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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

黒川氏と新聞記者の癒着問題を契機に、官庁にあるキシャクラブを廃止してメディアセンターへ

2020年05月29日 | 平和憲法
  =たんぽぽ舎です。【TMM:No3939】「メディア改革」連載第32回=
 ◆ 官僚と記者との間にある深刻な癒着構造
   「仲良くしても、一線を守る」という詭弁

浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)

 1.「週刊文春」5月28日号がスクープした黒川弘務東京高検検事長の賭けマージャン事件は、5月22日、黒川氏の訓告処分と辞職に発展した。常習賭博が疑われている中、処分が軽すぎる上、退職金6000万円に民衆は憤っている。
 安倍晋三・自公野合政権はこれで幕引きを狙っているが、違法な黒川氏の定年延長を可能にした「閣議決定」と、その定年延長を後付けて正当化しようとした検察庁改悪法案(継続審議)への批判は続いており、与党内から厳しい声も上がり、安倍政権は崩壊寸前と言える。
 黒川氏のマージャン仲間が産経新聞(2人)と朝日新聞(1人)の記者3人だったことも衝撃を与えた。このマージャン事件の背景には、日本にしかないキシャクラブ(海外ではkisha kurabu)制度と、政治家・官僚・財界人から得た官製発表やリーク情報を垂れ流す悪癖がある。
 朝日、産経だけでなく、日本の報道界(労使双方)と御用学者は、事件を黒川氏と「一線を超えた」記者たちの特異な不祥事として、官僚と記者との間にある深刻な癒着構造をひた隠しにしている。
 元プロ野球選手の長島一茂氏は22日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、「今このコロナ禍で多くのお店、会社がつぶれている。7000万円の退職金をこの時期では皆アレルギーを示す」と述べた後、「黒川氏は新聞記者の方たちと麻雀をしていた。新聞記者は情報力という権力を持った人たちで、黒川検事長は司法という権力を持った人。ここが日常的にこんなに癒着していたというのはびっくりだ」と語った。
 2.私はフェイスブックで発信しているが、一般市民からは、どうして検察ナンバー2の検察官と朝日新聞・産経新聞(この取り合わせがまた奇怪)の記者がこんな愚かなことをするのかわからないという投稿が多い。
 しかし、日本の高級官僚(多くが東京大学出身)など政財界の幹部とキシャクラブメディアのエリート記者(早慶・旧帝大出身者が多数を占める)は、ウイークデーも含めしばしば一緒に飲食、ゴルフ、マージャン、山登り、釣りなどを楽しんでいるのが現実だ。
 全国の役所にある主要なキシャクラブにはマージャン台、花札、トランプなどの遊具があり、日常的に役人も交えて賭け事が行われている。
 黒川氏は5年前から東京の裁判所ビル2階にある司法記者クラブ(裁判と検察をカバー)の受注記者だった3人と知り合った。3年前からは3人と月に2、3回の頻度で、賭けマージャンを楽しんでいた。黒川氏は毎回、新聞社が借り上げた黒塗りハイヤーで目黒の自宅に帰っている。
 ジャーナリスト教育をほとんど受けたこともない22、23歳の新人記者が、警察記者クラブで「口を割らない捜査官と親密な関係を結び、他社より早く情報を取る」ように訓練される。
 御用聞きに等しいので、セクハラも起きる。数年続く事件取材で覚えた取材姿勢が、政治、経済の取材でも続くのだ。
 記者3人は、キシャクラブメディアの記者たちの氷山の一角であり、今回たまたまばれてしまったのだ。クラブ詰めの記者たちは、警察官、検事、政治家らの自宅を訪れる夜討ち朝駆け取材を課されている。
 これで、約95%の記者はダメになる。

