《東京「君が代」裁判第3次訴訟 第5回口頭弁論(2011/6/20)意見陳述要旨》<2>
◎ 正当な権力作用の外観を有する精神的自由の侵害
第1 答弁書第6(学校教育法42条違反の主張について)に対する反論
被告は、10・23通達及びそれに続く一連の指導は、国旗・国歌適正な指導のためのものであり、学校教育法42条に反しないと主張しています
しかし、この被告の主張は、生徒の学習権を保障しようとした学校教育法42条の趣旨を没却する不当なものです。
すなわち、10・23通達及びそれに続く一連の指導は、卒業式等においてすべての教職員に対し一律画一的に国旗に向かって正対起立し国歌を斉唱することを強行するよう各校長に求めるものであり、そのことを通して、各教師に対し「国旗掲揚・国歌斉唱」への一面的な指導教育を生徒に行うことを強制するものにほかならず、これが、生徒の学習権を直接的に侵害し、学校教育法42条に違反することは明らかです。
第2 答弁書第8の1(原告らの地方公務員法32条に関する主張について)に対する反論
1 教師の教授の自由と校長の職務命令について
この点まず、被告は、校長が校務の一貫として各教職員に職務命令を発すれば、個々の教職員は当然に当該命令に従って職務を遂行しなければならないと主張しています。
しかし、このような理解は「教師が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではない。」と述べた旭川学テ最高裁判決の論旨に反する不当なものです。
すなわち、本件職務命令は、国民間でなおその是非を巡って争いのある「国旗・国歌」の指導教育に関し、学校教育における最重要な教育場面の一つである卒業式等において、教師に対し国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを一律に強要するものであり、教師の教授の自由を完全に否定し、先程述べた旭川学テ判決の論旨に抵触する行為といえます。
2 10・23通達と校長の発した本件職務命令との不可分性
また被告は、10・23通達と本件職務命令との関係につき、前者が違法であっても、後者までが当然に違法になるものではないと主張しています。
しかし、前者が違法であれば後者も当然に違法になることは、10・23通達が各校長に対して本件職務命令の発令を強制するものであることに照らし、明らかです。
3 違法な職務命令と職員の服従義務
さらに被告は、校長の職務命令に仮に何らかの瑕疵があっても、その違法は重大明白なものではないとし、当該職務命令に対する職員の服従義務を肯定しています。
しかし、現行憲法が憲法の最高法規性を謳い(第97条)、公務員に憲法尊重擁護義務を課す(第99条)など、公権力の恣意的行使に対する憲法的統制の徹底を図っていることに鑑みますと、職員の負っている法令遵守義務と服従義務とが抵触する場合には、前者の義務が後者のそれに優先するのが当然の帰結というべきであり、校長の職務命令が違法な場合には、職員は当該命令には服従義務を負わないと解されなければなりません。
第3 答弁書第8の2(原告らの地方公務員法33条(信用失墜行為)の主張について)に対する反論
地方公務員法33条に該当する「行為」とは、例えば、酒のうえで大喧嘩したとか、デモに参加して警察官と乱闘騒ぎを演じたなど、世間のひんしゅくを買うような行為を指しますが、
原告らは、決してそのような「世間のひんしゅくを買う行為」をしたわけではありません。
新聞等の世論調査の結果をみても、学校の卒業式等において起立斉唱を「強制」することには反対の考えのほうが国民の間でも多いのです。
したがいまして、原告らの本件不起立等は地公法33条に該当するものではなく、同条違反を理由とする本件懲戒処分は違法です。
第4 答弁書第8の3(本件の手続的違法について)に対する反論
被告は、公務員の懲戒処分については、憲法31条は適用されず、また、行政手続法が公務員の処分に関し同法の「聴聞」等の規定を適用除外としていること等から、公務員の懲戒処分手続は任命権者の裁量に委ねられていると主張しています。
しかし、公務員の懲戒処分を含む行政手続に関して憲法31条の保障が及ぶ場合があることは成田空港事件に関する最高裁判決により明言されているところです。
