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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

そもそも「失職」とは何か-教員免許更新制再考⑦

2011年11月18日 | こども危機
 『尾形修一の教員免許更新制反対日記』から
 ★ そもそも「失職」とは何か-教員免許更新制再考⑦


 更新制問題も長くなってきたけれど、自分の中で問題が広がってしまい、もうしばらく書いて行きたい。そこで前回の⑥なんだけど、熊本で起こったことを紹介して、「真面目に勤務していても、突然失職するというあってはならないことが現に起こった」ことを報告した。このことは非常に大切なことなので、今後も言っていきたいと思うけれど、問題はそこに止まらない。では、マジメに働いていない問題教員なるものがいたとして、その場合は「失職」してもいいのだろうか。それはおかしいというのが今日のテーマで、この制度の根幹について論じておきたい。
 こういうことを書くと、「問題教員を教壇に立たせて良いのか」などと揚げ足を取る人がいる。そうではなくて、マジメだろうが問題があろうが、正規だろうが非正規だろうが、公務員だろうが民間企業だろうが、「突然、クビになる」ということがあってはならないということが言いたいのである。
 「問題がある職員」を辞めさせたいというなら、それなりに手順を踏んで進めなくてはならない。
 現実に、法的な問題を起こし懲戒規定によって解雇される教員がいる。また、「指導力不足教員」の指定を受けた教員の中には、最終的に研修の成果が乏しいとして諭旨免職になる教員もいる。中には、その処分をめぐって裁判を起こして、勝訴して復職できた人もいる。
 いつも不思議に思うのは、更新制賛成などと言う人がいて「問題教員を教壇に立たせるな」などということである。更新制というのは、何度も書くけど、大学で座学を受ければいいので生徒と人間関係を作れないような教員でもクリアーできる。離島やへき地の教員や夏休み、土日も部活指導で忙しい教員など、大変な中を頑張る教員こそいい迷惑という不思議な制度である。問題教員を辞めさせろ」と思うんだったら、なぜその目的に合うような制度を提唱しないのだろうか。本当に不思議。
 そして、その講習を自費で受け、合格して、自分で更新手続きをしないと「失職」する。ここには、どこにも「処分」がない。従って、処分取り消しの裁判ができない。問題を起こしたり指導力不足だったりすれば、ちゃんと処分してくれるから、不満だったら人事委員会に不服を申し立て、その次には裁判所に行政訴訟を申し立てることができる。通るかどうかは別にして。もし、更新講習を受けなかったというだけで懲戒解雇になったんだったら、訴訟をすれば明らかに解雇権の濫用になるのではないか。でも、突然、免許が失効して、公務員の地位もなくなる。(ついでに言えば、失職は退職ではないので、退職金は出ないと僕は言われた。)
 教員は、教員免許がなくても公務員ではないのか。学校には教員免許のない職員もいる。教員免許がなくなるとしても、事務や用務の仕事をできてもいいはずである。本人がそれを望むかどうかは別にして。あるいは教科を持たずに不登校生徒の対応や生活指導、部活動指導員などでもいい。
 しかし、それはできない。教員は教員免許と公務員の地位が密接に関係していて教員の地位を失うと公務員の身分も喪失するという最高裁判決があるのだ。(「旭川学テ訴訟」。ちゃんとそういう裁判をした人が前にいるのだ。)これは公立学校の場合。
 私立学校は違う。実際に熊本では、前に紹介した新聞記事によれば、「私立学校の3人については、免許が復活したり、無免許だが補助教員として働いたりして、すでに教職に戻っている」とのことである。これは驚くべき「官民格差」だ。私立では失職しなかったらしいのである。
 この制度はおかしいと思い、講習を受けなかったために、今持っている教員免許が失効してしまう。では、それは問題ではないかと裁判を起こそうとすれば、それもできない。
 「教員免許失効差し止めの仮処分」を求める訴訟は出来ない。それは行政事件訴訟法の第44条に、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」と明記されているからである。この「失職」というのは、「処分」ではないので処分不当の裁判はできず、しかし「その他公権力の行使」にはなるので、仮処分申請もできない
 要するに、熊本県での事例のように「特例措置」を当局側で講じる以外に救済の方法はない。公立学校の場合は。私立は違う。
 この制度自体の根幹が、いかに恐ろしい発想で出来ているのかがよく判る。これ、放っておくと絶対他の公的資格にも広がると思うんだけど。(もちろん、制度自体が憲法違反という、今の最高裁では絶対勝つはずのない論点で訴訟することはできる。)
 なんでこんな制度を作ってしまったんだろうか。そのことはまた今度。

『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2011年11月14日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/4df5efb04b1baec2abd0032184f060a8

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