◇ 君が代命令 三たび合憲
「賛成」判事も強制慎重
東京都内の公立学校の式典で君が代斉唱時、教員に起立を求める校長の職務命令が「思想・良心の自由」を保障する憲法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は十四日、命令は合憲だとして、処分取り消しを求めた教員側の上告を棄却した。
これにより、最高裁の三つの小法廷で起立斉唱命令に対する合憲判断が出た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/1a/7f9129635dbaea88368bc5846fc3fb8f.jpg)
◆ 裁判長は反対
結論は四裁判官の多数意見。第一、第二小法廷と同様、命令は「思想・良心の自由」の間接的制約になり得るが、公務員の公共性などに照らし「制約を許す必要性、合理性はある」と結論づけた。
田原裁判長は起立と斉唱を分けて考えるべきだとし、「斉唱の強制は君が代に敬意を表したくないという内心の核心部分を侵害する可能性もあり、違憲かどうか審理を尽くすため二審に差し戻すのが相当」と反対意見を述べた。
◆ 原告の教員ら「残念な判決」
原告は現職と元職の中学教員計三人。二〇〇四年の卒業式と入学式で起立斉唱しなかったとして、都教委から戒告処分を受けた。
判決後の記者会見で、原告の山口洋子さん(61)は「憲法を守るのが裁判所の役割なのに残念な判決だ」、山下訓弘さん(56)は「教育現場は自分のことで精いっぱいで、こういう問題を話し合う場もない」と話した。
◆ 3つの判決 補足意見7人、反対2人
君が代の起立斉唱命令をめぐる最高裁の三つの判決では、三小法廷の計十四人の判事のうち、二人が反対意見を述べた。合憲の結論に賛成した十二人の判事からも、教育現場に「寛容さ」を求めるなど七人が補足意見を述べた。憲法が保障する精神的自由の重みを印象づけた。
強制されて起立斉唱することが、人間の「内心(思想・良心)」をどのくらい侵害するのか-。多数意見と反対意見を分けたのは、この点をめぐる判断の差だった。
多数意見は、君が代に敬意を示せない教員にとって起立強制が精神的苦痛になると認めた上で、儀礼的行為ととらえ、内心に与える影響を重くみなかった。
しかし、反対意見を述べた二人は、起立斉唱行為を内心の「核心」により近いものと位置付けた。
田原睦夫判事(弁護士出身)は「斉唱命令は内心の核心的部分を侵害しうる」と指摘、宮川光治判事(同)も「斉唱する行為は教員らの歴史観で譲れない一線を越える行動で、思想・良心の核心を動揺させる」と説明。ともに、やむを得ない強制と言えるかどうか厳格に審査すべきだとし、審理の差し戻しを訴えた。
一方、補足意見を述べた七人の多くが、命令に従わない教員の処分などに慎重さを求めた。「思想・良心の自由」が憲法上、厳しく守られる基本的人権である上、起立を強いる行政と反発する教員との対立が子どもに悪影響を与えるのを憂慮したからだ。
須藤正彦判事(弁護士出身)は「教育は、強制でなく自由闊達(かったつ)に行われるのが望ましい。強制や不利益処分は可能な限り謙抑的であるべきだ」とし、教育行政に「寛容の精神」での工夫、配慮を求めた。
ともに裁判官出身の千葉勝美、大谷剛彦両判事は、君が代斉唱は「自発的な敬愛」に基づいて行われるべきだと強調。金築誠志判事(裁判官出身)も教育環境が悪化し、生徒らに影響を及ぼす恐れを念頭に「すべての教育関係者の慎重、賢明な配慮が必要だ」とくぎを刺した。 (小嶋麻友美)
『東京新聞』(2011年6月15日 朝刊【社会】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011061502000032.html
「賛成」判事も強制慎重
東京都内の公立学校の式典で君が代斉唱時、教員に起立を求める校長の職務命令が「思想・良心の自由」を保障する憲法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は十四日、命令は合憲だとして、処分取り消しを求めた教員側の上告を棄却した。
これにより、最高裁の三つの小法廷で起立斉唱命令に対する合憲判断が出た。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/1a/7f9129635dbaea88368bc5846fc3fb8f.jpg)
◆ 裁判長は反対
結論は四裁判官の多数意見。第一、第二小法廷と同様、命令は「思想・良心の自由」の間接的制約になり得るが、公務員の公共性などに照らし「制約を許す必要性、合理性はある」と結論づけた。
田原裁判長は起立と斉唱を分けて考えるべきだとし、「斉唱の強制は君が代に敬意を表したくないという内心の核心部分を侵害する可能性もあり、違憲かどうか審理を尽くすため二審に差し戻すのが相当」と反対意見を述べた。
◆ 原告の教員ら「残念な判決」
原告は現職と元職の中学教員計三人。二〇〇四年の卒業式と入学式で起立斉唱しなかったとして、都教委から戒告処分を受けた。
判決後の記者会見で、原告の山口洋子さん(61)は「憲法を守るのが裁判所の役割なのに残念な判決だ」、山下訓弘さん(56)は「教育現場は自分のことで精いっぱいで、こういう問題を話し合う場もない」と話した。
◆ 3つの判決 補足意見7人、反対2人
君が代の起立斉唱命令をめぐる最高裁の三つの判決では、三小法廷の計十四人の判事のうち、二人が反対意見を述べた。合憲の結論に賛成した十二人の判事からも、教育現場に「寛容さ」を求めるなど七人が補足意見を述べた。憲法が保障する精神的自由の重みを印象づけた。
強制されて起立斉唱することが、人間の「内心(思想・良心)」をどのくらい侵害するのか-。多数意見と反対意見を分けたのは、この点をめぐる判断の差だった。
多数意見は、君が代に敬意を示せない教員にとって起立強制が精神的苦痛になると認めた上で、儀礼的行為ととらえ、内心に与える影響を重くみなかった。
しかし、反対意見を述べた二人は、起立斉唱行為を内心の「核心」により近いものと位置付けた。
田原睦夫判事(弁護士出身)は「斉唱命令は内心の核心的部分を侵害しうる」と指摘、宮川光治判事(同)も「斉唱する行為は教員らの歴史観で譲れない一線を越える行動で、思想・良心の核心を動揺させる」と説明。ともに、やむを得ない強制と言えるかどうか厳格に審査すべきだとし、審理の差し戻しを訴えた。
一方、補足意見を述べた七人の多くが、命令に従わない教員の処分などに慎重さを求めた。「思想・良心の自由」が憲法上、厳しく守られる基本的人権である上、起立を強いる行政と反発する教員との対立が子どもに悪影響を与えるのを憂慮したからだ。
須藤正彦判事(弁護士出身)は「教育は、強制でなく自由闊達(かったつ)に行われるのが望ましい。強制や不利益処分は可能な限り謙抑的であるべきだ」とし、教育行政に「寛容の精神」での工夫、配慮を求めた。
ともに裁判官出身の千葉勝美、大谷剛彦両判事は、君が代斉唱は「自発的な敬愛」に基づいて行われるべきだと強調。金築誠志判事(裁判官出身)も教育環境が悪化し、生徒らに影響を及ぼす恐れを念頭に「すべての教育関係者の慎重、賢明な配慮が必要だ」とくぎを刺した。 (小嶋麻友美)
『東京新聞』(2011年6月15日 朝刊【社会】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011061502000032.html
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