また、行政手続法が公務員の処分につき適用除外規定を置いたのも、公務員の処分に関し事前及び事後手続の統一的な整備が必要とされたことによるにすぎず、同法も憲法31条の要請を受け、公務員の処分手続の整備・拡充を要請しているのです。
そして、懲戒処分がときに免職等の重大な不利益を公務員に与えることを考慮すれば、事前手続として、聴聞の機会を与えることが憲法上要請されていると解すべきです。
本件処分にあたり、教職員に対する事実確認がほとんどなされていないことなどに鑑みますと、憲法の要請を充たすような弁解防御の機会が教職員に与えられていたとはいえません。したがいまして、本件処分は憲法31条の要請に反する違憲違法なものであり、取り消されなければなりません。
第5 答弁書第8の4(行政の裁量との関係について)に対する反論・追加主張
1 はじめに
これまで述べてきたように、本件各懲戒処分は違法なものですが、仮に、原告の行為がいわゆる「非違行為」にあたるとしても、①処分目的の逸脱、②比例原則違反、③裁量判断の方法ないし過程の過誤、④最高裁判例の判断枠組みからの逸脱という4点から、本件各懲戒処分は、懲戒権の逸脱・濫用にあたる違法なものです。
2 処分目的の逸脱
公務員法上の懲戒処分の権限は公務員秩序の維持に必要な限りで認められるものですが、被告が10・23通達の発出と懲戒処分の濫発をもって、都立の全校に強制したものは、国家主義的価値観に基づく国旗・国歌への敬意の表明であり、本件懲戒処分は特定の価値観をもって、教育を支配し統制しようという、教育部門における公務員秩序の維持とは無縁の目的をもってなされたものですので、懲戒権の逸脱・濫用にあたり違法です。
3 比例原則違反
懲戒処分を科するには、非違行為の重大性と、処分がもつ制裁としての不利益性の程度との権衡が必要ですが、本件各処分は著しくその均衡を失するものとして裁量権の逸脱・濫用にあたり違法です。
すなわち、10・23通達に基づいて各校長に強制された本件各職務命令は違憲違法なものであり、その職務命令違反を非違性重大と評価することはできない。とりわけ、教育者としての真摯な動機からの命令への不服従については、非違性の程度は極めて軽度というべきである。
他方で、制裁措置としての懲戒処分の不利益の程度は極めて重い。
まず、憲法上の思想・良心の保護を剥奪されたこと自体の不利益が甚大です。
また、原告らは、自己の信条の貫徹か放棄か、懲戒の甘受か回避かという葛藤を余儀なくされており、そのことによる精神的苦痛も極めて大きい。
さらに、原告らの受ける経済的な不利益も極めて大きい。すなわち、1回の戒告処分がもたらすものは、勤勉手当のカットのみでなく、実質的に6か月の昇給延伸をもたらすものであり、この措置の影響は生涯ついて回ることになります。のみならず、たった1回の戒告処分が定年後の再雇用や再採用拒否事由とされています。
以上述べたところから、本件懲戒処分が比例原則に違反していることは明らかです。
4 裁量判断の方法ないし過程の過誤
裁量権の行使に当たり、①本来最も重視すべきことがらを不当・安易に軽視し、②また、本来過大に評価すべきでないことがらを過重に評価するなど、裁量判断の方法ないし過程に過誤があるときには、当該裁量権の行使は違法との評価を免れないものです。
この判断基準を本件に当て嵌めてみれば、
被告(都教委)の判断は、
①生徒や教職員の精神・信仰の自由を尊重し、
②教育に対する不当な支配を抑制することによって生徒の教育を受ける権利を擁護するという、
本来最も重視すべきことがらを不当かつ安易に軽視し、
他方で、
①知事や一部の都議などの意向という本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れ、
②かつ、卒業式の進行が妨害される抽象的可能性という、
本来過大に評価すべきでないことがらを過重に評価しており、
その裁量判断の方法ないし過程に過誤があるものとして、違法なものと認めざるをえません。
5 最高裁判例の判断枠組みからの逸脱
(1)本件各懲戒処分には、エホバの証人剣道実技拒否事件最高裁判決に照らして、憲法解釈における判断枠組みの設定に大きな逸脱がある。
すなわち、エホバの証人剣道実技拒否事件最高裁判決は、、
① 処分事由とされた履修拒否が「信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由から」されたものであること
