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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

汚い企業の会長

2007年02月27日 | ノンジャンル
 ◆ 御手洗経団連会長の人物像

 衆院予算委員会で、日本経団連会長でキヤノン会長の御手洗冨士夫氏が連日、野党のやり玉に挙がっている。
 首相の諮問機関「経済財政諮問会議」の一員で、安倍晋三首相とは二人三脚。
 ことしの元日には「希望の国、日本」という提言を発表した。あらためて、御手洗氏ってどんな人で、何を訴えているのか。

◇「安倍型」の人

 御手洗氏は大学卒業後、一九六一年に二十五歳で叔父が創業者のキヤノンに入社。六六年から渡米し、七九年のキヤノンUSA社長就任を挟み、二十三年間、米国で暮らした。九五年に創業者子息の死去を受け、社長に。昨年五月、日本経団連会長に就き、安倍政権発足と同時に経済財政諮問会議の民間委員になった。
 米国暮らしの終盤はレーガン政権時代。そのためか、市場重視のレーガン、サッチャー路線の信奉者なのは安倍首相と同じだ。

◇請負問題は“法が悪い”

 足元のキヤノンでは昨年七月、労働各法による労働者保護を雇用者がすり抜ける違法な「偽装請負」が指摘された。
 二十二日の予算委で窮状を訴えた請負社員の同僚で、キヤノンユニオン・宇都宮支部の別の請負社員(二八)も「正社員と同じ内容で十年間働いてきたが、昇給やボーナスはない。(指摘があった後は)正社員の人と会話もできなくなった」と漏らした。
 しかし、キヤノンは偽装請負を否定。御手洗氏は諮問会議で「請負法制に無理がありすぎる」と"法が悪い"と公言している。
          
◇格差是正より「成長重視派」

 その同氏の主張は"御手洗ビジョン"と呼ばれる「希望の国、日本」に集約されている。核心は経済成長を至上に掲げる「成長重視派」と、格差を問題視する「弊害重視派」の二分法。安倍首相の「成長なくして未来なし」という標語と同様、同氏は前者の立場だ。
 ただ、内容には素人が読んでも疑問が多い。提言では「科学技術によるイノベーション(発明)」が「成長のエンジン」のカギと記されているが、それが何かの具体的な指摘はない。
 「経済成長が貧困と格差の弊害を是正する」というのも現政権の方針と同じだが、すでに企業が史上最高の経常利益を記録する一方で、生活保護世帯の増加に歯止めがかからない現状とこの説は矛盾しそうだ。
 本来なら、企業の成長と社会の豊かさを同伴させるなら「所得の再配分(累進税制)」が必要だと思うのだが、提言では逆に法人実効税率を現行の40%から30%に下げ、消費税を五年で5%上げろと主張する。
 さらに、残業代不払いになると不評な「ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の規制除外制度)」導入や労働契約法の改定を訴える一方、労働環境の悪化で愛社精神が通用しないためか、企業での「日の丸・君が代」の徹底、集団的自衛権の行使を含む改憲を掲げる。

◇手厳しい批判の声

 ジャーナリストの斎藤貴男氏は「ビジョンにふさわしい大局観がない」とこの提言を酷評する。「自分たちがもうかりさえずれば、それでいいというおねだり精神だけ。こうした形の経済成長は格差を一層広げるが、それが社会をどう荒廃させるかには思いが及んでいない」と批判する。
 経済評論家の佐高信氏も「一族経営のボンボン経営者が財界代表というのもあまり例がない」と指摘しつつ、「不見識というより無見識。一言で言うと、首相と同じ庶民の暮らしへの想像力を著しく欠いた”安倍型”の人物」と話す。「彼は会社が富めば従業員はどうでもいいという『社富員貧』をモットーとしている。新自由主義者でも何でもない、十九世紀型の幼い資本主義者だ」
 御手洗氏はこの提言で「結果の平等は人々の研鑽、努力、勤労の意欲を殺ぎ、無気力と怠惰を助長する」と説いている。しかし、前出のキヤノンの請負社員はこう話す。「私たちは会社を責めるのが狙いじゃない。ただ、みんなでよい製品を作りたいだけ。そのために安心して働ける環境を整えてほしいだけなんです」

(『東京新聞』2007/2/24ニュースの追跡)

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