《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
◆ 子どもに10万円、「現金かクーポンか」より、
奨学金や給食無償化の議論を
(現金給付を認める岸田首相)
「子どもに10万円」給付という公明党の公約が、選挙後の与党協議で「現金で5万円、クーポンで5万円」「所得制限あり」となった。しかし、クーポンだと事務経費が967億円もかかるということが判明して、全額現金の方が良いという声が大きくなり、理由があれば可能となって、さらに岸田首相は「全額現金給付を認める」と表明した。
という問題をちょっと考えておきたい。この問題は公明党の公約から始まっている。僕が選挙中に書いたように、自公両党は選挙区の調節を行い全面的に選挙協力を行った。だから自民党だけで過半数の議席を獲得したわけだが、両党で連立内閣を組んでいる。そのことは事前に想定されたことなんだから、本来なら「連立与党共通公約」を出すべきではないか。
10月31日に選挙をして、年内にも給付しようという「短兵急」が混乱の大本である。本来もっと練り上げられた公約を掲げるべきだった。
僕は選挙中に「公明党の「子どもに10万円給付」公約を考える」(2021.10.24)を書いた。そこで(中学生までの場合は)「児童手当」の仕組みを利用すれば簡単に給付できると指摘した。
やっぱりその通りになったが、所得捕捉の方法が現状に合わないという声がかなりある。しかし、それは児童手当全体の仕組みを総合的に考えるべきことで、今回はやむを得ないだろうと思う。
だけど、16歳から18歳への給付はどうするんだろう。子どもがいない困窮世帯もいっぱいあるはずだし、18歳で区切ると「大学生」はどうなるんだろう。それは「学生支援緊急給付金」というものを作るらしいが、そっちの支給はいつになるのか。
そのような「全体的仕組み」こそまず議論するべきことなのに、世論は「クーポン問題」に集中してしまった感がある。これが今問題化したのは、臨時国会で予算委員会が開かれて「一問一答」の質疑が始まったからである。
つまり、今まで(首班指名の特別国会を除き)、内閣は野党が要求し続けた「臨時国会」を開かなかったから、野党に追及の場がなかった。そのため、「半分をクーポンにしろ」という自民党の意向が通ってしまった。やはり国会は大事だ。
もともと財務省は現金給付に反対の意向が強い。給付してもほとんどが貯蓄に回ることが多かった。財政赤字のみ積み上がって、消費拡大効果が乏しいというわけである。そのような考えがある中で、自民党としても公明党の公約をむげに退けることはできないが、完全に言うことを聞いて「バラマキ」などと言われたくもない。
だから「5万円はクーポンで」という案をひねり出したんだろう。貰う方からすれば、クーポンより現金の方がいいかもしれないが、くれないよりクーポンをくれる方がいいだろう。今まで何でも「地域振興券」などを出しているから、全くゼロからやるわけじゃない。
だから、僕は政策意図がはっきりと伝わるならば、クーポンでも悪くはないと思っているのである。そこで問題は「政策意図」になる。
「子育て支援」か、「景気対策」かである。
景気対策でやるというなら、余計な金が掛かってもクーポンの意味はある。
だけど、「子育て支援」なら、「そもそも各家庭に10万円を給付する」という政策の有効性を問わなければいけない。
「現金かクーポンか」の議論をしているうちに、そのお金をもっと有効活用できるんじゃないかという議論が野党からも提起されなくなった。
子育て世帯に10万円を給付しても、僕は大部分は貯蓄に回るのではないかと思う。テレビでは育児用品の店などでインタビューして、有り難いという声を放送していた。
2歳、3歳の子どもの場合は、確かに使われるかもしれない。僕も学齢未満の子ども世帯には「現金給付」が良いと思う。
しかし、小学生は中学生になり、中学生は高校生になり、高校生は大学や専門学校生になるということが目前に迫って来ている家庭では、私立へ行くかもしれない、制服代も高い、部活や塾にもお金が掛かる、取りあえず貯蓄しておこうということになる。
その問題を解決することに使った方がいいのではないか。
つまり、結局は「大学や専門学校にお金が掛かる」という大問題がある以上、子育て世帯は消費を控えざるを得ない。しかし、今回高校生に給付するお金を使えば、「奨学金をすべて無利子にする」程度のことは出来ないのだろうか。その方が有効なのではないかというような議論こそすべきではないのか。
また小学生の場合では、「給食費を(所得制限なしに)無償化する」ことを真剣に考えるべきではないか。
給食費取りたてには学校事務職員や担任教師までが負担感を持っている。それに給食が地域経済、農業や食品加工業に持っている経済的意味は大きい。
小学生の給食は「食育」の意味も大きく、国が全面的に負担してもおかしくないと思う。単に経済的困窮世帯だけでなく、所得制限なしに子どもの健康を支えるという意味で給食費を国庫負担とする。例えば、そういう議論をする方が生産的ではないだろうか。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2021年12月14日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/34c6cd59029971a7dfc4a02967f586de
