《尾形修一の紫陽花(あじさい)通信から》
◆ ワールドカップ16強、死刑があるのは日本だけ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/04/650b22bc66581516a9b567656e3a256c.png)
(世界の死刑状況地図。2010年段階。濃青が完全廃止、薄青が事実上の廃止国)
サッカーのワールドカップ・ロシア大会。1次リーグが終了して決勝トーナメントに進む16チームが決定した。日本代表は前評判がとても低くて、僕もテストマッチを見た感じではとても1次リーグ突破は難しいだろうと思っていた。しかし、第1試合のコロンビア戦に勝利するなど予想を上回る活躍で、H組を2位通過した。最後のポーランド戦終盤の「負けを受けいれて2位通過ねらい」の監督の戦術をどう思うか。いろんな考え方があると思うけど、それはまた別の機会に。
前回「死刑冤罪」の問題を書いたので、ここでは「16強で死刑存置国は日本だけである」ということを書いておきたいと思う。
サッカーと死刑制度に何か関係があるのか。いや、それは特に強い関係はないだろうけど、「世界の情勢」を知っておくべきだという意味ではそんな指摘も意味がないわけじゃないと思う。
H組最終戦、セネガルがコロンビアに最後に追いついていたとしたら…。その時は実は「16強、全部死刑廃止国」という記事を書こうかと思っていた。そう、アフリカのセネガルも、南アメリカのコロンビアも、もちろんポーランドも皆死刑廃止国。H組で死刑制度があるのはもともと日本だけだったのである。そういう現実を日本人は知っているか?
最後の戦術の評価はともかく、日本が決勝トーナメントに進出したことはすごい。
別にセネガル進出を望んでたわけではないけど、セネガルが死刑廃止国だということは知らない人が多いだろう。セネガルが1次リーグで敗退したことで、ずっと続いていたアフリカ代表の決勝トーナメント進出が絶えた。
いつからか調べると、1986年メキシコ大会で今のような16強を選ぶシステムになって以来、8大会すべてでアフリカ代表が一か国はあった。2020年日韓大会はセネガルが8強、2006,2010年大会はガーナ、2014年ブラジル大会はアルジェリアとナイジェリア。
世界では西ヨーロッパ各国が20世紀後半に続々と死刑制度を廃止し、EUに加盟するには死刑廃止が条件になっている。
1989年の東欧革命以後に旧ソ連圏諸国も死刑が廃止された。
ポーランド映画に故クシシュトフ・キェシロフスキ監督の「殺人に関する短いフィルム」(1988)という傑作があって、そこでは死刑制度があった。しかし1998年に廃止された。
最近東欧諸国では右派政権の国が多く、ポーランドでも死刑復活論議があるようだが実現はしないだろう。西ドイツやイタリアでは、第二次大戦後に戦争への反省で死刑制度が廃止になった。
ラテンアメリカ諸国では1970年代に過酷な軍政を経験した国が多い。
チリ、アルゼンチン、ブラジルなど民主化が進む中で死刑制度が廃止されていった。軍事裁判などでは死刑が残っている国(ブラジル、チリ、ペルー)などもあるが、「事実上の死刑廃止国」とみなされている。
アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、パナマ、コロンビアは完全な廃止国。
つまりサッカーの強いヨーロッパとラテンアメリカ諸国は死刑がないのが標準になっている。ヨーロッパで死刑があるのは、旧ソ連時代を引き継ぐ独特の政治体制を持つベラルーシだけ。
死刑が法律上は残されているが、10年以上死刑執行がなく、死刑を推進しない政策をとっていると考えられる国もある。それらの国も「事実上の死刑廃止国」とされる。
開催国のロシアはそのカテゴリーに入っている。韓国も同じ。モロッコ、チュニジア、それに今回は出場できなかったけど前回大会でハリルホジッチ監督が指揮して16強に入ったアルジェリアも事実上の廃止国になっている。イスラム教諸国の中でも、北アフリカでは死刑制度を凍結しつつある国もある。
こうしてみると、ワールドカップ出場国で死刑があるのは、日本、イラン、サウジアラビア、エジプト、ナイジェリアの5か国しかないのである。
それが世界の情勢で、このことは法務官僚なども知らないはずはないのだが、一向に世界からの抗議が聞こえないふりをしている。もっとも中国やインドなどが死刑存置国だから、世界の人口に占める割合が大きいかもしれない。
だけど、イスラム教諸国とアジアの強権的国家にしか死刑制度は残っていない。
日本のように重大犯罪発生率が低い国がどうして死刑を存置しているのか。世界は不思議に思っているが、要するに「アジアの強権的国家」だということだろう。「国家権力の峻厳さ」を示すために体制側が死刑を手放さないということだと思う。
そういう国では教育制度も国家主導で進み、自分で考える人間が抑圧される。
監督の指示で「犠牲バント」という作戦が存在する野球が人気があるのも、日本らしいのかもしれない。そう考えてくると、日本サッカーに創造力あふれるプレーが少ないのと、日本に死刑制度が存在することには通底するものがあるのかもしれない。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2018年06月29日)
https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/56a3100824ae45e74bda4d22263adccd
◆ ワールドカップ16強、死刑があるのは日本だけ!
