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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

経団連の春闘向け方針『経労委報告』を分析する

2015年02月26日 | 格差社会
 ◆ 政府にねだる『経労委報告』
   規制緩和・実質減税・原発再稼働・TPP交渉の最優先を列記
(週刊新社会)

 経団連は1月20日、15年春闘での経営側の方針を示す『経営労働政策委員会報告』を発表した。
 昨年4月の消費税引き上げの影響でデフレに逆戻りする危機を表明、「賃上げを前向きに検討する」と2年連続で賃上げのポーズを見せた。賃金水準を上げるベースアップについても選択肢の一つと明記した。
 1月26日から開催された経団連と連合による「労使フォーラム」は、15春闘の事実上のスタートと位置づけているが、実際は経団連主催のフォーラムであって、「政労使会議」と同様に労働側が取り込まれた会議になっている。
 報告書でも「政府の後押しで規制改革や実質減税となる法人税改革、エネルギー政策(原発再稼働TPP交渉を最優先で取り組んでもらいたい」と政府におねだりをする。
 経団連は、「一社でもベアを行う企業が増えることを期待している」と賃上げのポーズを見せるものの、組合側の「一律2%以上のベア要求」について「納得性が高いとは言えない。実態にそぐわない」と釘を刺す。
 その一方、労働組合とのパートナーシップを強調する。
 「春闘は労使対決ではない。生産性向上を共通の課題にした交渉を進めたい」として、生産性基準原理に基づく賃金決定に執着する。経団連の榊原会長が発言した「ベースアップも選択肢の一つ」は、一部大企業向けの賃上げのあり方を明記したにすぎない。
 ◆ オールジャパンに捨象

 1、第1章の「持続的な成長を実現」について、冒頭から「安倍政権の経済政策により、経済再生への期待は高まっている」と賞賛、「オールジャパンで日本再興」を訴えている。
 安倍首相の持論である「冨める者が冨めば、貧しい者にも自然に滴り落ちる」トリクルダウンを「オールジャパン」で取り組もうというのだ。
 2、「デフレからの脱却」を枕言葉に使い続け、物価上昇と消費増税を肯定して「経済の好循環実現」をまくし立てる
 非正規労働者が2000万人を超え、非正規労働者の平均年収も167万円に低下する。この推移で行けば非正規労働者は間もなく労働者の半数に達する。
 国家戦略特区の積極的活用は「世界で最もビジネスのしやすい国」を現実のものとする。
 3、「安全性の確保で原発再驚囲」を積極的に求める。化石燃料による電力価格が高いと決めつけ、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の見直しも「原発を重要なベースロード電源」を理由に切り捨てようとする。東電福島第一原発の大惨事には全く触れていない。
 4、多様な働き方の推進の項では、非正規労働者を「二ーズにより、多様な働き方」が増えている。あくまでも労働者の意思で非正規を選択しており、強制じゃないと開き直る
 有期契約社員に対して、教育訓練の実施が拡大していることを自画自賛し、本質は棚上げにしている。
 5、労働者派遣法の見直(改悪)しの項では、「労使双方にとってより良い制度」にしたいと積極的に訴える。
 「企業は好きなだけ派遣活用できる」との指摘は誤りと反論、「雇用の安定化」「キャリアアップ措置の強化」が盛り込まれバランスの取れた内容と自画自賛をする。今国会での改悪法案の早期成立を求めている
 6、最低賃金を巡る課題と題して、14年度の全国加重平均16円が大幅な引き上げだと批判する。労働者側からの早期の最低時間給1000円の要求と差がありすぎる。
 それでも経営側は譲らない。最賃の引き上げが企業にダメージを与えていると、毎年廃止を求めている特定最低賃金(産別最低賃金)は存続する理由がなく、過去の遺物と決めつけ否定している。労働側に最賃引き上げを放棄しろと迫つている。
 ◆ 「内部留保は賃上げと無縁」

 7、第3章では、「労使コミュニケーションの強化」をことさらに訴える。「個別交渉・交渉重視」の徹底は労使のコミュニティーからと決定づけようとし、生産性基準原理に取り込もうとする経営側の常套手段になっている。「交渉は春闘だけではなく、ランチミーティングの意見交換が望ましい」と決めつける。
 8、賃上げについて、「賃金とは、賞与など含めた名称の別を問わず支払うもの」「ベースアップは賃金を引き上げる選択肢の一つつとして考えるべき」などを並べ、「月例賃金」にこだわるのは誤りと指摘する。
 9、企業の内部留保を利益剰余金として、「企業の持続的成長に寄与する」と正当化する。内部留保を賃上げなどに回す意味合いはないと反論している。
 このように、経営側は友好な労使開係を右手に掲げ、左手で賃上げも最賃もお断りの旗を振る。経営側の姿勢は変わらない。
 安倍首相は「景気回復の温かい風を全国津々浦々に届ける」と年頭で挨拶したが、賃上げは生活改善のためで「景気回復」ためじゃない。経営側は官邸と手を組んで、定昇内のお手盛りでお茶を濁そうと15春闘の構えが見える『経営労働政策委員会報告』になっている。
(宮川敏一・党労働運動委員会委員長)

『週刊新社会』(2015/2/24)
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