② 被処分者が「他の体育種目の履修は拒否していない」こと
③ 被処分者が「他の科目では成績優秀」であること
④ 当該処分が「同人に重大な不利益を及ぼし」ていること
⑤ 当該処分が「これを避けるためにはその信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせる」ものであること
⑥ 被処分者が拒否した剣道履修には「代替措置が可能」であること」
を摘示した上で、、
「これら6点を総合して対象処分を「社会観念上著しく妥当を欠く」ものと判断していいます。
この手法を本件に当て嵌めれば、
① 処分事由とされた職務命令違反が「思想や良心の核心部分と密接に関連する真しな理由から」されたものであること
② 被処分者が「他の卒業式等における職務は拒否していない」こと
③ 被処分者が「本件職務命令違反を除けば職務態度に問題がない」こと
④ 当該処分が「同人に重大な不利益を及ぼし」ていること
⑤ 当該処分が「本件懲戒を避けるためには、その思想や良心に反する行動を採ることを余儀なくさせる」ものであること
⑥ 被処分者が違反した職務命令は「卒業式に不可欠ではない」こと
が摘示できるのであり、
以上6点を総合的に考慮すれば、本件各懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべきです。
(2)なお、被告は、生徒と教諭との地位の違い等を指摘し、不適切な判例引用であると主張しています。。
しかし、生徒に対する信仰の自由を侵害する剣道実技受講の強制と、教員に対する「日の丸・君が代」強制は、ともに正当な権力作用の外観を有する精神的自由の侵害にほかならない。その外観の抽象的適法性を暴き、その具体的な行使態様において処分権の濫用とする際の判断枠組みには、なんの選ぶところもないから、被告の立論には理由がない。
第6 結語
以上のとおり、本来本件各処分については、違憲・違法の判断がなされるべきであるが、少なくとも裁量権の逸脱・濫用として違法であり、請求の趣旨のとおりに、処分取り消し、国家賠償請求が認容されるべきである。
◎ 正当な権力作用の外観を有する精神的自由の侵害
第1 答弁書第6(学校教育法42条違反の主張について)に対する反論
被告は、10・23通達及びそれに続く一連の指導は、国旗・国歌適正な指導のためのものであり、学校教育法42条に反しないと主張しています
しかし、この被告の主張は、生徒の学習権を保障しようとした学校教育法42条の趣旨を没却する不当なものです。
すなわち、10・23通達及びそれに続く一連の指導は、卒業式等においてすべての教職員に対し一律画一的に国旗に向かって正対起立し国歌を斉唱することを強行するよう各校長に求めるものであり、そのことを通して、各教師に対し「国旗掲揚・国歌斉唱」への一面的な指導教育を生徒に行うことを強制するものにほかならず、これが、生徒の学習権を直接的に侵害し、学校教育法42条に違反することは明らかです。
第2 答弁書第8の1(原告らの地方公務員法32条に関する主張について)に対する反論
1 教師の教授の自由と校長の職務命令について
この点まず、被告は、校長が校務の一貫として各教職員に職務命令を発すれば、個々の教職員は当然に当該命令に従って職務を遂行しなければならないと主張しています。
しかし、このような理解は「教師が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において、一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではない。」と述べた旭川学テ最高裁判決の論旨に反する不当なものです。
すなわち、本件職務命令は、国民間でなおその是非を巡って争いのある「国旗・国歌」の指導教育に関し、学校教育における最重要な教育場面の一つである卒業式等において、教師に対し国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを一律に強要するものであり、教師の教授の自由を完全に否定し、先程述べた旭川学テ判決の論旨に抵触する行為といえます。
2 10・23通達と校長の発した本件職務命令との不可分性
また被告は、10・23通達と本件職務命令との関係につき、前者が違法であっても、後者までが当然に違法になるものではないと主張しています。
しかし、前者が違法であれば後者も当然に違法になることは、10・23通達が各校長に対して本件職務命令の発令を強制するものであることに照らし、明らかです。
3 違法な職務命令と職員の服従義務
さらに被告は、校長の職務命令に仮に何らかの瑕疵があっても、その違法は重大明白なものではないとし、当該職務命令に対する職員の服従義務を肯定しています。
しかし、現行憲法が憲法の最高法規性を謳い(第97条)、公務員に憲法尊重擁護義務を課す(第99条)など、公権力の恣意的行使に対する憲法的統制の徹底を図っていることに鑑みますと、職員の負っている法令遵守義務と服従義務とが抵触する場合には、前者の義務が後者のそれに優先するのが当然の帰結というべきであり、校長の職務命令が違法な場合には、職員は当該命令には服従義務を負わないと解されなければなりません。
第3 答弁書第8の2(原告らの地方公務員法33条(信用失墜行為)の主張について)に対する反論
地方公務員法33条に該当する「行為」とは、例えば、酒のうえで大喧嘩したとか、デモに参加して警察官と乱闘騒ぎを演じたなど、世間のひんしゅくを買うような行為を指しますが、
原告らは、決してそのような「世間のひんしゅくを買う行為」をしたわけではありません。
新聞等の世論調査の結果をみても、学校の卒業式等において起立斉唱を「強制」することには反対の考えのほうが国民の間でも多いのです。
したがいまして、原告らの本件不起立等は地公法33条に該当するものではなく、同条違反を理由とする本件懲戒処分は違法です。
第4 答弁書第8の3(本件の手続的違法について)に対する反論
被告は、公務員の懲戒処分については、憲法31条は適用されず、また、行政手続法が公務員の処分に関し同法の「聴聞」等の規定を適用除外としていること等から、公務員の懲戒処分手続は任命権者の裁量に委ねられていると主張しています。
しかし、公務員の懲戒処分を含む行政手続に関して憲法31条の保障が及ぶ場合があることは成田空港事件に関する最高裁判決により明言されているところです。
また、行政手続法が公務員の処分につき適用除外規定を置いたのも、公務員の処分に関し事前及び事後手続の統一的な整備が必要とされたことによるにすぎず、同法も憲法31条の要請を受け、公務員の処分手続の整備・拡充を要請しているのです。
そして、懲戒処分がときに免職等の重大な不利益を公務員に与えることを考慮すれば、事前手続として、聴聞の機会を与えることが憲法上要請されていると解すべきです。
本件処分にあたり、教職員に対する事実確認がほとんどなされていないことなどに鑑みますと、憲法の要請を充たすような弁解防御の機会が教職員に与えられていたとはいえません。したがいまして、本件処分は憲法31条の要請に反する違憲違法なものであり、取り消されなければなりません。
第5 答弁書第8の4(行政の裁量との関係について)に対する反論・追加主張
1 はじめに
これまで述べてきたように、本件各懲戒処分は違法なものですが、仮に、原告の行為がいわゆる「非違行為」にあたるとしても、①処分目的の逸脱、②比例原則違反、③裁量判断の方法ないし過程の過誤、④最高裁判例の判断枠組みからの逸脱という4点から、本件各懲戒処分は、懲戒権の逸脱・濫用にあたる違法なものです。
2 処分目的の逸脱
公務員法上の懲戒処分の権限は公務員秩序の維持に必要な限りで認められるものですが、被告が10・23通達の発出と懲戒処分の濫発をもって、都立の全校に強制したものは、国家主義的価値観に基づく国旗・国歌への敬意の表明であり、本件懲戒処分は特定の価値観をもって、教育を支配し統制しようという、教育部門における公務員秩序の維持とは無縁の目的をもってなされたものですので、懲戒権の逸脱・濫用にあたり違法です。
3 比例原則違反
懲戒処分を科するには、非違行為の重大性と、処分がもつ制裁としての不利益性の程度との権衡が必要ですが、本件各処分は著しくその均衡を失するものとして裁量権の逸脱・濫用にあたり違法です。
すなわち、10・23通達に基づいて各校長に強制された本件各職務命令は違憲違法なものであり、その職務命令違反を非違性重大と評価することはできない。とりわけ、教育者としての真摯な動機からの命令への不服従については、非違性の程度は極めて軽度というべきである。
他方で、制裁措置としての懲戒処分の不利益の程度は極めて重い。
まず、憲法上の思想・良心の保護を剥奪されたこと自体の不利益が甚大です。
また、原告らは、自己の信条の貫徹か放棄か、懲戒の甘受か回避かという葛藤を余儀なくされており、そのことによる精神的苦痛も極めて大きい。
さらに、原告らの受ける経済的な不利益も極めて大きい。すなわち、1回の戒告処分がもたらすものは、勤勉手当のカットのみでなく、実質的に6か月の昇給延伸をもたらすものであり、この措置の影響は生涯ついて回ることになります。のみならず、たった1回の戒告処分が定年後の再雇用や再採用拒否事由とされています。
以上述べたところから、本件懲戒処分が比例原則に違反していることは明らかです。
4 裁量判断の方法ないし過程の過誤
裁量権の行使に当たり、①本来最も重視すべきことがらを不当・安易に軽視し、②また、本来過大に評価すべきでないことがらを過重に評価するなど、裁量判断の方法ないし過程に過誤があるときには、当該裁量権の行使は違法との評価を免れないものです。
この判断基準を本件に当て嵌めてみれば、
被告(都教委)の判断は、
①生徒や教職員の精神・信仰の自由を尊重し、
②教育に対する不当な支配を抑制することによって生徒の教育を受ける権利を擁護するという、
本来最も重視すべきことがらを不当かつ安易に軽視し、
他方で、
①知事や一部の都議などの意向という本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れ、
②かつ、卒業式の進行が妨害される抽象的可能性という、
本来過大に評価すべきでないことがらを過重に評価しており、
その裁量判断の方法ないし過程に過誤があるものとして、違法なものと認めざるをえません。
5 最高裁判例の判断枠組みからの逸脱
(1)本件各懲戒処分には、エホバの証人剣道実技拒否事件最高裁判決に照らして、憲法解釈における判断枠組みの設定に大きな逸脱がある。
すなわち、エホバの証人剣道実技拒否事件最高裁判決は、、
① 処分事由とされた履修拒否が「信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由から」されたものであること
② 被処分者が「他の体育種目の履修は拒否していない」こと
③ 被処分者が「他の科目では成績優秀」であること
④ 当該処分が「同人に重大な不利益を及ぼし」ていること
⑤ 当該処分が「これを避けるためにはその信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせる」ものであること
⑥ 被処分者が拒否した剣道履修には「代替措置が可能」であること」
を摘示した上で、、
「これら6点を総合して対象処分を「社会観念上著しく妥当を欠く」ものと判断していいます。
この手法を本件に当て嵌めれば、
① 処分事由とされた職務命令違反が「思想や良心の核心部分と密接に関連する真しな理由から」されたものであること
② 被処分者が「他の卒業式等における職務は拒否していない」こと
③ 被処分者が「本件職務命令違反を除けば職務態度に問題がない」こと
④ 当該処分が「同人に重大な不利益を及ぼし」ていること
⑤ 当該処分が「本件懲戒を避けるためには、その思想や良心に反する行動を採ることを余儀なくさせる」ものであること
⑥ 被処分者が違反した職務命令は「卒業式に不可欠ではない」こと
が摘示できるのであり、
以上6点を総合的に考慮すれば、本件各懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものというべきです。
(2)なお、被告は、生徒と教諭との地位の違い等を指摘し、不適切な判例引用であると主張しています。。
しかし、生徒に対する信仰の自由を侵害する剣道実技受講の強制と、教員に対する「日の丸・君が代」強制は、ともに正当な権力作用の外観を有する精神的自由の侵害にほかならない。その外観の抽象的適法性を暴き、その具体的な行使態様において処分権の濫用とする際の判断枠組みには、なんの選ぶところもないから、被告の立論には理由がない。
第6 結語
以上のとおり、本来本件各処分については、違憲・違法の判断がなされるべきであるが、少なくとも裁量権の逸脱・濫用として違法であり、請求の趣旨のとおりに、処分取り消し、国家賠償請求が認容されるべきである。
以上
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