◆ 増田教諭の免職取り消し裁判、東京地裁が不当判決
平和教育を実践し、都教育委員会から不当にも分限免職された増田都子教諭が免職取り消しを求めた裁判(『週刊金曜日』「アンテナ欄」08年9月19日号、10月10日号、11月7日号参照)で、東京地裁(渡邉弘裁判長)は09年6月11日、請求を棄却する判決を出した。
千代田区立九段中学校の社会科教諭だった増田さんは、韓国の故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の05年3月1日の演説を教材にアジアとの友好・信頼の構築を考える授業を行い、生徒たちの意見と共に、侵略戦争を否定し正当化する古賀俊昭都議(自民)の都議会発言(04年10月26日)を「国際的には恥を晒す歴史認識」、扶桑社の歴史教科書記述を「歴史偽造」――と記述した、教材プリントを配布した。
これを知った古賀都議が、大江近(ちかし)都教委義務教育心身障害教育指導課長(当時)らを呼び付けたのを発端に、都教委が調査に入り、戒告処分・長期研修を強制したことについて、判決は「中学生は未発達の段階にあり、批判能力を十分に備えていない」とし、「(教材プリントは)特定の者を誹謗するものであり、公正・中立に行われるべき公教育への信頼を直接損ない、地方公務員法第33条違反だ」と、何一つ客観性ある論証なく決め付けた。
また、元生徒や当時の九段中校長は証人尋問で、増田さんの授業内容や勤務状況を高く評価する証言を行っているが、判決は一言も触れないまま、「教育公務員として必要な適格性を欠く」と断じ、免職を正当化した。
判決後の記者会見と報告集会で、和久田修弁護士は、(1)判決が増田さんの(前掲の)教育実践を一顧だにしない、(2)比例原則違反(猥褻に近いセクハラ行為を複数の女子児童に繰り返していた小学校副校長を都教委は近年、停職処分に留めた)――の2点を挙げ、「任命権者(教育委員会)の恣意的な裁量で実行できてしまう分限処分は、免職の場合、『特に厳密、慎重であることが要求される』との判例(1973年9月14日、最高裁)に違反する」と指摘した。
増田さんは、「渡邉裁判長は『批判=正当なもの』と『誹謗=不当なもの』の違いを理解できていない。判決文は都教委の代理人が書いたような内容。控訴する」と語った。
なお判決が、地方公務員法第39条2項、地方教育行政法第45条等を"根拠"に、長期研修強制を「都教委、区教委の合理的な裁量に委ねられており、違法性はない」としていることについて、浪本勝年・立正大教授は「(第22条で)教員の自主的な研修を規定する教育公務員特例法に、判決は言及していない」と、厳しく批判した。
ところで地方公務員法上、特定の行為をとらえ処分する懲戒処分に比し、分限処分は当局が「公務員不適格」と判断すれば下せるファジーなもの。6月13日の河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会の総会で、根津公子教諭は「5月初め、校門前に停職出勤していると、都教委人事部長(直原裕氏)がわざわざ見に来た。『信用失墜行為』に引っ掛けようとする等、確実に狙ってきているなと感じた」と、分限免職を謀む都教委の意図を語った。
永野厚男(教育ライター)
平和教育を実践し、都教育委員会から不当にも分限免職された増田都子教諭が免職取り消しを求めた裁判(『週刊金曜日』「アンテナ欄」08年9月19日号、10月10日号、11月7日号参照)で、東京地裁(渡邉弘裁判長)は09年6月11日、請求を棄却する判決を出した。
千代田区立九段中学校の社会科教諭だった増田さんは、韓国の故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の05年3月1日の演説を教材にアジアとの友好・信頼の構築を考える授業を行い、生徒たちの意見と共に、侵略戦争を否定し正当化する古賀俊昭都議(自民)の都議会発言(04年10月26日)を「国際的には恥を晒す歴史認識」、扶桑社の歴史教科書記述を「歴史偽造」――と記述した、教材プリントを配布した。
これを知った古賀都議が、大江近(ちかし)都教委義務教育心身障害教育指導課長(当時)らを呼び付けたのを発端に、都教委が調査に入り、戒告処分・長期研修を強制したことについて、判決は「中学生は未発達の段階にあり、批判能力を十分に備えていない」とし、「(教材プリントは)特定の者を誹謗するものであり、公正・中立に行われるべき公教育への信頼を直接損ない、地方公務員法第33条違反だ」と、何一つ客観性ある論証なく決め付けた。
また、元生徒や当時の九段中校長は証人尋問で、増田さんの授業内容や勤務状況を高く評価する証言を行っているが、判決は一言も触れないまま、「教育公務員として必要な適格性を欠く」と断じ、免職を正当化した。
判決後の記者会見と報告集会で、和久田修弁護士は、(1)判決が増田さんの(前掲の)教育実践を一顧だにしない、(2)比例原則違反(猥褻に近いセクハラ行為を複数の女子児童に繰り返していた小学校副校長を都教委は近年、停職処分に留めた)――の2点を挙げ、「任命権者(教育委員会)の恣意的な裁量で実行できてしまう分限処分は、免職の場合、『特に厳密、慎重であることが要求される』との判例(1973年9月14日、最高裁)に違反する」と指摘した。
増田さんは、「渡邉裁判長は『批判=正当なもの』と『誹謗=不当なもの』の違いを理解できていない。判決文は都教委の代理人が書いたような内容。控訴する」と語った。
なお判決が、地方公務員法第39条2項、地方教育行政法第45条等を"根拠"に、長期研修強制を「都教委、区教委の合理的な裁量に委ねられており、違法性はない」としていることについて、浪本勝年・立正大教授は「(第22条で)教員の自主的な研修を規定する教育公務員特例法に、判決は言及していない」と、厳しく批判した。
ところで地方公務員法上、特定の行為をとらえ処分する懲戒処分に比し、分限処分は当局が「公務員不適格」と判断すれば下せるファジーなもの。6月13日の河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会の総会で、根津公子教諭は「5月初め、校門前に停職出勤していると、都教委人事部長(直原裕氏)がわざわざ見に来た。『信用失墜行為』に引っ掛けようとする等、確実に狙ってきているなと感じた」と、分限免職を謀む都教委の意図を語った。
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