 3.善良な一般市民は「大手の新聞記者がそこまでするか」と半信半疑だが、私の書いていることが本当だと証明してくれたのが、元読売新聞記者の大谷昭宏氏だ。大谷氏は22日付の東京新聞特報部の記事(中山岳、大野孝志両記者の署名)で次のように喋っている。
 「私もよく刑事と酒を飲んだりマージャンしたりした。地方の検事ともよく遊んだ」「とりあえず家に刑事の妻がいれば、話して仲良くなってもらう。そのうち家に上げてもらえれば大したもの」「時には刑事の子どもに甲子園球場のプロ野球巨人―阪神戦のチケットを渡したことがあった」「一緒に飲みに行き、おごったりおごられたりする」
 大谷氏は私が30数年前に『犯罪報道と警察』(三一新書)で引用した読売新聞の冊子「サツ回り入門」と同じことを平然としゃべり、紙面に載った。こういうコメントを載せる大新聞の社員は感覚がマヒしている。
 大谷氏は東京新聞の記事で、公務員に金品を渡し、情報を取ったと自白している。大谷氏と飲んだり遊んだりした警察官と検事も犯罪者(贈収賄、地方公務員法違反)だ。
 ジャーナリストの倫理違反に時効はない。

 この記事には、実名主義賛成の「メディア用心棒学者」(山口正紀氏の造語)の田島泰彦元上智大学教授の「権力者と一見仲良くしても、大事なことは書きますよというなら許されないわけではない」「接触するのが全部ダメとは言わない」という談話も載っている。権力者と仲良くすることが報道倫理に反していることが分かっていない。
 東京新聞の第二社会面には、共同通信の後輩、青木理氏「情報源に食い込む努力は必要だが、守らねばならない一線はある」という談話も載っている。
 4.記事を書いた2人は、ゴルフ、釣り、山歩きなどで、取材先と関係を作った記者がネタを取るという実態があると書き、「だから大谷氏は相手に食い込む努力は否定しない。一方で癒着を避けるため、一線を引くよう求める」と強調すると書いている。
 「一線」の定義は曖昧で、誰が引くのかも不明だ。
 大谷氏は22日の西日本新聞の記事にも「私も記者時代、刑事と酒を飲み、マージャンもした。口の軽い刑事などいない。何度も通ううちに少しずつ信頼関係を築ける人も現れる」「似ているようでも、『懐に入ること』と癒着は全く違う。分岐点は、相手の組織を批判する原稿を書けるかどうかだ」などという談話を寄せている。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/610270/
 5.この記事では服部孝章・立教大名誉教授(メディア論)もマージャン取材を批判した後、<取材源と人間関係を深めて情報を取ることは重要で、時には違法すれすれの取材手法も行われているのが実情だ>などとコメントしている。その「実情」が問題なのだ。
 また、安倍首相の私設広報官の田崎史郎氏は21日放送のTBS「ひるおび!」と22日のフジテレビ「とくダネ」で、「マージャンもするし、酒も飲み、一緒に遊びもする。とにかく付き合って、仲良くなって、いざというときに話が聞ける状況にしておく」と話している。
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 6.安倍首相は4月17日の記者会見で、畠山理仁氏の質問で、「キシャクラブ」問題について「皆さんで議論を」と、内閣記者会と報道界へ呼び掛けたが。
 この貴重な発言がなかったことになっている。ネットのハーバービジネスオンラインに記事を書いた。
https://hbol.jp/219327
 黒川氏と新聞記者の癒着問題を契機に、「官庁にあるキシャクラブを廃止し、メディアセンター(※)を」という大運動が始まることを期待している。
 (※)メディアセンター、広報センター、プレスセンター(ルーム)は、海外の官庁などにある取材拠点で、取材を希望するすべての登録済のジャーナリストが使用でき、記者会見にも参加できます。
 米ホワイトハウス、韓国青瓦台などにあります。
 田中康夫知事の時代に「脱・記者クラブ宣言」をした長野県庁に広報センター(旧・表現道場)が今もあります。
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