◆ 文科省、教科書編集をがんじ搦め
指導要領との対応を明示 (週刊金曜日)
文部科学省が1月23日開催した、教科用図書検定調査審議会(検定審)の第3回総括部会で、教科書の「主要な内容」と学習指導要領(以下、指導要領)の「内容・項目」との対応までも、教科書上に明示させる"改善"策を出した。
文科省教科書課(望月禎(ただし)課長)が検定審に出した「教科書の改善について(論点整理)(案)」と題する文書は、
①教科書の主要な内容が指導要領の示す内容・項目とどう対応しているか教科書上に明示し、
②指導要領『解説』を「より踏まえ」教科書記述に適切に反映することが、「求められる」と明記(下線筆者)。
文科省は2014年1月、各出版社が検定申請した教科書に添付を求めている「編修趣意書」に、教科書の構成・内容(第1・2章など)と教育基本法第2条各号とを対照させるよう、教科書検定規則実施細則を改定し、「指導要領との対照表」の提出も義務化した。
今回の①は、それを教科書にも明示するよう求めたもの。
改定教育基本法に盛った"国を愛する態度"に加え、小学校6年や中学社会の指導要領が明記している「国歌尊重」「天皇への敬愛の念」「我が国の防衛、(自衛隊の)国際貢献」等で、一層政府の政策や見解に沿う記述を強制する意図が明白だ。
また、②の『解説』は、文科省が「大綱的基準として法的拘束力がある」とする指導要領とは異なり、参考資料に過ぎないのに、「より踏まえ」と強化。行き過ぎだ。
このため複数の傍聴者が閉会後、「①の追記により(指導要領を読んでいるわけではない)子どもたちが教科書を読む際、煩雑になる恐れ」などを質すと、
教科書課の担当者は「①は教師にとっては指導要領との関係がより分かり易くなる。また、文末を『求められる』と表現したのは、今回は検定基準の改正まではせず、出版社側に期待するということだ」と答えた。
今回の"改善"策は教科書の編集を一層、がんじ搦めにするものだ。
『週刊金曜日』(2017年2月10日号「金曜アンテナ」)
【参考資料】 (永野厚男)
第4段落の「小中学校学習指導要領の国家主義イデオロギー色の濃い記述」が、「小中学校のどの教科等に出ているか」は、以下の学習指導要領の記述の原文に、下線(アンダーライン)を引いたので、文科省の国家主義イデオロギーの実態をご覧下さい。
今回は小中学校の社会と特別活動の一部だけ引用しますが、総則や社会の歴史分野、道徳、高校の学習指導要領(『学習指導要領解説』を含む)にも、国家主義イデオロギー色の濃い記述があります。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、1つ目(天皇への敬意を持つ児童生徒を育てるよう謀む)
現行小学校学習指導要領(08年3月告示)「第2章 各教科」「第2節 社会」から
(2) 内容の(2)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア 政治の働きと国民生活との関係を具体的に指導する際には,各々の国民の祝日に関心をもち,その意義を考えさせるよう配慮すること。
イ 国会などの議会政治や選挙の意味,国会と内閣と裁判所の三権相互の関連,国民の司法参加,租税の役割などについても扱うようにすること。
ウ アの「地方公共団体や国の政治の働き」については,社会保障,災害復旧の取組,地域の開発などの中から選択して取り上げ,具体的に調べられるようにすること。
エ イの「天皇の地位」については,日本国憲法に定める天皇の国事に関する行為など児童に理解しやすい具体的な事項を取り上げ,歴史に関する学習との関連も図りながら,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること。また,イの「国民としての権利及び義務」については,参政権,納税の義務などを取り上げること。
(3) 内容の(3)については,次のとおり取り扱うものとする。
エ ア及びイについては,我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるよう配慮すること。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、2つ目(軍隊である自衛隊を肯定的に教化し、軍拡や海外派兵に批判的な児童生徒を育てないよう謀む)
現行中学校学習指導要領(08年3月告示)「第2章 各教科」「第2節 社会」、公民分野
(4)私たちと国際社会の諸課題
ア 世界平和と人類の福祉の増大
世界平和の実現と人類の福祉の増大のためには,国際協調の観点から,国家間の相互の主権の尊重と協力,各国民の相互理解と協力及び国際連合をはじめとする国際機構などの役割が大切であることを認識させ,国際社会における我が国の役割について考えさせる。その際,日本国憲法の平和主義について理解を深め,我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせるとともに,核兵器などの脅威に着目させ,戦争を防止し,世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育てる。また,地球環境,資源・エネルギー,貧困などの課題の解決のために経済的,技術的な協力などが大切であることを理解させる。
(ウ)「国家間の相互の主権の尊重と協力」との関連で,国旗及び国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀礼であることを理解させ,それらを尊重する態度を育てるよう配慮すること。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、3つ目(天皇への敬意を強制する"君が代"に疑問を持たず、進んで起立・斉唱する児童生徒の"大量生産"を謀む)
小中学校学習指導要領の特別活動〔学校行事〕の項は「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と明記してしまっている。
↓
これについて、小中学校の『学習指導要領解説』特別活動編は、「(児童・生徒に)日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てる《中略》ためには、国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てることは重要なことである」と記述している。
