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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

河原井・根津裁判控訴審第1回審理 原告意見陳述(1)

2014年09月26日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 根津 陳述書
 ◎ 誤った知識や一方的観念を子どもに植え付けてはならない、が不起立の理由
2014年9月25日
 東京高等裁判所第14民事部御中
控訴人 根津公子

 一審判決が、またしても2012年1月16日最高裁判決に倣い、「過去の処分歴等に係る一連の非違行為」は「規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為」であるから「本件根津停職処分が違法であるとはいえない」としたことに、怒りを禁じ得ません。
 「規律や秩序を害する程度の大きい積極的な妨害行為」である「過去の処分歴」があると裁判所が認定すれば、その者に対する処分はすべてが適法ということです。ことは同じ「君が代」不起立であるにもかかわらず、一方は処分を取り消し、一方はいかに重い処分であっても何度でも適法とされることにはどうしても納得がいきません。「君が代」不起立にかかる職務命令違反を審査するのではなく、私の教師としての出発点、あるいは、私の教師としての首尾一貫した信念を裁いているからです。
 しかも、同最高裁判決は「不起立前後の態度等」を「過去の処分歴等」に入れているところ、私には2006年処分時から2007年のそれまでの間に受けた処分はありませんから、処分が加重される要因はありません。最高裁の立場から言えば、2007年処分の加重は違法となるはずです。
 また、本件処分時から13年前の1994年の処分を理由に、何度でも「君が代」不起立停職処分を適法にすることが果たして公平なのかを、丁寧に審査していただきたいと強く思います。八王子市立石川中学校在職中に処分対象とされた私の行為が生徒や保護者に支持され、校長の行為に批判が集中された事実に目を向け、審査してください。
 ところで、「君が代」不起立を貫いた教員は、「誤った知識や一方的観念を子どもに植え付け、子どもの自由かつ独立した人格形成を妨げるような内容の教育を施すこと」や「子どもの人権を否定し侵害すること」はできない、してはならないとの思いを共通に持っています。私の不起立の理由は、この一点に尽きます。
 処分の対象とされた1994年の「日の丸」引きおろしも、95年の学級通信、99年の授業用プリントも、それとまったく同じ思いから行った教育活動でした。2005年の再発防止研修の際に処分理由とされた質問を続けた行為も、背後にはその思いがあってのことです。
 一審判決は言います。「10・23通達は学習指導要領に基づいて入学式や卒業式が実施されることを目的として発出されたものであるところ、学習指導要領の国旗国歌条項は、我が国の国旗、国歌はもとより諸外国の国旗、国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることが重要であるとの考え方に基づき設けられたことからすると、10・23通達が誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付け、子どもの自由かつ独立した人格形成を妨げるような内容の教育を施すことを強制するものとは認められない」と。全く事実を直視しようとせず、慎重な審査を怠った判決だと思います。
 一度浮上した尊重規定を国旗国歌法に入れなかった意味は、司法に携わる人が知らないはずはありません。その意味するところは、学習指導要領の読み方においてもかつては合意、認識されてきたところです。
 だからこそ多くの自治体が、「一方的な観念を子どもに植え付け」ることのないよう、「君が代」不起立処分を行ってまで全員を起立させるということをしていないのです。その認識を、都教委の10・23通達は否定しました。
 さらにはこの3年、「日の丸・君が代」の強制について「一部自治体で強制の動きがある」と記述した、文科省検定を通った実教出版「高校日本史A」「高校日本史B」を選定・採択しないよう、都教委は各高校に圧力をかけました。
 都教委にとって都合の悪いことは、生徒たちの目に触れさせないという姿勢は、「誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付ける」という点で、処分の脅しによって全教職員を起立させ、それを見せることによって「君が代」斉唱時には起立をするものだ、尊重するものだと子どもたちに思わせることと通底しています。
 また、「君が代」斉唱時に起立を求める職務命令が、「思想及び良心の自由についての間接的な制約となる」と判示したのですから、全教職員が起立する場に置かれた子どもたちは、「君が代」では起立するものと思い込まされること、起立はできないと考える子どもたちは、自己を否定され、「思想及び良心の自由」「信教の自由」が制約・侵害されていることに、裁判官は気付くべきです。ここにこそ、細心の注意を払うべきです。
 侵害された子どもたちの叫びを、私はずっと聴いてきました。起立をする教員には訴えられなくても、不起立を続ける教員の私には、子どもたちは訴えてくるのです。控訴審では、こうした点を丁寧に審査していただきたいです。そうしたならば、「君が代」斉唱時に起立を命ずる職務命令が「違法とはいえない」という結論は導き出されないはずです。
 戦前戦中の教育が、“お国のために命を投げ出す兵士”及び“銃後の母”を育成するために「考えずに指示命令に従う」ことを教え込む教育であったことの反省を教訓に、私はそれを繰り返してはいけない、事実をもとにして考え判断できる子どもに育つよう事実の提示をしっかりしようと考え、教育活動に取り組んできました。だから、「君が代」斉唱時に起立を命じる職務命令に従わなかったのです。その決断は常に、免職を覚悟してのことでした。
 いま、日本は集団的自衛権行使容認の閣議決定により「戦争をする国」になってしまいました。負の歴史が繰り返されようとしている時に、「考えずに指示命令に従う」ことを教え込み、子どもたちに国旗国歌の尊重を一方的に強いる10・23通達が、果たして中立公正なものと言えるのかをしっかりと審査してください。
 そうしたならば、10・23通達が、都教委の指示に考えずに服従することはしないという思想信条ないしは教育上の信念を有する教員を処分することによって、教職員全体に思想統制の圧力を加えるとともに、子どもたちの思想形成に一定の方向付けをし、「愛国心」を情緒的かつ強制的に刷り込むことを真の目的としていることが浮き彫りになるはずです。
 控訴審においては、上記の諸点とくに私に対する累積加重処分の違法不当性をしっかり審査していただき、原判決を取り消してくださるよう訴えます。
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