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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

◆ 東京「君が代」裁判五次訴訟・第14回口頭弁論(証人尋問1回目)の様子

2024年08月31日 | 「日の丸・君が代」強制反対

  《被処分者の会通信から》
 ◆ 五次訴訟は,2期日にわたる証人尋問を終え、結審へ

審理担当 鈴木 毅

 ◆ 証拠調べは終了。次回が最終弁論に

 東京「君が代」裁判・五次訴訟は、7月4日(木)・18日(木)に午前・午後にまたがる日程で弁論が行われ、学者1名と原告本人9名に対する尋問が行われました。
 7月4日の第14回口頭弁論で、行政法の専門家である岡田正則早稲田大学大学院法務研究科教授と原告3名(井上佳子、鈴木毅、田中聡史)への尋問、7月18日の第15回口頭弁論で原告6名(今田和歌子、大能清子、山口美紀、川村佐和、秋田清、山藤たまき)への尋問が行われ、いずれも地裁最大規模(傍聴席98席)の103号法廷で実施し、傍聴席はいずれもほぼ満席で進行し、本訴のヤマ場にふさわしい法廷となりました。
 なお尋問終了後、今後の日程が示され、11月29日までに最終準備書面を提出し、12月16日(月)に最終弁論(13:30~14:30/631号法廷)を行うことが決まりました。この裁判は16回目の弁論で結審し、年をまたいで判決を待つという流れになります。
 今回は、2期日にわたって行われた証人尋問のうち、4日に行われた岡田正則教授への尋問の概要を報告し、原告本人尋問については、内容紹介は後日とし、尋問直後に書いていただいた感想を9名全員分紹介します。

 ◆ 岡田教授への尋問内容

 岡田教授はまず、行政法の観点から本件職務命令と処分の妥当性について再検討が必要で、その結果、懲戒処分の適否について審査する場合に必要な留意、考慮がなされておらず、比例原則に違反し、手続き的な相当性も欠き懲戒権の濫用にあたると指摘した。

 【「上司の命令は絶対」は通じない】

 職務命令には訓令的職務命令(行政組織間の指揮監督権の行使としてなされる職務命令)と非訓令的職務命令(公務員個人の規律に関わる職務命令)の二種類があり、本件職務命令は後者にあたる。
 後者は「受命公務員の身分や勤務条件に係る権利を侵害するものである場合には、当該職務命令への服従義務を否定される」と解されるのが通説であり、「上司の命令は絶対」というのは現代では通じない。
 「従える命令かどうか」「処分が必要かどうか」の検討が必要になる。つまり公務員の勤務関係においても懲戒権濫用の法理が適用されることになるが、本件はそのケースにあたる。

 【懲戒権濫用の内実】

 懲戒権濫用の判例法理に沿ってまず「処分の根拠規定の存在」を検討すると、君が代斉唱時の起立斉唱は法律上の義務ではないため起立強制には法的根拠がない、また当時の人事部長が通達発出時の説明会で「職務命令を出して従わせるのが大事だ」と説明していることから、処分が他事考慮および不正な動機に基づいていることも妥当性を欠く。
 次いで「客観的に合理的な理由の存在」については、不起立行為が卒業式等の進行に何ら支障を生じさせていないことを考えると理由を欠く
 また処分理由に示された地公法33条(信用失墜行為)違反にも客観的な根拠がなく、都教委の恣意的な思い込みに基づく判断だと言わざるを得ない。
 そして三点目の「処分の程度や手続きが社会通念上相当であると認められるか否か」という点については、比例原則違反や手続き的な相当性を欠いた場合は懲戒権の濫用となり違法となる。これらの点について検討していく上で、いくつか考慮すべき事項(要考慮事項)があるが、とりわけ重要なのは教員の専門性とそれに基づく教員自身が有する裁量権だ。しかしこの点についての考慮が全くなされていない。
 1966年にユネスコで採択された「教員の地位に関する勧告」専門職である教員の身分保障は不可欠で、恣意的な処分は許されないと指摘しおり、これを考慮すべきであるが、無視。
 さらに近年、ILO・ユネスコが本件について新たな勧告を出し、制裁的な懲戒処分が教員の思想・良心の自由を侵害する懸念が示されているがこれも無視。国際祉会において「日本が民主国家である」というのであれば、これらの勧告に適合させるのは常識で、このような処分はやめるべきだ。

 【再処分の違法性】

 再処分は理由の記載がなく手続き上違法であるが、実体面でも違法である。まず処分内容を変更したのにその理由が示されていないという時点で懲戒権の濫用となるが、処分者が取消判決を考慮する義務を果たしていない点でも違法となる。
 第一に、前訴取消判決は、減給処分などの「量定を裏付ける事由がない」という判断をしたのであり、「量定が不合理だ」とは判断していない。
 答弁書を見るとこの点を被告は誤解し、原処分の判断事由を見直すことなく再処分を発令している。よって要考慮事項を考慮することなく戒告処分を発令しているわけで、裁量権逸脱濫用にあたり違法。
 第二に、原処分と同様に、任命権者への服従を自己目的化した命令とその手段としての懲戒権の行使であることは不正な動機に基づく行為で、明らかに違法。
 第三に、比例原則違反にあたり違法だ。最高裁は原処分を「処分の選択が重きに失するもの」との理由で取り消したが、その際、処分によって得られる利益と失われる利益とを衡量した。この際の懲戒処分による不利益については「経済的な不利益」を挙げているが、実際には人事上や任用上の不利な取り扱いなど他にもさまざまな不利益があることに加えて、戒告処分を受けた場合よりも加重された内容の再発防止研修を受けさせられていることも考慮すべきである。
 この再発防止研修は処分の延長である懲罰的行為で、原処分取消後もその事実行為は消せず、不利益行為、事実行為として残っている
 これらのことを衡量すれば、本件再処分も「処分の選択が重きに失するもの」として、社会通念上著しく妥当性を欠く懲戒権濫用による違法との評価は免れないものとなる。

 【被告による反対尋問】※質問の多くは省略し、岡田教授の返答の要旨を紹介。

・(労働関係法は公務員には適用されないのでは?に対して)
   →法理は適用される。

・(一級建築士事件の判例は同一に論じられるのか?)
   →できる。法理は適用される。

・(教員の裁量には限界があるのでは?)
  →本件では専門職としての教員の裁量は全く考慮されていないことが問題だ。

・再発防止研修は教育専門職を対象とした研修ではない。不利益処分の延長にすぎない。くり返し反省を迫っている点で、(再発防止研修執行停止申立の)東京地裁決定が危惧していた違憲のレベルに達している。

・都教委は「日の丸・君が代」を命令に従うかどうかを点検する道具にしている。

・公正な手続きの観点からすれば、手続き的な保障が必要。

・特別活動において専門的な判断にもとつく行為は有用。儀式的な行事を考慮して静かに座っている行為に対して「支障がある」という見方があったとは証明されていない。

・「全体の奉仕者」とはその場の多数者に奉仕する者を意味するのではない。

・最高裁は単なるくり返しによる処分加重はいけないと言っている。説明もなく減給してはいけない。

・再処分の時に原処分と同じ理由を示すことはあり得ない。

 【裁判官質問】

(右陪席裁判官)事情聴取と聴聞の違いのメルクマールは何か?
   →聴聞は、処分内容を示して弁明を聴く機会を意味する。

(裁判長)意見書にある「真に教育的考慮に基づく行為」という記述について説明を。
   →教育的な意味を問い直して選び取った行動を意味する。

 ◆ 原告本人尋問を終えて・・・本人たちの感想
  ~ 4日の原告本人尋問3人

 ①井上佳子(元第五商業高校教員)

 原告尋問9人のうちのトップバッターでした。山本弁護士とのオンライン練習で、もし言うことが吹っ飛んでも山本先生がうまく発言を引き出してくださることになっていました。それでも不安で、3日前くらいから一人でブツブツ陳述の練習を繰り返
して本番に臨みました。当日は大法廷を埋める大応援団、そしてその中に高校時代の友人や昔の職場の同僚、大先輩の姿も見えて、本当に心強かったです。お陰様でなんとかやりきりました。応援してくださった皆様に感謝します。

 ②鈴木毅(八王子拓真高校教員)

 弁護士と打ち合わせをすればするほど言いたいことがたくさん出てきて、頭の中がまとまりきらずに法廷に立った(実は座った)という状態でした。また、尋問が始まって話し始めたら、速記者の方がいちいちうなずいてくれるので、調子に乗って余計なことを喋りすぎて、大事な話を端折ってしまったのは失敗でした。
 反対尋問にはこちらの主張を展開するチャンスになった質問もありましたが、しっかりツッコミを入れることができずに後悔することしきり。ああ、もう一度チャンスがほしい!

 ③田中聡史(久我山青光学園教員)

 7月4日の弁論で私に対する原告本人尋問が行われた。四次訴訟以来2度目だ。公民権行使等休暇で全日仕事を休んだが、今の特別支援学校は、教員がひとりでも休むと残された教員は大変な思いをする。申し訳ない思いを抱えつつ法廷に臨んだ。
 担当の澤藤弁護士とは予め2度打ち合わせをしたが打ち合わせどおりにはいかなかった。でもとにかく真剣に質問に答えようと心がけた。真剣な気持ちを態度で伝えることが自分の役割だと考えた。

(続)

 ※最終弁論期日 12月16日(月)
  13:30~14:30 631号法廷

 


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