指導要領との対応を明示 (週刊金曜日)
永野厚男・教育ジャーナリスト
文部科学省が1月23日開催した、教科用図書検定調査審議会(検定審)の第3回総括部会で、教科書の「主要な内容」と学習指導要領(以下、指導要領)の「内容・項目」との対応までも、教科書上に明示させる"改善"策を出した。
文科省教科書課(望月禎(ただし)課長)が検定審に出した「教科書の改善について(論点整理)(案)」と題する文書は、
①教科書の主要な内容が指導要領の示す内容・項目とどう対応しているか教科書上に明示し、
②指導要領『解説』を「より踏まえ」教科書記述に適切に反映することが、「求められる」と明記(下線筆者)。
文科省は2014年1月、各出版社が検定申請した教科書に添付を求めている「編修趣意書」に、教科書の構成・内容(第1・2章など)と教育基本法第2条各号とを対照させるよう、教科書検定規則実施細則を改定し、「指導要領との対照表」の提出も義務化した。
今回の①は、それを教科書にも明示するよう求めたもの。
改定教育基本法に盛った"国を愛する態度"に加え、小学校6年や中学社会の指導要領が明記している「国歌尊重」「天皇への敬愛の念」「我が国の防衛、(自衛隊の)国際貢献」等で、一層政府の政策や見解に沿う記述を強制する意図が明白だ。
また、②の『解説』は、文科省が「大綱的基準として法的拘束力がある」とする指導要領とは異なり、参考資料に過ぎないのに、「より踏まえ」と強化。行き過ぎだ。
このため複数の傍聴者が閉会後、「①の追記により(指導要領を読んでいるわけではない)子どもたちが教科書を読む際、煩雑になる恐れ」などを質すと、
教科書課の担当者は「①は教師にとっては指導要領との関係がより分かり易くなる。また、文末を『求められる』と表現したのは、今回は検定基準の改正まではせず、出版社側に期待するということだ」と答えた。
今回の"改善"策は教科書の編集を一層、がんじ搦めにするものだ。
『週刊金曜日』(2017年2月10日号「金曜アンテナ」)
【参考資料】 (永野厚男)
第4段落の「小中学校学習指導要領の国家主義イデオロギー色の濃い記述」が、「小中学校のどの教科等に出ているか」は、以下の学習指導要領の記述の原文に、下線(アンダーライン)を引いたので、文科省の国家主義イデオロギーの実態をご覧下さい。
今回は小中学校の社会と特別活動の一部だけ引用しますが、総則や社会の歴史分野、道徳、高校の学習指導要領(『学習指導要領解説』を含む)にも、国家主義イデオロギー色の濃い記述があります。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、1つ目(天皇への敬意を持つ児童生徒を育てるよう謀む)
現行小学校学習指導要領(08年3月告示)「第2章 各教科」「第2節 社会」から
(2) 内容の(2)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア 政治の働きと国民生活との関係を具体的に指導する際には,各々の国民の祝日に関心をもち,その意義を考えさせるよう配慮すること。
イ 国会などの議会政治や選挙の意味,国会と内閣と裁判所の三権相互の関連,国民の司法参加,租税の役割などについても扱うようにすること。
ウ アの「地方公共団体や国の政治の働き」については,社会保障,災害復旧の取組,地域の開発などの中から選択して取り上げ,具体的に調べられるようにすること。
エ イの「天皇の地位」については,日本国憲法に定める天皇の国事に関する行為など児童に理解しやすい具体的な事項を取り上げ,歴史に関する学習との関連も図りながら,天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること。また,イの「国民としての権利及び義務」については,参政権,納税の義務などを取り上げること。
(3) 内容の(3)については,次のとおり取り扱うものとする。
エ ア及びイについては,我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるよう配慮すること。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、2つ目(軍隊である自衛隊を肯定的に教化し、軍拡や海外派兵に批判的な児童生徒を育てないよう謀む)
現行中学校学習指導要領(08年3月告示)「第2章 各教科」「第2節 社会」、公民分野
(4)私たちと国際社会の諸課題
ア 世界平和と人類の福祉の増大
世界平和の実現と人類の福祉の増大のためには,国際協調の観点から,国家間の相互の主権の尊重と協力,各国民の相互理解と協力及び国際連合をはじめとする国際機構などの役割が大切であることを認識させ,国際社会における我が国の役割について考えさせる。その際,日本国憲法の平和主義について理解を深め,我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせるとともに,核兵器などの脅威に着目させ,戦争を防止し,世界平和を確立するための熱意と協力の態度を育てる。また,地球環境,資源・エネルギー,貧困などの課題の解決のために経済的,技術的な協力などが大切であることを理解させる。
(ウ)「国家間の相互の主権の尊重と協力」との関連で,国旗及び国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀礼であることを理解させ,それらを尊重する態度を育てるよう配慮すること。
◇ 文科省の国家主義イデオロギー、3つ目(天皇への敬意を強制する"君が代"に疑問を持たず、進んで起立・斉唱する児童生徒の"大量生産"を謀む)
小中学校学習指導要領の特別活動〔学校行事〕の項は「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と明記してしまっている。
↓
これについて、小中学校の『学習指導要領解説』特別活動編は、「(児童・生徒に)日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てる《中略》ためには、国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てることは重要なことである」と記述している。
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