声 明 (累積加重処分違法判決)
1 本日,東京地方裁判所民事19部(古久保正人裁判長)は、八王子市の夜間中学校の元教員(以下「原告」という)が、卒業式における国歌斉唱の際に起立しなかったため、職務命令違反として、4回の懲戒処分(戒告、減給1月、減給6月、停職1月)を受け、これら処分の取り消しを求めていた事件について、前記処分のうち、減給・停職処分については、東京都教育委員会(以下「都教委」という)に裁量権逸脱・濫用があり違法であるとして、これを取り消す旨の、原告一部勝訴判決を言い渡した。
同判決は、「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」とした本年1月16日の最高裁判所第一小法廷の同種事件に関する判決内容を踏襲し,「前年の卒業式の際の本件第1不起立による戒告1回の処分歴があることをのみを理由に、減給を選択したことは、処分の選択が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠」くとして,減給・停職処分の取消しを命じたものである。
上記判示が、最高裁の判断を維持し、都教委が、卒業式等における国旗掲揚・国歌起立斉唱を教職員に義務付け,違反した教職員に対して,回を重ねるごとに、戒告、減給、停職と累積加重する懲戒処分を繰り返してきたことは違法であるとし、その懲戒権行使に歯止めをかけた点は評価できる。
2 しかし、同判決は、起立斉唱等を義務付けた2003年10月23日通達(10.23通達)、前記通達と同趣旨の同年9月22日ないし12月8日八王子市教育委員会通達、これに基づく学校長の職務命令と違反者に対する戒告処分について、一連の最高裁判例を踏襲し、憲法19条に違反せず適法と判断した。
本訴訟で、原告は、特別支援校の生徒や反抗的な生徒に対する指導から柔軟な対応の必要性を痛感し教育に強制が馴染まないこと、特に夜間中学校は第二次世界大戦時に日本が侵略した国々から来ている生徒も多く、日の丸・君が代に対して未だに侵略戦争のシンボルとしての意味を感じている生徒も少なくないことなどから、本件各通達・職務命令・各処分が、教職員の教育の自由、ひいては生徒らの思想・良心の自由や学習権を侵害するものとして、憲法23条26条、教育基本法16条違反等について強く主張してきたが、判決は、学習指導要領に国旗国歌条項があることを重視して、前記3通達・職務命令・処分そのものについては、いずれも、適法であると判断した。
これは、都教委による教育現場への不当な介入とこれによる生徒らへの影響の実態を追認する内容であり、到底認めることはできない。強く抗議する。
3 都教委は、本判決を重く受け止めるとともに、10.23通達を撤回し、各市町村へも「指導」を行い、今後同様の処分をやめ、原告に対する戒告処分をも撤回すべきである。
私たちは、今後も、学校現場において、真に、思想良心の自由、教育の自由、児童・生徒の学習権が保障されるようにするために、闘い続けるものである。
2012年4月19日
公立夜間中学教員の卒業式国歌斉唱不起立懲戒処分取消訴訟 原告・弁護団
公立夜間中学教員の卒業式国歌斉唱不起立懲戒処分取消訴訟 原告・弁護団
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