《労働情報【連載 沖縄】》
★ 8月5日県民大会へ向け
オリンピツクにかき消されないよう
● 第二自民党か
ようやく垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備が許しがたいものとして、本土にも知られるようになった。アメリカが全計画を発表し、配備のほぼ全容が分かるとともに、沖縄だけでなく、反対の火の手が全国各地に上がった。
沖縄地元では、さらにオスプレイの配備を阻止し、普天間の閉鎖を実現させるべく、仲井眞弘多知事・佐喜眞淳宜野湾市長、県議団ほかが東京行動で、政府与党、関係省庁に要請を重ねたうえ、8月5日、宜野湾市海浜公園での県民大会開催を決定した。(本土でも呼応した集会が開かれる)。
県議会主導で、大会の事務局長を野党・県民ネットの玉城義和氏が、事務局次長を与党・自民の照屋守之氏が務める案が決まった。共同代表に県議会議長、そして、翁長雄志那覇市長が快諾した。
1995年の少女事件に端を発した、「日本復帰」後初の基地縮小要求県民総決起大会以来、米軍再編反対、普天間基地県外・国外移設要求、教科書検定撤回問題等々に顔をつらねた各層各派の人々が参集、超党派島ぐるみ型の大会である。
仲井眞知事はなお参加を保留している。
限りなく自民党に近づき、ついに「第2自民党」(沖縄タイムス7月16日社説)と化した野田佳彦政権。
毎週、総理官邸前を埋め尽くし、又、7・16集会で17万もの人が「原発反対」の声をとどろかせても、平然と大飯原発の再稼働を促進する民主政権をどう動かせるか。
県民一致の大会を成功させるだけでは済まない、あらゆる手立てを尽くそうと準備が進んでいる。
宜野湾市では普天間飛行場の大山ゲートに近い小公園で、市民団体が7月9日から毎日早朝7時~午後6時の座り込み、国道58号線沿いに県民大会の成功とオスプレイNOと普天間閉鎖の訴え、大山ゲートへのデモを続けている(8月5日まで)。
基地の県内移設に反対する県民会議では、傘下の平和運動センターや労組・政党など組織を中心に、毎日キャラバンを始めた。県下41市町村すべての議会決議を経て、首長たちも市町村民に呼びかけをしている。
東村のように、高江のヘリパッド設置容認の村長でも「オスプレイ配備なら反対」と変わったところもある。
その高江では、7月10日夕刻、住民の隙をついて警察や沖縄防衛局の職員が重機をN4ゲート前に持ち込み、ノグチゲラの営巣期間を過ぎたのを口実に工事開始の構え。以後、24時間態勢の座り込みが始まっている。だが、東村長の建設容認見直し発言で、県も再度検討の方向になりそうだ(17日現在)。
ほとんど口まねで米軍側の安全の説明を伝えてきた日本政府も、安全度について、自ら検証すると言明した。
民主党前原誠司政調会長は、ルース駐日米大使に配備の時期を遅らせるべきだと要請、党の全国幹事長会議でも、再検討すべきだとの考えを示し(7月13日)、「野田首相も藤村官房長官も沖縄、山口の民意を軽く考えすぎているのではないか。見通しが甘いと言わざるを得ない」と、異例ともいえる批判をした(17日記者会見)。
その危機感は「これだけ事故の多い機種を米国から言われた通りに導入すれば、基地に協力している山口・沖縄両県などの(非協力に転ずる)潮目になる可能性がある」(7月13日BS朝日、番組収録で(琉球新報)というものだ。
「オスプレイの配備自体は、米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない」と言ってのける(16日フジテレビ)野田首相の鈍感さ!これでは困ると、民主党内も混乱気味だ。
すでにオスプレイを積んだ自動車運搬船「グリーン・リッジ」(54万輔トン)」が7月1日に米カリフォルニア州のサンディエゴ港を出港して、ハワイ・オアフ島、グアム経由し、7月23日には岩国基地へ搬入されると米国から政府に連絡が入った。岩国では、16日、連合山口の主催でオスプレイの搬入反対市民集会が開かれ、1千人が参集した。山口では7月29日に知事選挙が行われる。二井関成現職知事も、福田良彦岩国市長も、軍民共用の滑走路(「岩国錦帯橋空港」と名付けるそうだ)沖合展開建設というアメを投入されて米軍再編を容認した経緯がある。知事選最中のオスプレイ搬入、果たして可能か。
● 沖縄の発信力
ここに至るには、17年にわたる沖縄地元での市民運動先導の情報収集、政府のウソを暴き続けてきた成果がある。
また、地元メディアがたゆみなく、日本外務・防衛官僚や米国防省筋の官僚の説明とは違う次元の声、議論を伝え続けてきたこと、さらに各分野の人々がそれぞれの場で、沖縄の主張を表明し続けてきた成果を確認したい。
真喜志好一さん以下、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団をはじめとする、環境の面からの辺野古新基地建設反対、政府のウソで固めたオスプレイ配備計画の阻止については、近く『オスプレイ配備の危険性』(七つ森書館)が出る。ぜひ熟読してほしい。
● メディアでのオスプレイ問題
平安名純代沖縄タイムス・米国特約記者は、米政府監査院が、開発初期に起こった海兵隊のオスプレイ事故で、火災につながるエンジン出火の一因とされた「エンジン粒子セパレータ」の改善が2010年に至ってもなされていない旨の報告書について報じた(7月12日タイムス紙面)。
また同記者は、アフガニスタンでの空軍のオスプレイ墜落事故(4人死亡)の調査委員長ドン・バーベル空軍准将(当時)から、墜落の最大要因とみられたエンジントラブルの改善措置がまだ講じられていない、同様の事故が発生する可能性があるという見解を聞き出した(7月13日同紙紙面)。
朝日が、バーベル元准将が原因の確定をめぐって空軍上層部と衝突したことを含め、16日1面トップと3面で掘り下げ、削減が予想される海兵隊の存続をかけた開発であることを提示した。NHKも取り上げ続けている。
琉球新報の松堂秀樹ワシントン特派員は、7月9日にノースカロライナ州の海兵隊ニューリバー基地に所属するオスプレイが、エンジントラブルが疑われる不具合を生じ、同州ウィルミントン国際空港に緊急着陸したことを伝え(12日同紙紙面)、過去にも米軍が事故と記録していない火災、飛行準備中に突然上昇、墜落などがあり、隠ぺいの疑いがあることを知らせてくれた(7月10日同紙紙面)。
さらに07年に海軍大学院在籍の海兵隊将校3人が、オスプレイの導入をめぐり、「最良の選択ではない」と論文を発表していたことを伝えた。
「(普天間で引退する)CH46ヘリと比べ、速度2倍、搭載量3倍、行動範囲4倍」と、米軍や玄葉光一郎外相、歴代の防衛相からさんざん聞かされた高性能、抑止力の強化が疑わしいことを立証する内容。(7月15日同紙紙面)。
共同通信もまた、09年6月の米議会公聴会で、国防総省系の国防分析研究所のレックス・リボロ元主任分析官が、2つのエンジンが同時停止した際、回転機を回して緊急着陸する「オートローテーション」と呼ぶ機能が欠如していると警告したことを報じた。この機能については、防衛省はデータを把握していないとも伝えられた(沖縄タイム
ス7月14日紙面)。
● 一時配備延期ではない
オスプレイ配備拒否に絞って、いま、沖縄は将来に悔いのない選択をしようとしている。
ただ一抹の不安もある。沖縄はよく不運にも見舞われる。沖縄の将来を決する大きな節目の年は、日本国中天変地異、人災で社会が不安に駆られる年であることが多い。またそれを吹き飛ばすため国民が熱中するオリンピックの年回りにも遭遇する。
7月27日開会のロンドンオリンピックは、県民大会の8月5日、陸上競技はじめ多くが佳境に入る。沖縄国際大学へのヘリ墜落の際のオリンピツクを引き合いに出すまでもない。
スポーツへの熱狂などにかき消されないよう、沖縄の要求は、前原民主党政調会長が言うようなオスプレイ配備の延期ではなく、「阻止」そして「普天間飛行場閉鎖」であることを強力に発信したい。
『労働情報』(844号 2012/8/1)
★ 8月5日県民大会へ向け
オリンピツクにかき消されないよう
由井晶子(ジャーナリスト)
● 第二自民党か
ようやく垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備が許しがたいものとして、本土にも知られるようになった。アメリカが全計画を発表し、配備のほぼ全容が分かるとともに、沖縄だけでなく、反対の火の手が全国各地に上がった。
沖縄地元では、さらにオスプレイの配備を阻止し、普天間の閉鎖を実現させるべく、仲井眞弘多知事・佐喜眞淳宜野湾市長、県議団ほかが東京行動で、政府与党、関係省庁に要請を重ねたうえ、8月5日、宜野湾市海浜公園での県民大会開催を決定した。(本土でも呼応した集会が開かれる)。
県議会主導で、大会の事務局長を野党・県民ネットの玉城義和氏が、事務局次長を与党・自民の照屋守之氏が務める案が決まった。共同代表に県議会議長、そして、翁長雄志那覇市長が快諾した。
1995年の少女事件に端を発した、「日本復帰」後初の基地縮小要求県民総決起大会以来、米軍再編反対、普天間基地県外・国外移設要求、教科書検定撤回問題等々に顔をつらねた各層各派の人々が参集、超党派島ぐるみ型の大会である。
仲井眞知事はなお参加を保留している。
限りなく自民党に近づき、ついに「第2自民党」(沖縄タイムス7月16日社説)と化した野田佳彦政権。
毎週、総理官邸前を埋め尽くし、又、7・16集会で17万もの人が「原発反対」の声をとどろかせても、平然と大飯原発の再稼働を促進する民主政権をどう動かせるか。
県民一致の大会を成功させるだけでは済まない、あらゆる手立てを尽くそうと準備が進んでいる。
宜野湾市では普天間飛行場の大山ゲートに近い小公園で、市民団体が7月9日から毎日早朝7時~午後6時の座り込み、国道58号線沿いに県民大会の成功とオスプレイNOと普天間閉鎖の訴え、大山ゲートへのデモを続けている(8月5日まで)。
基地の県内移設に反対する県民会議では、傘下の平和運動センターや労組・政党など組織を中心に、毎日キャラバンを始めた。県下41市町村すべての議会決議を経て、首長たちも市町村民に呼びかけをしている。
東村のように、高江のヘリパッド設置容認の村長でも「オスプレイ配備なら反対」と変わったところもある。
その高江では、7月10日夕刻、住民の隙をついて警察や沖縄防衛局の職員が重機をN4ゲート前に持ち込み、ノグチゲラの営巣期間を過ぎたのを口実に工事開始の構え。以後、24時間態勢の座り込みが始まっている。だが、東村長の建設容認見直し発言で、県も再度検討の方向になりそうだ(17日現在)。
ほとんど口まねで米軍側の安全の説明を伝えてきた日本政府も、安全度について、自ら検証すると言明した。
民主党前原誠司政調会長は、ルース駐日米大使に配備の時期を遅らせるべきだと要請、党の全国幹事長会議でも、再検討すべきだとの考えを示し(7月13日)、「野田首相も藤村官房長官も沖縄、山口の民意を軽く考えすぎているのではないか。見通しが甘いと言わざるを得ない」と、異例ともいえる批判をした(17日記者会見)。
その危機感は「これだけ事故の多い機種を米国から言われた通りに導入すれば、基地に協力している山口・沖縄両県などの(非協力に転ずる)潮目になる可能性がある」(7月13日BS朝日、番組収録で(琉球新報)というものだ。
「オスプレイの配備自体は、米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない」と言ってのける(16日フジテレビ)野田首相の鈍感さ!これでは困ると、民主党内も混乱気味だ。
すでにオスプレイを積んだ自動車運搬船「グリーン・リッジ」(54万輔トン)」が7月1日に米カリフォルニア州のサンディエゴ港を出港して、ハワイ・オアフ島、グアム経由し、7月23日には岩国基地へ搬入されると米国から政府に連絡が入った。岩国では、16日、連合山口の主催でオスプレイの搬入反対市民集会が開かれ、1千人が参集した。山口では7月29日に知事選挙が行われる。二井関成現職知事も、福田良彦岩国市長も、軍民共用の滑走路(「岩国錦帯橋空港」と名付けるそうだ)沖合展開建設というアメを投入されて米軍再編を容認した経緯がある。知事選最中のオスプレイ搬入、果たして可能か。