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(世界の死刑状況地図。2010年段階。濃青が完全廃止、薄青が事実上の廃止国)
サッカーのワールドカップ・ロシア大会。1次リーグが終了して決勝トーナメントに進む16チームが決定した。日本代表は前評判がとても低くて、僕もテストマッチを見た感じではとても1次リーグ突破は難しいだろうと思っていた。しかし、第1試合のコロンビア戦に勝利するなど予想を上回る活躍で、H組を2位通過した。最後のポーランド戦終盤の「負けを受けいれて2位通過ねらい」の監督の戦術をどう思うか。いろんな考え方があると思うけど、それはまた別の機会に。
前回「死刑冤罪」の問題を書いたので、ここでは「16強で死刑存置国は日本だけである」ということを書いておきたいと思う。
サッカーと死刑制度に何か関係があるのか。いや、それは特に強い関係はないだろうけど、「世界の情勢」を知っておくべきだという意味ではそんな指摘も意味がないわけじゃないと思う。
H組最終戦、セネガルがコロンビアに最後に追いついていたとしたら…。その時は実は「16強、全部死刑廃止国」という記事を書こうかと思っていた。そう、アフリカのセネガルも、南アメリカのコロンビアも、もちろんポーランドも皆死刑廃止国。H組で死刑制度があるのはもともと日本だけだったのである。そういう現実を日本人は知っているか?
最後の戦術の評価はともかく、日本が決勝トーナメントに進出したことはすごい。
別にセネガル進出を望んでたわけではないけど、セネガルが死刑廃止国だということは知らない人が多いだろう。セネガルが1次リーグで敗退したことで、ずっと続いていたアフリカ代表の決勝トーナメント進出が絶えた。
いつからか調べると、1986年メキシコ大会で今のような16強を選ぶシステムになって以来、8大会すべてでアフリカ代表が一か国はあった。2020年日韓大会はセネガルが8強、2006,2010年大会はガーナ、2014年ブラジル大会はアルジェリアとナイジェリア。
世界では西ヨーロッパ各国が20世紀後半に続々と死刑制度を廃止し、EUに加盟するには死刑廃止が条件になっている。
1989年の東欧革命以後に旧ソ連圏諸国も死刑が廃止された。
ポーランド映画に故クシシュトフ・キェシロフスキ監督の「殺人に関する短いフィルム」(1988)という傑作があって、そこでは死刑制度があった。しかし1998年に廃止された。
最近東欧諸国では右派政権の国が多く、ポーランドでも死刑復活論議があるようだが実現はしないだろう。西ドイツやイタリアでは、第二次大戦後に戦争への反省で死刑制度が廃止になった。
ラテンアメリカ諸国では1970年代に過酷な軍政を経験した国が多い。
チリ、アルゼンチン、ブラジルなど民主化が進む中で死刑制度が廃止されていった。軍事裁判などでは死刑が残っている国(ブラジル、チリ、ペルー)などもあるが、「事実上の死刑廃止国」とみなされている。
アルゼンチン、コロンビア、メキシコ、パナマ、コロンビアは完全な廃止国。
つまりサッカーの強いヨーロッパとラテンアメリカ諸国は死刑がないのが標準になっている。ヨーロッパで死刑があるのは、旧ソ連時代を引き継ぐ独特の政治体制を持つベラルーシだけ。
死刑が法律上は残されているが、10年以上死刑執行がなく、死刑を推進しない政策をとっていると考えられる国もある。それらの国も「事実上の死刑廃止国」とされる。
開催国のロシアはそのカテゴリーに入っている。韓国も同じ。モロッコ、チュニジア、それに今回は出場できなかったけど前回大会でハリルホジッチ監督が指揮して16強に入ったアルジェリアも事実上の廃止国になっている。イスラム教諸国の中でも、北アフリカでは死刑制度を凍結しつつある国もある。
こうしてみると、ワールドカップ出場国で死刑があるのは、日本、イラン、サウジアラビア、エジプト、ナイジェリアの5か国しかないのである。
それが世界の情勢で、このことは法務官僚なども知らないはずはないのだが、一向に世界からの抗議が聞こえないふりをしている。もっとも中国やインドなどが死刑存置国だから、世界の人口に占める割合が大きいかもしれない。
だけど、イスラム教諸国とアジアの強権的国家にしか死刑制度は残っていない。
日本のように重大犯罪発生率が低い国がどうして死刑を存置しているのか。世界は不思議に思っているが、要するに「アジアの強権的国家」だということだろう。「国家権力の峻厳さ」を示すために体制側が死刑を手放さないということだと思う。
そういう国では教育制度も国家主導で進み、自分で考える人間が抑圧される。
監督の指示で「犠牲バント」という作戦が存在する野球が人気があるのも、日本らしいのかもしれない。そう考えてくると、日本サッカーに創造力あふれるプレーが少ないのと、日本に死刑制度が存在することには通底するものがあるのかもしれない。
『尾形修一の紫陽花(あじさい)通信』(2018年06月29日)
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