◆ 子どもに10万円、「現金かクーポンか」より、
奨学金や給食無償化の議論を
(現金給付を認める岸田首相)
「子どもに10万円」給付という公明党の公約が、選挙後の与党協議で「現金で5万円、クーポンで5万円」「所得制限あり」となった。しかし、クーポンだと事務経費が967億円もかかるということが判明して、全額現金の方が良いという声が大きくなり、理由があれば可能となって、さらに岸田首相は「全額現金給付を認める」と表明した。
という問題をちょっと考えておきたい。この問題は公明党の公約から始まっている。僕が選挙中に書いたように、自公両党は選挙区の調節を行い全面的に選挙協力を行った。だから自民党だけで過半数の議席を獲得したわけだが、両党で連立内閣を組んでいる。そのことは事前に想定されたことなんだから、本来なら「連立与党共通公約」を出すべきではないか。
10月31日に選挙をして、年内にも給付しようという「短兵急」が混乱の大本である。本来もっと練り上げられた公約を掲げるべきだった。
僕は選挙中に「公明党の「子どもに10万円給付」公約を考える」(2021.10.24)を書いた。そこで(中学生までの場合は)「児童手当」の仕組みを利用すれば簡単に給付できると指摘した。
やっぱりその通りになったが、所得捕捉の方法が現状に合わないという声がかなりある。しかし、それは児童手当全体の仕組みを総合的に考えるべきことで、今回はやむを得ないだろうと思う。
だけど、16歳から18歳への給付はどうするんだろう。子どもがいない困窮世帯もいっぱいあるはずだし、18歳で区切ると「大学生」はどうなるんだろう。それは「学生支援緊急給付金」というものを作るらしいが、そっちの支給はいつになるのか。
そのような「全体的仕組み」こそまず議論するべきことなのに、世論は「クーポン問題」に集中してしまった感がある。これが今問題化したのは、臨時国会で予算委員会が開かれて「一問一答」の質疑が始まったからである。
つまり、今まで(首班指名の特別国会を除き)、内閣は野党が要求し続けた「臨時国会」を開かなかったから、野党に追及の場がなかった。そのため、「半分をクーポンにしろ」という自民党の意向が通ってしまった。やはり国会は大事だ。
もともと財務省は現金給付に反対の意向が強い。給付してもほとんどが貯蓄に回ることが多かった。財政赤字のみ積み上がって、消費拡大効果が乏しいというわけである。そのような考えがある中で、自民党としても公明党の公約をむげに退けることはできないが、完全に言うことを聞いて「バラマキ」などと言われたくもない。
だから「5万円はクーポンで」という案をひねり出したんだろう。貰う方からすれば、クーポンより現金の方がいいかもしれないが、くれないよりクーポンをくれる方がいいだろう。今まで何でも「地域振興券」などを出しているから、全くゼロからやるわけじゃない。
だから、僕は政策意図がはっきりと伝わるならば、クーポンでも悪くはないと思っているのである。そこで問題は「政策意図」になる。
「子育て支援」か、「景気対策」かである。
景気対策でやるというなら、余計な金が掛かってもクーポンの意味はある。
だけど、「子育て支援」なら、「そもそも各家庭に10万円を給付する」という政策の有効性を問わなければいけない。
「現金かクーポンか」の議論をしているうちに、そのお金をもっと有効活用できるんじゃないかという議論が野党からも提起されなくなった。
子育て世帯に10万円を給付しても、僕は大部分は貯蓄に回るのではないかと思う。テレビでは育児用品の店などでインタビューして、有り難いという声を放送していた。
2歳、3歳の子どもの場合は、確かに使われるかもしれない。僕も学齢未満の子ども世帯には「現金給付」が良いと思う。
しかし、小学生は中学生になり、中学生は高校生になり、高校生は大学や専門学校生になるということが目前に迫って来ている家庭では、私立へ行くかもしれない、制服代も高い、部活や塾にもお金が掛かる、取りあえず貯蓄しておこうということになる。
その問題を解決することに使った方がいいのではないか。
つまり、結局は「大学や専門学校にお金が掛かる」という大問題がある以上、子育て世帯は消費を控えざるを得ない。しかし、今回高校生に給付するお金を使えば、「奨学金をすべて無利子にする」程度のことは出来ないのだろうか。その方が有効なのではないかというような議論こそすべきではないのか。
また小学生の場合では、「給食費を(所得制限なしに)無償化する」ことを真剣に考えるべきではないか。
給食費取りたてには学校事務職員や担任教師までが負担感を持っている。それに給食が地域経済、農業や食品加工業に持っている経済的意味は大きい。
小学生の給食は「食育」の意味も大きく、国が全面的に負担してもおかしくないと思う。単に経済的困窮世帯だけでなく、所得制限なしに子どもの健康を支えるという意味で給食費を国庫負担とする。例えば、そういう議論をする方が生産的ではないだろうか。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2021年12月14日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/34c6cd59029971a7dfc4a02967f586de
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