《ひのきみ通信 第198号から》
◆ 日教組全国教研(盛岡市)「平和教育分科会」報告
2月5日(金)~7日(日)の三日間、岩手県盛岡市で日教組第65次教育研究全国集会が実施された。千葉高教組の参加者は合計4名(教文部長・レポーター1・傍聴2)。約3500人が参加した初日の全体集会は、オープニングで地元岩手県教組と福島県教組から震災復興の特別報告が行われ、続いて加藤日教組委員長や連合会長・岩手県知事・岩手県教育長らの挨拶があった。
記念講演は、白井聡京都精華大学専任講師による「ネオリベ文化に抵抗する教育」というテーマでの講演だった。「ジョージ・カーリン(コメディアン)の指摘、政治家による社会問題の教育問題への責任転嫁」「教育の敵としての消費主義」「無知・無関心・無気力、愚かな消費者・従順な労働者を期待される新しい階級社会」など新しい視点の話で興味深かった。
午後は移動し、日本語教育分科会(佐野匠先生レポーター)に参加した。
2日目と3日目午前中は平和教育分科会に参加した。
平和教育分科会は、毎年マスコミの注目度が高く、産経新聞や右翼による攻撃があった。それに伴い、日教組本部と分科会参加者の間で「日の丸・君が代」問題に関する分科会運営をめぐり意見対立が起きた。結局、日教組本部は「個人や学校・組織を守るため」「教研なので運動論でなく実践報告しか認めない」という理由で攻撃されそうなテーマのレポート拒否や内容修正など厳しい規制をかけた。私も2010年山形開催の全国教研でレポートを拒否された。現在も唯一傍聴参加者の発言を許さない異例の分科会である。
被処分者や攻撃を受けた当事者からの悲痛な訴えを全国の仲間に知らせるレポート発表を認めない。だからこそ、平和教育に徹底的に取り組む仲間を守り支え、不当な攻撃に闘う日教組を取り戻したい一心で、組合員有志が2000年に「日の丸・君が代」問題全国交流集会(通称「自主教研」)を開催し今年まで連続実施している。
したがって私が注目するのは次の2点である。[1]「日の丸・君が代」問題など深刻な攻撃が進行する中での平和教育についてどう議論されるのか、[2]各県レポーターから日教組に運動提起を求める声はどうあがるか、である。今年の私の感想を報告したい。
第1に「日の丸・君が代」問題の議論は年々少なくなった。また、米軍や自衛隊基地問題や実教教科書問題・育鵬社教科書問題・原発問題・憲法問題など、まさに当該地域からの訴えも沖縄以外は少なかった。東京や大阪・広島・北海道など、現実に異常な攻撃を受けている。是非、その状況の生の報告や訴え・交流が聞きたかった。
第2に若手レポーターが確実に増え、長年参加し分科会の歴史や議論を知る「歴戦の勇者」が非常に少なかった。いずれも一生懸命取り組んだ実践報告で好感を持つが、その分レポートや議論が「入門編」になった感がある。今回感動した実践は、三重県教組の「6年生の子どもたちと『戦争の半世紀(1894年から1945年)』と『これから』を考える」、広島高教組の「被爆した先輩に出会う」、神奈川県教組の「若狭修学旅行で原発を学ぶ」の三本で、例年より少なかった。「若い教職員に平和教育の取り組みや蓄積をどう継承していくか」も急務のテーマで興味深い分科会となったが、もっと処分や攻撃の最前線で闘っている報告やその緊張感の取り組みを交流したかった。来年も是非学びに行きたい。
私が印象に残った発言やレポート内容は次のとおり。
○全国教研『要項』平和分科会の「予想される討議の柱」には、今年も「(1)憲法に立脚した思想・良心の自由を保障する教育内容をどう確立するか。」と書かれた。
○レポートに支部内の平和教育検討委員会で『日の丸・君が代の指導実践』資料集を作成と書かれ、簡単に説明。(北教組)
○「1998年「是正指導」以前は毎年全学年の生徒が3学期に『日の丸・君が代』学習を活発に行っていた。現在全て弾圧され、その中で平和教育に取り組んでいる」(広島高)
○「いま、辺野古ゲート前には早朝からこれまで以上に県民が結集し、強まる弾圧にも負けず、作業車両の基地への進入を実力で止めるために頑張っている。私たちも辺野古新基地建設阻止まで、決して諦めず頑張ります」
「広島の方も言っていたように今は戦時中とも言える世の中だが、日教組の旗を先頭に闘いましょう」(沖縄)
○「(地元)沖縄なので生徒に言いにくい状況もあるが、生徒が自分の思いを話せたり自信が持てるよう教育したい。動き始めた高校生もいる」(沖縄)
○「『政治的中立性』をたてに辺野古ゲート前に来ない人もいます。『中立性』で逃げてはいけない。どんどん発言しましょう」(沖縄)
○「私も産経新聞に『偏向教育』と書かれた。このような新聞の不当な批判に対して、日教組は組織的に反論して欲しい」(東京)
○「普通の人間を異常にしてしまうのが戦争。感想や意見を文字にし討論が大切」(石川)
○「組合の青年部長アンケートで『平和教育のイメージは?』の問いに『机上の空論』という答えがあった」(静岡県教組)
「空論ではない。大変な労力だが、原則やルールをもうけ現実にする努力ができるはず」(共同研究者)
○「県教研講師の三上智恵さんから『せっかく(修学旅行で)沖縄に来るのにどうして辺野古に来ないの?』と言われた」(5本の沖縄修学旅行報告いずれも訪問なし)(熊本)
○「若狭修学旅行の取り組みは、日本社会が原発の立地地域に何を背負わせてきたか、過疎化・産業の衰退・・・など地方の現実を考えてもらいたかった」(神奈川)
○「特攻隊員の遺書を教材化し実践したが、生徒の感想に『こういう男になりたい』というのもあった。『愛国美談』『殉死』となる危険に留意する必要がある」(長野)
○沖縄・広島・長崎・佐賀・大分・福岡・石川・熊本などでは、夏休み等の平和集会(登校日、学校全体の取り組み)を今も継続できている。
○「人は希望によってしか動かない。平和教育においても『充実感』『達成感』『希望』が必要です」(共同研究者)
○「広島で生徒と教員に平和教育アンケートを行った。確かに平和教育ができなくなって両者とも意識は低下したが、生徒の『知りたい』は90%以上」「平和教育は過去のことの学習も多いが、全て今日的問題につなげていかなければならない」(共同研究者)
○「国が嘘をつくと戦争が始まる」「(平和教育は)ないから作る、(平和が)好きだからできる」「自衛隊員の志望動機の第三位(30数%)は学校の紹介である。自衛隊への進路についてどう考えるか、議論してゆかなければならない」(共同研究者)
○「平和教育分科会15年間で一番充実した。うちとけた雰囲気で活発な議論ができた。産経新聞若しくは保護者の厳しい目の中でやり通せる平和教育の実力をつけて欲しい。私たち自身がどんな言葉や内容・方法で行うか高める必要がある」(共同研究者)
『ひのきみ通信 第198号』(2016年2月20日)
http://homepage3.nifty.com/hinokimi/html/16/198.htm
◆ 日教組全国教研(盛岡市)「平和教育分科会」報告
石井 泉(天羽高校分会)
2月5日(金)~7日(日)の三日間、岩手県盛岡市で日教組第65次教育研究全国集会が実施された。千葉高教組の参加者は合計4名(教文部長・レポーター1・傍聴2)。約3500人が参加した初日の全体集会は、オープニングで地元岩手県教組と福島県教組から震災復興の特別報告が行われ、続いて加藤日教組委員長や連合会長・岩手県知事・岩手県教育長らの挨拶があった。
記念講演は、白井聡京都精華大学専任講師による「ネオリベ文化に抵抗する教育」というテーマでの講演だった。「ジョージ・カーリン(コメディアン)の指摘、政治家による社会問題の教育問題への責任転嫁」「教育の敵としての消費主義」「無知・無関心・無気力、愚かな消費者・従順な労働者を期待される新しい階級社会」など新しい視点の話で興味深かった。
午後は移動し、日本語教育分科会(佐野匠先生レポーター)に参加した。
2日目と3日目午前中は平和教育分科会に参加した。
平和教育分科会は、毎年マスコミの注目度が高く、産経新聞や右翼による攻撃があった。それに伴い、日教組本部と分科会参加者の間で「日の丸・君が代」問題に関する分科会運営をめぐり意見対立が起きた。結局、日教組本部は「個人や学校・組織を守るため」「教研なので運動論でなく実践報告しか認めない」という理由で攻撃されそうなテーマのレポート拒否や内容修正など厳しい規制をかけた。私も2010年山形開催の全国教研でレポートを拒否された。現在も唯一傍聴参加者の発言を許さない異例の分科会である。
被処分者や攻撃を受けた当事者からの悲痛な訴えを全国の仲間に知らせるレポート発表を認めない。だからこそ、平和教育に徹底的に取り組む仲間を守り支え、不当な攻撃に闘う日教組を取り戻したい一心で、組合員有志が2000年に「日の丸・君が代」問題全国交流集会(通称「自主教研」)を開催し今年まで連続実施している。
したがって私が注目するのは次の2点である。[1]「日の丸・君が代」問題など深刻な攻撃が進行する中での平和教育についてどう議論されるのか、[2]各県レポーターから日教組に運動提起を求める声はどうあがるか、である。今年の私の感想を報告したい。
