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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京「君が代」裁判5次訴訟にかける原告の思い

2021年05月02日 | 日の丸・君が代関連ニュース
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 東京「君が代」裁判3月31日“ついに”第5次訴訟を提訴
   ~私はなぜ闘い続けるのか

大能清子(おおのきよこ 東京「君が代」裁判五次訴訟原告)

 ◆ 3月31日、五次訴訟を提訴

 2021年3月31日、私たちは東京「君が代」裁判五次訴訟を提訴しました。
 五次訴訟は2019年3月に最高裁決定が出された四次訴訟(2010~13年処分)に続く裁判で、原告団は人事委員会に不服審査請求をしてきた下記の二つの性質の違うグループで構成されています。不起立をする人が年々減っていく中、少しでも原告団を大きくし力を集めて裁判を闘おうとの思いからです。
 a 卒・入学式グループ。2014~17年の卒業式・入学式に係わって処分された10件5名。
 b 再処分グループ。二次~四次訴訟で勝訴し減給処分を取消されたものの、改めて戒告処分を受けた16件12名。
 複数回の処分を受けたり両方に該当する人もいるため、原告数は合計より少ない15名です。
 ◆ 初めて法廷で争う再処分問題

 「再処分」は初めて裁判で争う案件なので、人事委員会で職員課長の尋問を行い、材料としたいと考えてきました。ところが、人事委員会は職員がコロナ対応での他部署への応援や、テレワークを理由に動かず。人事委員会への要請を重ね、丸1年間が経ちました。
 もう一つ、微妙な問題がありました。四次訴訟の最高裁決定によって、4回目と5回目の不起立に対する減給処分の取消しが確定した、田中聡史さんに対する再処分の件です。“再処分の発令を待つ”つもりは毛頭ないものの、処分が避けられないのであれば一緒に闘いたい……。
 なんとも分裂した思いを抱えて、この2年を過ごしたものです。
 この間、処分に向けた事情聴取に3度の呼び出しがあり、弁護士の立ち合いを求める田中さんとの綱引きの状態が続きました。
 それが、2020年12月25日、都教委は事情聴取を割愛して勤務校に押しかけ、いきなり2件の戒告処分を言い渡したのです。これでついに“役者”は揃っだのです。
 ◆ 再任用打切りの事前通告
   任命権者の裁量権は海よりも広いのか


 一方、私たちには時間がありません。それは、原告の川村佐和さんと私が、定年3年前の卒業式での不起立を理由に、年金支給開始年齢に達したら再任用を打ち切ると事前通告されているからです。私はあと3年、川村さんに残された時間はあと1年に迫っています。
 これは、これまでの裁判で争われなかった問題です。類似の案件に再雇用拒否裁判がありますが、それは再雇用を申し込んだ被処分者が不合格にされた件でした。しかし、私たちは、申し込み以前に数年後の再任用の打切りを通告されたのです。
 高齢期の生活権や生きがいと係わる労働権の問題もありますが、ここには以下のようにいくつもの疑問があります。
a.校長への1通のメールで、しかも読み上げるだけで、一片の文書もない
b.実質的には解雇であるにも関わらず、処分と違い決定プロセスや根拠規定が不明
c.再任用は単年度の申込み・任用なのに、3年も4年も前から雇止めを決めて通告するのは、願書も出せない小学6年生を、未来の高校入試で不合格にするようなもの。
d.クビにしなければならないほど「資質と能力に欠ける」と言いながら数年間は雇う矛盾(私の場合は、主任を続けさせられ、再任用打切りの事前告知を受けた2019年度の業績評価は「A」)。
 広報統計課を通じて都教委に質問して得た根拠は、「定年退職前の懲戒処分を含め、従前の勤務実績等に基づく能力実証を経た上で採用します」と断った上で、「地方公務員法第28条の4」でした。
 しかし、その条文は「任命権者は、当該地方公共団体の定年退職者等を、従前の勤務実績等に基づく選考により、一年を超えない範囲内で任期を定め、常時勤務を要する職に採用することができる」というものです。
 「採用できる」という条文を「任用しない」と読み替え、単年度毎に申し込みを受けて審査をして合否を決定すると都教委自らが定めた再任用制度にも反する運用をするという無理が通るのなら、どのような法令も規定もあってなきが如しです。
 こうした状況の下、「卒・入学式グループの裁判を先行させるか」「課長尋問を断念するか」、悩ましい議論の末、私たちは3月末をタイムリミットとして合同で提訴することを決めました。
 ◆ 五次訴訟の特徴~五次訴訟に賭ける願い

 ①人数は少ないが、複数回処分された人が多い
 今回の裁判で6~10回目の不起立による減給処分の取消しを求める田中さんは、「私の思想は同じ一つのものであり、何度命令されても同じ答えしかできない」と言います。不起立が闘争戦術ならば、情勢によっては“一旦引ぐことができます。しかし、思想良心を変えることは困難です。
 通達後程なく定年を迎えた団塊の世代は、長く職務命令体制にさらされることはありませんでしたが、下の世代の教員は、何度も処分されるか、強制に服するかの二者択一を迫られているのです。
 ②一度は屈した人が少なくない
 その結果、一度は不起立をしたものの、戒告処分を容認した最高裁判決を見て、やむなく起立した人。もっと若く、通達発出当時、一時は断念して命令に従った人。五次訴訟には、そういう原告が少なからずいます。
 その屈折と悔恨の痛みは、直接には法廷で語られることのない現場の教員の苦しみを代弁するのではないでしょうか
 2020年の卒業式はコロナ感染対策を巡って、一旦は「国歌斉唱」を実施しなくてよいと読める通知が都教委から出され、各校の校長から問い合わせが殺到するや、同口に「国歌斉唱」だけは例年通りに実施せよとの通知が改めて出されました。
 それは、多くの管理職がしなくていいならありがたいと思っている証拠です。

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 東日本大震災の日の朝、私は校長室のドアを叩きました。その前日、一次訴訟の東京高裁で、すべての処分の取消しを命ずる判決が出されたのです(その後、最高裁で逆転。戒告は容認)。
 「これじゃ、通達も職務命令も意味がないよ」校長は不貞腐れたように言いました。
 そのとおりです。これまでの裁判で減給処分や停職処分のほとんどは取り消されましたが、“一番軽い”戒告は取り消されていません。そして、このことが今もって東京の公立学校を縛っています。
 おそらく都教委は教員が内心どう思っていようと構わないのでしょう。ただ“公務員秩序に従って”“外形的行為“として、職務命令に従って「日の丸」に向かって立つ姿を生徒たちに見せ、“範を示せ”……服務事故再発防止研修で何度も迫られました。
 教師が命令や処分の重圧によって、生徒を立たせ・歌わせるための装置と化した現在の都立学校の在り方は、教育の名に値するとは思えません。
 誰もが解放されるには「戒告処分」が取り消されねばなりません。

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 今、この問題がマスコミに取り上げられることは、ほとんどありません。「通達」が本領を発揮するのは、このように人々の疑問や抵抗者が見えなくなった状況においてなのだと思います。
 「通達」発出当時から今のような日が近づいてくるのを、息を詰めて見つめてきました。その私も雇い止めを通告され、現場にいられる時間はもう長くはありません。五次訴訟が最後の裁判になります。
 この裁判で、生徒や若い先生たちに、私が高校生だった頃のような“自由な都立”を渡したい……。そのために何ができるのか、誰に声を届けられるのか、今も模索しています。
 「通達」関連裁判で延べ76件65名の処分取消が確定しています。この成果を一歩でも前進させ、東京都の教育行政に人権と民主主義を取り戻すことが、私たちの課題です。
 そうした中、2019年春、アイム'89の申し立てに応えて、ILO/ユネスコから「日の丸・君が代」の強制を是正するよう勧告が出されました。五次訴訟はこの勧告後、初の裁判でもあります。国際社会からのエールが、日本の、東京の子どもや若者に届くことを願っています。ぜひご支援をお願いします.
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 137号』(2021.4)

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