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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

歪められた採択システムを「呉教科書裁判」で治癒した結果の育鵬社不採択

2021年01月12日 | こども危機
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 育鵬社不採択を実現した呉市民のとりくみ
   ~裁判闘争なくして育鵬社不採択はなし

岸 直人(きしなおと 元教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま事務局)

 2011年に呉市教委が育鵬社歴史・公民教科書を採択したとき、なぜこのような教科書が採択されたのか、子どもたちにこのような教科書で学ばせてはいけない、という強い怒りを共有して、私たちは教科書研究と採択資料分析を始めました。
 しかし、呉市教委は2015年にも再度育鵬社を採択したので、「教科書ネット呉」を結成し、「教科書ネット・ひろしま」と共に呉市教委の不正採択を明らかにする取り組みを始めました。
 ◆ 本人訴訟での裁判を始める

 私たちは2015年の呉市教委採択資料を綿密に分析した結果、育鵬社歴史・公民教科書採択には次のような多数の不適正事実があることを発見し、愛媛教科書裁判を支える会の全面的な支援をいただき、本人訴訟での裁判を始めました。
・教育再生首長会議所属の小村前市長が、教育委員会に育鵬社を採択する働きかけをした(※2017年末の市長選挙で小村市長は落選し新原市長に交代する)。
・育鵬社公民を水増しカウントして高評価の報告をした。
・多面的・多角的視点の乏しい育鵬社を有利にするために、指導主事はこの視点を外した。・指導主事の杜撰な調査研究は1054か所の誤記を発生させた。
・指導主事が歴史区分を誤認した教科書を不当に低評価した。
・指導主事が調査研究委員会に参加して育鵬社有利の報告書を作成した。
・選定委員会が調査研究に介入してその公正性を損なった。
 これらの不適正事実について呉市に住民監査請求し棄却後2016年11月に住民訴訟「呉教科書裁判」を提訴、地裁で3年、高裁で1年闘うも、各判決とも「『水増し・改ざん、指導主事の規程違反』は市教委の裁量の範囲内。前市長の教育介入はあったとはいえない」という不当な判決でした。
 ◆ 採択過程の透明度を高めた

 しかし、呉市教委は裁判中にもかかわらず、
・指導主事を採択過程から完全に外す。
・教育長、事務局の選定委員会への関与を規程から除外する。
・調査研究報告書に選定委員会の意見を反映する要項の廃止。
・調査研究報告、選定委員会答申(総合所見)の簡略化。
 など市民の批判を受け入れて大きな改善をし、2018年には、
 ・教育委員会の採択会議を市民に公開
 ・ほぼすべての採択資料をHPに公開
 で採択過程の透明度を高めることができました。
 2020年の採択で次のような行動をしました。
 ①学校・教員の意見を採択に反映(尊重)することを求める署名1,318筆を提出。
 ②歴史・公民教科書分析資料を作成し、育鵬社の問題点を呉市教委に提出。
 ③以下の私たちの請願を呉市教委に採択させた。
   a,公正・適正な教科書採択を行うこと。
   b,日本国憲法を尊重する教科書を採択すること。
   c,一面的かつ特定の価値観をすり込むことなく、普遍的な真理を追究する教科書を採択すること。
 ④多くの市民がハガキ、メール、ファックスで呉市教委に育鵬社不採択要望を届けた。
 このような取り組みを経て8月21日の教育委員会採択会議で、ついに念願の育鵬社不採択を実現することができました。
 不採択実現の要因として、小村前市長により歪められた採択システムを、呉教科書裁判で治癒したと考えています。
 しかしまた、アベ政治を引き継ぐスガ政治の下、反動勢力を警戒しつつ今後も採択プロセスの民主化・透明化をすすめ、教科書採択を歪めさせない運動を引き続けていく必要があると考えています。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 135号』(2020.12)


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