第1に「日の丸・君が代」問題の議論は年々少なくなった。また、米軍や自衛隊基地問題や実教教科書問題・育鵬社教科書問題・原発問題・憲法問題など、まさに当該地域からの訴えも沖縄以外は少なかった。東京や大阪・広島・北海道など、現実に異常な攻撃を受けている。是非、その状況の生の報告や訴え・交流が聞きたかった。
第2に若手レポーターが確実に増え、長年参加し分科会の歴史や議論を知る「歴戦の勇者」が非常に少なかった。いずれも一生懸命取り組んだ実践報告で好感を持つが、その分レポートや議論が「入門編」になった感がある。今回感動した実践は、三重県教組の「6年生の子どもたちと『戦争の半世紀(1894年から1945年)』と『これから』を考える」、広島高教組の「被爆した先輩に出会う」、神奈川県教組の「若狭修学旅行で原発を学ぶ」の三本で、例年より少なかった。「若い教職員に平和教育の取り組みや蓄積をどう継承していくか」も急務のテーマで興味深い分科会となったが、もっと処分や攻撃の最前線で闘っている報告やその緊張感の取り組みを交流したかった。来年も是非学びに行きたい。
私が印象に残った発言やレポート内容は次のとおり。
○全国教研『要項』平和分科会の「予想される討議の柱」には、今年も「(1)憲法に立脚した思想・良心の自由を保障する教育内容をどう確立するか。」と書かれた。
○レポートに支部内の平和教育検討委員会で『日の丸・君が代の指導実践』資料集を作成と書かれ、簡単に説明。(北教組)
○「1998年「是正指導」以前は毎年全学年の生徒が3学期に『日の丸・君が代』学習を活発に行っていた。現在全て弾圧され、その中で平和教育に取り組んでいる」(広島高)
○「いま、辺野古ゲート前には早朝からこれまで以上に県民が結集し、強まる弾圧にも負けず、作業車両の基地への進入を実力で止めるために頑張っている。私たちも辺野古新基地建設阻止まで、決して諦めず頑張ります」
「広島の方も言っていたように今は戦時中とも言える世の中だが、日教組の旗を先頭に闘いましょう」(沖縄)
○「(地元)沖縄なので生徒に言いにくい状況もあるが、生徒が自分の思いを話せたり自信が持てるよう教育したい。動き始めた高校生もいる」(沖縄)
○「『政治的中立性』をたてに辺野古ゲート前に来ない人もいます。『中立性』で逃げてはいけない。どんどん発言しましょう」(沖縄)
○「私も産経新聞に『偏向教育』と書かれた。このような新聞の不当な批判に対して、日教組は組織的に反論して欲しい」(東京)
○「普通の人間を異常にしてしまうのが戦争。感想や意見を文字にし討論が大切」(石川)
○「組合の青年部長アンケートで『平和教育のイメージは?』の問いに『机上の空論』という答えがあった」(静岡県教組)
「空論ではない。大変な労力だが、原則やルールをもうけ現実にする努力ができるはず」(共同研究者)
○「県教研講師の三上智恵さんから『せっかく(修学旅行で)沖縄に来るのにどうして辺野古に来ないの?』と言われた」(5本の沖縄修学旅行報告いずれも訪問なし)(熊本)
○「若狭修学旅行の取り組みは、日本社会が原発の立地地域に何を背負わせてきたか、過疎化・産業の衰退・・・など地方の現実を考えてもらいたかった」(神奈川)
○「特攻隊員の遺書を教材化し実践したが、生徒の感想に『こういう男になりたい』というのもあった。『愛国美談』『殉死』となる危険に留意する必要がある」(長野)
○沖縄・広島・長崎・佐賀・大分・福岡・石川・熊本などでは、夏休み等の平和集会(登校日、学校全体の取り組み)を今も継続できている。
○「人は希望によってしか動かない。平和教育においても『充実感』『達成感』『希望』が必要です」(共同研究者)
○「広島で生徒と教員に平和教育アンケートを行った。確かに平和教育ができなくなって両者とも意識は低下したが、生徒の『知りたい』は90%以上」「平和教育は過去のことの学習も多いが、全て今日的問題につなげていかなければならない」(共同研究者)
○「国が嘘をつくと戦争が始まる」「(平和教育は)ないから作る、(平和が)好きだからできる」「自衛隊員の志望動機の第三位(30数%)は学校の紹介である。自衛隊への進路についてどう考えるか、議論してゆかなければならない」(共同研究者)
○「平和教育分科会15年間で一番充実した。うちとけた雰囲気で活発な議論ができた。産経新聞若しくは保護者の厳しい目の中でやり通せる平和教育の実力をつけて欲しい。私たち自身がどんな言葉や内容・方法で行うか高める必要がある」(共同研究者)
『ひのきみ通信 第198号』(2016年2月20日)
http://homepage3.nifty.com/hinokimi/html/16/198.htm
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます