。教育の「ICT化」「1人1台PC」「EdTech連携」等の予算ではなく、少人数学級の拡充と教職員、SC、SSW、学習指導員、学習補助員を確保するための予算措置を最優先とすること。
②11学級以下の小学校を機械的に統廃合の対象とする「学校活性化条例」及び「大阪市立小学校 学校配置の適正化の推進のための指針」の再見直しを行うこと。現在進めている学校統廃合計画をいったん白紙に戻すこと。そのために必要となる教職員の増員を行うこと。
③生活保護基準と連動した就学援助基準の切り下げを見直し、就学援助対象者の拡充をはかること。また、コロナ禍による一時的な収入減少家庭に対する就学支援策を具体化すること。受給可能世帯には積極的なアウトリーチを行い申請の促進をはかること。
④困窮する家庭へ経済援助、食料援助などの大阪市独自の緊急支援策の拡充を行うこと。
⑤コロナ禍を機に明らかになった経済困窮家庭の実情と課題を調査し、困窮家庭への教育費の完全無償化を大阪市独自で先行実施するとともに、すべての子どもへの完全無償化に向けて政府への働きかけを行うこと。大阪市として独自の予算措置が可能な施策を先行して実施すること。
3 「学力テスト」結果等「数値」「評価」競争から学校を解放すること
①学校パンフレットへの進学実績の掲載、全国学テの学校別成績正答率の公表をやめること。これら指標により学校間競争を煽る「学校選択制」を中止すること。
②小学校経年テスト、大阪市統一テスト、大阪市版チャレンジテストPlus、中3大阪市英語力テストを中止すること。
③小学校すくすくテスト、中学校チャレンジテストへの参加を止めること。
④大阪市統一テスト結果の個人成績に紐付けを止めること。
⑤児童・生徒のテスト結果等「数値目標」と「結果」に依拠し、学校間及び教職員間の競争を煽る大阪市の「人事考課制度」を廃止すること。
⑥教委及び校長の恣意的な判断で、教員を現場から外して「自己退職」を強制する「ステップアップ研修」を廃止すること。
⑦全校への「学校安心ルール」策定の義務付けを中止すること。
4 市長と教育行政が勝手に策定した新「教育振興基本計画」をいったん棚上げし、児童・生徒と教職員、保護者など学校の当事者の意見を聴き、教育政策全般の見直しを行うこと。
①本年4月より開始した「教育政策の更なる充実を図るための教職員からの意見・提案の募集」制度により、新「教育振興基本計画」に対する学校・教職員からの意見を募集すること。その意見は市民に広く公開し、市民からの意見集約も行うこと。
②夜間中学校2校の「特例校」への統合計画を中止し、2校の廃校計画を撤回すること。
③不登校の児童・生徒を固定し、他の児童・生徒を分断する「不登校特例校」の設置を性急に行わないこと。
④「総合的読解力育成(リベラルアーツ教育)の時間」の一方的で性急な導入計画を撤回すること。
⑤子どもの学習履歴や生活履歴の収集等子どもの個人情報のビッグデータ化や個人データに基づく「個別最適な学び」の推進を中断し、①の制度を活用し、教職員及び市民の意見を聴くこと。
『子どもに「教育への権利」を!大阪教育研究会のブログ』(2022年4月28日)
http://eduosk.cocolog-nifty.com/blog/2022/04/post-c17c06.html
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