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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

焼却灰:再利用に名を借りて放射能汚染が全国に拡散?

2017年11月06日 | フクシマ原発震災
  《福島告発ルポ - 労働情報》
 ▼ 放射能汚染ごみ焼却の現場を見た
瀧 秀樹(労働情報事務局長)

 ▼ 再利用で汚染が全国に拡散?
 福島県内を歩けばそこいら中で目にするフレコンバッグの山。除染作業で出てきた除染土壌、汚染された草木、廃材などが黒い袋に入って山積みになっている光景は何とも異様だが、あれはこの先どういう処理がされるのか、されているのか漠然と疑問に思っていたところ、「可燃物は焼却処分されている」と聞いて驚いた。
 しかも焼却灰のうち8000Bq/㎏以下のものは再利用されるという。再利用に名を借りて放射能汚染が全国に拡散?
 現地ではどんな捉え方がされているのか、焼却処分の実態はどうなっているのかを確かめたく7月17日~18日と駆け足で焼却炉問題に取り組んでいる和田央子さんの案内で福島県内の焼却場、リサイクル工場計画地、特定廃棄物埋め立て処分場などを訪れた。
 ▼ 秘密裏に進められた建設
 案内してくれた和田さんが放射能汚染廃棄物の焼却場問題に取り組み始めたきっかけは、鮫川村に作られようとした指定廃棄物焼却実験施設第一号の建設だった。
 地元住民には全く事前の説明もなく建設が進められようとした。調べると環境アセスをすることもなく、一部の地権者のみに知らせて進められた。
 地権者の同意書のうち一名分は偽造されたもの、4名分は故人のものであった。
 偽造された一人は仮処分に訴えたが「どうせ使えない土地だから地権者に損害はない。一方焼却炉は中止になると6億円以上の損害が出る」と主張する環境省側を支持し訴えは棄却された。
 また村民、周辺地区住民らは説明会を求めたが説明会は鮫川村の住民のみ参加が認められ隣町の住民らは排除。マスコミも締め出された。
 こんなやり方で作る実証炉とは一体何なのか疑問に感じ和田さんはごみ焼却炉問題に関わっていった。
 ▼ 法改定で基準が大幅緩和
 原子炉等規制法は「放射性物質のクリアランスレベルを100Bq/㎏」と定め、原子力施設では現在もこの法律に従っている。
 しかし福島原発事故後、「放射性物質汚染対処特措法」が定められ、福島県をはじめ複数の都県を対象に、原子力施設の外側、いわゆる私たちの生活圏においては「8000Bq/㎏以下であれば安全に焼却・埋設が出来る」とされた。
 このため大量に発生した除染等による放射性廃棄物のうち可燃性のごみについては国や自治体が仮設焼却炉を建設して焼却・減容化し、8000Bq/㎏超10万Bq/㎏以下は管理型処分場に埋立処分、10万Bq/㎏超は国が建設する中間貯蔵施設での管理とされた。
 福島県内の仮設焼却炉の建設状況は、2017年8月時点で稼働中10基、建設中2基、運転終了9基、稼働待ち1基、計画中不明(複数)となっている。
 建設から解体までの費用は鮫川村の実証炉で21億円、南相馬市の焼却炉2基で758億円と数十億円から数百億円。
 しかしこれら焼却炉の使用年数はせいぜい数年だ。

 ▼ 放射能が拡散する懸念
 放射性廃棄物を焼却して放射能は周辺に拡散しないのかと、誰しも心配する。
 焼却を進める環境省は「バグフィルターにて99・9%の排ガス中の放射性セシウムは捕捉され、バグフィルター通過後は放射性物質の検出限界以下となる」としている。
 いくつかの焼却場での測定データもホームページに載せている。
 放射性セシウムは640度で気化する。焼却により気化したセシウムを煙道の温度が下がる過程で飛灰に付着するためバグフィルターでほとんど捕捉されるというのだ。
 ところが実際の焼却場で職員に「バグフィルターの目を潜り抜ける粒子の大きさはどのくらいか」と聞いても不明であり、「もともと放射性物質を捕捉するためにつくられたものではない」と言う。
 実際、市民団体の調査によって複数のバグフィルターメーカーから「放射性物質の捕捉については保障しない」との回答が得られている。
 今回同行した元東京清掃局で働いていた東京清掃の組合員は「バグフィルターは目詰まりしてしまうと空気が通らなくなり危険なので時々補足した灰をふるい落とします。すると通過しやすくなります」という。たとえわずかでも通過する放射性物質があるということは、処理量が多いだけに気になるところだ。
 さらに彼らの経験ではバグフィルターが破損することは珍しいことではないという。
 万が一そんな破損事故が起これば濃縮された放射性飛灰が大気中に放出されてしまう。
 焼却場の敷地境界で空間線量は測っているというが、それで十分なのか。測定データが「環境省ホームページに公表されている」と清掃工場の方は説明するのだが…。
 事故後、避難指示区域となった楢葉町の清掃工場に行ってみると、敷地内は焼却灰が入れられたフレコンバッグであふれかえっていた。まだ法律も国からの指示もない時の廃棄物で、「最も濃度の高い焼却灰は敷地内の建屋に保管している。震災直後、どれほどの放射線量があるかも分からないので我々も入りたくありません」という清掃工場の方の言葉は重い。
 この清掃工場は広域処理を行っており、事故直後から、圏外の広野町の住民らのごみ処理も行なっていた。そのため清掃工場従業員は止むにやまれず避難指示区域内の焼却場に通って仕事をせざるを得なかった事実も今回の取材で明らかになった。
『労働情報』(2017.9)

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