● 沖縄の発信力
ここに至るには、17年にわたる沖縄地元での市民運動先導の情報収集、政府のウソを暴き続けてきた成果がある。
また、地元メディアがたゆみなく、日本外務・防衛官僚や米国防省筋の官僚の説明とは違う次元の声、議論を伝え続けてきたこと、さらに各分野の人々がそれぞれの場で、沖縄の主張を表明し続けてきた成果を確認したい。
真喜志好一さん以下、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団をはじめとする、環境の面からの辺野古新基地建設反対、政府のウソで固めたオスプレイ配備計画の阻止については、近く『オスプレイ配備の危険性』(七つ森書館)が出る。ぜひ熟読してほしい。
● メディアでのオスプレイ問題
平安名純代沖縄タイムス・米国特約記者は、米政府監査院が、開発初期に起こった海兵隊のオスプレイ事故で、火災につながるエンジン出火の一因とされた「エンジン粒子セパレータ」の改善が2010年に至ってもなされていない旨の報告書について報じた(7月12日タイムス紙面)。
また同記者は、アフガニスタンでの空軍のオスプレイ墜落事故(4人死亡)の調査委員長ドン・バーベル空軍准将(当時)から、墜落の最大要因とみられたエンジントラブルの改善措置がまだ講じられていない、同様の事故が発生する可能性があるという見解を聞き出した(7月13日同紙紙面)。
朝日が、バーベル元准将が原因の確定をめぐって空軍上層部と衝突したことを含め、16日1面トップと3面で掘り下げ、削減が予想される海兵隊の存続をかけた開発であることを提示した。NHKも取り上げ続けている。
琉球新報の松堂秀樹ワシントン特派員は、7月9日にノースカロライナ州の海兵隊ニューリバー基地に所属するオスプレイが、エンジントラブルが疑われる不具合を生じ、同州ウィルミントン国際空港に緊急着陸したことを伝え(12日同紙紙面)、過去にも米軍が事故と記録していない火災、飛行準備中に突然上昇、墜落などがあり、隠ぺいの疑いがあることを知らせてくれた(7月10日同紙紙面)。
さらに07年に海軍大学院在籍の海兵隊将校3人が、オスプレイの導入をめぐり、「最良の選択ではない」と論文を発表していたことを伝えた。
「(普天間で引退する)CH46ヘリと比べ、速度2倍、搭載量3倍、行動範囲4倍」と、米軍や玄葉光一郎外相、歴代の防衛相からさんざん聞かされた高性能、抑止力の強化が疑わしいことを立証する内容。(7月15日同紙紙面)。
共同通信もまた、09年6月の米議会公聴会で、国防総省系の国防分析研究所のレックス・リボロ元主任分析官が、2つのエンジンが同時停止した際、回転機を回して緊急着陸する「オートローテーション」と呼ぶ機能が欠如していると警告したことを報じた。この機能については、防衛省はデータを把握していないとも伝えられた(沖縄タイム
ス7月14日紙面)。
● 一時配備延期ではない
オスプレイ配備拒否に絞って、いま、沖縄は将来に悔いのない選択をしようとしている。
ただ一抹の不安もある。沖縄はよく不運にも見舞われる。沖縄の将来を決する大きな節目の年は、日本国中天変地異、人災で社会が不安に駆られる年であることが多い。またそれを吹き飛ばすため国民が熱中するオリンピックの年回りにも遭遇する。
7月27日開会のロンドンオリンピックは、県民大会の8月5日、陸上競技はじめ多くが佳境に入る。沖縄国際大学へのヘリ墜落の際のオリンピツクを引き合いに出すまでもない。
スポーツへの熱狂などにかき消されないよう、沖縄の要求は、前原民主党政調会長が言うようなオスプレイ配備の延期ではなく、「阻止」そして「普天間飛行場閉鎖」であることを強力に発信したい。
『労働情報』(844号 2012/8/1)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます