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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

入隊者減少で「ビヤ樽型」年齢構成になった自衛隊に焦り

2018年10月15日 | 平和憲法
 ◆ 戦争リアル-イラク派兵隊員29名自殺と9条改憲 (『百万人署名運動全国通信』から)
   井筒高雄さん(VFPジャパン共同代表 元陸自レンジャー隊員)

 第二次安倍内閣発足後から隊員数が減り続けてビヤ樽型になった自衛隊の年齢構成

 安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記する理由として「違憲論争に終止符を打ち、国民を守るために命をかける自衛官が誇りをもって任務を全うできる環境をつくるためだ」と言っています。では、改憲は、自衛隊員とその家族に何をもたらすのか?元自衛官の井筒高雄さんにお聞きしました。(文責:事務局)
 (略)

 ◆ 自衛隊のイラク派遣の現実
 憲法に自衛隊が明記されたら、隊員は自動的に戦場に送られてしまうのではないかと心配しているご家族の方も多いと思います。
 これからはPKO派遣部隊ですらコマンドとして戦争をするわけですから、自分の生死も現地に行ってみないとわからない世界なので、やはり9条改憲には賛成できない人も多いのではないでしょうか。
 しかし、自衛隊とともに生きているといえる北海道、東北、九州地方等の出身者たちは反対しにくいでしょう。
 92年のカンボジア以降、自衛隊の歴史は基本的に海外派遣の歴史で、のべ約38000名の隊員が海外に派遣されています。
 海外に行っていないのは95~96年の1年間と去年の5月に南スーダンから帰ってきて今日までの期間だけです。
 イラク派遣は超過酷だったことが日報からもわかります。
 非戦闘地域とされたサマワには復興支援活動のために派遣されたのは日本の自衛隊だけで、狙われ、車両移動のルートに時限爆弾を仕掛けられたり、車両が攻撃され破壊されたりした。あるいはベースキャンプの領域に82ミリ迫撃弾が撃ち込まれたりした。まさに戦場でした。
 安倍さんは自衛隊員の死をも国威発揚に利用することまで考えて、イラクへは桶20棺を持っていき、武道館で国葬をする準備もしていました。
 また殉職者には最高の待遇をしようとして、戦死者には賞恤金(しょうじゅっきん)9000万円と首相から特別報奨金1000万円を出すとしました。南スーダン派遣では6000~8000万円です。
 戦闘服を着て、国旗と国連旗をつけて、小銃1丁を持たされて紛争現場に降り立つ自衛隊は「敵」からの攻撃にすぐさらされるわけです。
 俺たち自衛官に人権はあるのか、犬死しろというのか、俺たちは道具かということになります。
 自衛隊員も家族も、その死に意味があるのか、大義があるのかと思うでしょう。
 任務を果たした自衛隊員は帰って来ても戦場のことは話すなと言われ、しかも戦場と帰国後の周囲の状況との乖離(かいり)があまりにも大きく、イラク派遣者には29人もの自殺者がありました。
 他の国の軍隊だと戦地から本国に帰国させるまで1ケ月くらいのインターバルをおいて、カウンセリングをして、緊張状態からの解放をはかるのがコンバットベテランズ(戦場の兵士)たちのケアーの仕方ですが、日本にはそれがありません。
 イラク戦争の場合、鬱(うつ)とか心の病(PTSD)を抱えた人は3000人もいたというデータが「海外派遣自衛官家族を考える会」から出ています。体調不良の人も1000人以上にもなったということです。
 ◆ 青年を入隊させるための改憲
 自衛隊の隊員数は、第二次安倍内閣発足後から減り続けています
 防衛大学校の任官拒否者の数も一つのバロメーターですが増加傾向にあります
 みんな死ぬのは嫌だというのが偽らざる気持ですから、戦争する大義があるかないかという理屈は抜きにして、死を突きつけられる自衛隊員の人数が増える保証はありません。
 その証拠に、沖縄県では今年初めて自衛隊単独の就職説明会が実施できず、自衛隊と海上保安庁と警察等で合同説明会の実施となりました。こうしたケースは22都道府県あります。
 沖縄でのそうした事態は、南西諸島への陸上自衛隊配備も進められ、安保法制による実戦任務が現実となって、自衛隊はやめておこうという心境が反映されているのでしょう。
 貧困と格差社会の中で、むしろ貧困の固定化をつくりだし、その層から自衛隊員を充足させる狙いも考えられます。
 自衛隊の高卒隊員は、多くは年間収入が270万円以下の世帯の者たちですし、有効求人倍率が低い地方から圧倒的に輩出されています。
 つまり、そういう地方とか中流階級からこぼれる世帯をつくっておく政策がとられているのです。アメリカの経済的徴兵制の日本版という言い方をする人もいます。
 自衛隊の年齢分布はビヤ樽型です。
 全体では定員約25万人、実数22万人で充足率約90%です。しかし、戦場でコマンドとして動く現場の隊員、18歳~25歳くらいの隊員たちは6000人ほどで、充足率は70%を切っています。
 9条に自衛隊を書き込んでしまえば徴兵制を敷くことも可能です。それは戦力となる層を増やす手立てになります。
 戦場で落とす命の値段は1億円でしたが、これからは戦死を前提にした海外派遣になるので、死亡補償額は下げていかなければならないのです。
 そのために、若い任期制隊員(非正規)を大幅採用する。その人たちが実戦に行って戦死しても、戦力ダウンになることはありません。また勤続年数も短く、死亡補償額のコストダウンにもなるのです。
 自衛隊は10月から、これまで18歳から26歳までであった隊員募集を32歳まで引き上げました。さらに退職の延長も決まりましたので、高卒組は給与も退職金も上がるとの期待を持つかもしれません。
 けれど勤続35年で給与は上がらない仕組なのです。ここでもコストダウンを狙っています。
 さらに、これまで入隊時には両親や家族の同意書が必要だったのですが、それをなくす検討が進んでいます
 まさに戦場のリアルを想定した徴兵の仕組みが着々と進んでいるのです。
 憲法9条への自衛隊明記とは、自衛隊にとどまらず、国民をどうやって戦争の担い手に利用するのかに尽きます。
 まさに安保法制とは戦争法であり改憲と一体なのです。
 安倍さんの9条改憲と「緊急事態条項」(瞬時に戦争状態にできる)の新設に反対し、臨時国会に自民党案を提出させない、発議させないことだと思います。自衛隊の実態をどのように自分事と捉えることができるのか、が問われています。
『百万人署名運動全国通信 第251号』(2018年10月1日)

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