自治体非正規公務労働の場合 なくそう!官製ワーキングプア(上)
◆ 年収80万円の臨時教員
ワーキングプアの激増や労働者の使い捨てが大きな問題になっている今、官製ワーキングプアをなくそうと、ナショナルセンターを超えて公務・公共職場で働く労働者が4月26日、東京・駿河台の総評会館で反貧困集会を開いた。そこで報告された実態と、公務職場の課題を整理してみる。
*見えない存在が可視化
一般にイメージされる公務員と同一視され、見えにくい存在であった自治体に働く臨時・非常勤等職員(非正規公務労働者と呼ぶ)の姿が浮かび上がった。
非正規公務労働者の労働条件は、日々雇用・細切れ雇用、雇い止め、昇給・一時金なし、交通費支給もなし、社会保険未加入もあり、自立した生活を営むにはあまりにも困難な身分・雇用条件と低賃金である。
*生活保護を受給して働く臨時教員
市費採用の*臨時教員は年齢制限で常勤職に就けず、1日5時間勤務、時給1,210円で働いている。
学校の休み期間中は仕事が切られ、年収は80万円。夏休みは学童保育で働いたが生活は成り立たず、週末にスーパーでアルバイトも。
しかし身体がもたず教職に支障が生じると感じ、周囲からは「恥ずかしい」「甘えている」と言われ悩んだ末に生活保護を受給した。これでなんとか生活ができて教師としてやっている。
どこの自治体にも非正規公務労働者で「生活保護を受けている人は、1人や2人はいる」というから驚く。
また、「採用試験で不合格にしておいて、臨時採用し、本採用者と同じ仕事をさせる」という「定数内臨任教諭」が県立高校等に762名もいる事例(埼玉高教組)もある。
*「バイトさん」と呼ばれる臨時職員東京都の臨時職員
Aさんは、2カ月または1カ月単位で勤務先を渡り歩き「一般事務補助」の仕事をしている。
1日8時間勤務・日給7190円で、有給休暇はなく、交通費の支給もない。
6カ月が経過すると次のーカ月は強制的に休職させられる。「6月をこえない期間で臨時的任用」による。
社会保険は未加入(非適用)で(「社会保険逃れ」の指摘も)、「せめて雇用保険には入りたい」と切実に訴える。
こうした細切れ雇用を繰り返し同じ職場で10年以上働いている人もいる。しかし臨時職員に、職場の忘年会などのお誘いの声はかからない。「バイトさん、バイトさん」と呼ばれ続け、同じ職場で働く正規職員には「まるで見えない人間である」と疎外感を募らせる。
*同等な仕事で大きな賃金格差
フリー保育士(越谷市)は、正規保育士の権利行使の代替要員として配置され、8時30分から17時の勤務時間で働く。
正規職と同等の専門性が要求され、同等の責任ある仕事を行っている。初任給は正規職員と大差ないが、勤続21年以上になると約半分の賃金水準に。
初任給から21年間の昇給額は、正規職17万1790円に対してフリー保育士は1万9600円でしかない。
交通費(通勤手当相当額)以外の手当はない。ひとり暮らしで自立できる生計費以下の賃金である。
フリー保育士たちは労働組合を組織し、市職労と連携して均等待遇の実現へ粘り強く運動している。
自治労の調査では、非正規公務労働者の賃金は、6割以上が時給・日給制で、「800円未満」・「900円未満」が5割以上を占める。
1日6時間で年収100万円台前半、フルタイムでも200万円以下である。
月給制の場合でも15万円前後が中心で、時給型より少し高いが一時金がなければ年収200万円には届かない。
佐倉市の公立保育園では、臨時保育士約80人(正規職員は60人)のうち10人はクラスを担任している。臨時保育士は6カ月+6カ月=1年の雇用期間が経過するとーカ月空けてまた6カ月の採用に。空白の一カ月は社会保険が適用されず、手続き上の煩雑さもあり無保険状態になることも。
こうした非正規公務労働者がすでに職員全体数の5割を超えている自治体もある。
いまや非正規公務労働者を抜きにしては公務・公共サービスの実施は成り立たなくなっているのである。
*非常勤職「雇用年限」解雇(雇い止め)
新潟県では非常勤職員を雇用継続しない制度改正(5年の「雇い止め」)が強行され、県職労は継続雇用を闘ってきたが法制度の壁を突破できず、すでにこれまで約1000人が職場を去った。この3月末も173人が雇い止めに。当局に「特例」を設けさせ試験を受けたが採用は20人だけ。
東京都では70種約500人の専務的非常勤職員が1年更新65歳定年制で任用されていたが、20年度から「改正雇用対策法」により定年制を廃止する一方、同時に原則更新は4回までとされた。
ちなみに東京都には特別職非常勤職で1万5000人を超える非正規公務労働者が働いている。
『週刊新社会』(2009/5/19)
◆ 年収80万円の臨時教員
全国自治体労働運動研究会 星野芳久
ワーキングプアの激増や労働者の使い捨てが大きな問題になっている今、官製ワーキングプアをなくそうと、ナショナルセンターを超えて公務・公共職場で働く労働者が4月26日、東京・駿河台の総評会館で反貧困集会を開いた。そこで報告された実態と、公務職場の課題を整理してみる。
*見えない存在が可視化
一般にイメージされる公務員と同一視され、見えにくい存在であった自治体に働く臨時・非常勤等職員(非正規公務労働者と呼ぶ)の姿が浮かび上がった。
非正規公務労働者の労働条件は、日々雇用・細切れ雇用、雇い止め、昇給・一時金なし、交通費支給もなし、社会保険未加入もあり、自立した生活を営むにはあまりにも困難な身分・雇用条件と低賃金である。
*生活保護を受給して働く臨時教員
市費採用の*臨時教員は年齢制限で常勤職に就けず、1日5時間勤務、時給1,210円で働いている。
学校の休み期間中は仕事が切られ、年収は80万円。夏休みは学童保育で働いたが生活は成り立たず、週末にスーパーでアルバイトも。
しかし身体がもたず教職に支障が生じると感じ、周囲からは「恥ずかしい」「甘えている」と言われ悩んだ末に生活保護を受給した。これでなんとか生活ができて教師としてやっている。
どこの自治体にも非正規公務労働者で「生活保護を受けている人は、1人や2人はいる」というから驚く。
また、「採用試験で不合格にしておいて、臨時採用し、本採用者と同じ仕事をさせる」という「定数内臨任教諭」が県立高校等に762名もいる事例(埼玉高教組)もある。
*「バイトさん」と呼ばれる臨時職員東京都の臨時職員
Aさんは、2カ月または1カ月単位で勤務先を渡り歩き「一般事務補助」の仕事をしている。
1日8時間勤務・日給7190円で、有給休暇はなく、交通費の支給もない。
6カ月が経過すると次のーカ月は強制的に休職させられる。「6月をこえない期間で臨時的任用」による。
社会保険は未加入(非適用)で(「社会保険逃れ」の指摘も)、「せめて雇用保険には入りたい」と切実に訴える。
こうした細切れ雇用を繰り返し同じ職場で10年以上働いている人もいる。しかし臨時職員に、職場の忘年会などのお誘いの声はかからない。「バイトさん、バイトさん」と呼ばれ続け、同じ職場で働く正規職員には「まるで見えない人間である」と疎外感を募らせる。
*同等な仕事で大きな賃金格差
フリー保育士(越谷市)は、正規保育士の権利行使の代替要員として配置され、8時30分から17時の勤務時間で働く。
正規職と同等の専門性が要求され、同等の責任ある仕事を行っている。初任給は正規職員と大差ないが、勤続21年以上になると約半分の賃金水準に。
初任給から21年間の昇給額は、正規職17万1790円に対してフリー保育士は1万9600円でしかない。
交通費(通勤手当相当額)以外の手当はない。ひとり暮らしで自立できる生計費以下の賃金である。
フリー保育士たちは労働組合を組織し、市職労と連携して均等待遇の実現へ粘り強く運動している。
自治労の調査では、非正規公務労働者の賃金は、6割以上が時給・日給制で、「800円未満」・「900円未満」が5割以上を占める。
1日6時間で年収100万円台前半、フルタイムでも200万円以下である。
月給制の場合でも15万円前後が中心で、時給型より少し高いが一時金がなければ年収200万円には届かない。
佐倉市の公立保育園では、臨時保育士約80人(正規職員は60人)のうち10人はクラスを担任している。臨時保育士は6カ月+6カ月=1年の雇用期間が経過するとーカ月空けてまた6カ月の採用に。空白の一カ月は社会保険が適用されず、手続き上の煩雑さもあり無保険状態になることも。
こうした非正規公務労働者がすでに職員全体数の5割を超えている自治体もある。
いまや非正規公務労働者を抜きにしては公務・公共サービスの実施は成り立たなくなっているのである。
*非常勤職「雇用年限」解雇(雇い止め)
新潟県では非常勤職員を雇用継続しない制度改正(5年の「雇い止め」)が強行され、県職労は継続雇用を闘ってきたが法制度の壁を突破できず、すでにこれまで約1000人が職場を去った。この3月末も173人が雇い止めに。当局に「特例」を設けさせ試験を受けたが採用は20人だけ。
東京都では70種約500人の専務的非常勤職員が1年更新65歳定年制で任用されていたが、20年度から「改正雇用対策法」により定年制を廃止する一方、同時に原則更新は4回までとされた。
ちなみに東京都には特別職非常勤職で1万5000人を超える非正規公務労働者が働いている。
『週刊新社会』(2009/5/19)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます