★ 日本の実情を伝える人権報告書
自由権規約第5回日本政府報告に対する「カウンターレポート」
18.一般市民の政治ビラ配布に対する干渉・弾圧(19条)
A 結論と提言
日本政府は、政治的内容を含むビラを配布するという表現行為は、基本的に自由であるとの立場に立ち、都道府県警察、及び、その管轄下にある警察署が度々行っているビラ配布に対する任意性のない同行、及び、逮捕等規約第19条にある言論表現行為の自由を著しく侵す捜査に対して、法規の厳格解釈の立場から厳しく監督すべきであり、捜査権の濫用に対し、関係機関を通じてこれを中止するよう指導すべきである。
B 規約人権委員会の懸念事項・勧告
該当なし
C 意見
1.昨今、とりわけ東京をはじめとする都市部において、選挙政策もしくは政治的意見を記載したビラその他の印刷物(以下単に「政治ビラ」という)に対し、警察は、それを携行若しくは配布したというだけで、それらの者に対し、様々な法令を駆使して職務質問、任意同行、逮捕等を行っており、言論の自由をめぐる状況は従来にない様相となっている。
ここでビラと呼ぶものは一枚チラシから数ページのリーフレット形式のものまであって、野党やその議員や平和・人権団体がその要求を記載した文書若しくは要求アンケート用紙などであり、日本国憲法上も言論表現の自由又は政治活動の自由として保障されている表現行為である。
日本においてはこのような政治ビラはこれまで街頭配布及び各戸への配布というかたちで日常化しており、従来、何ら問題となることはなかった。
2.日本においては、今日自衛隊のイラク派兵及びその自衛隊を軍隊化する内容の憲法改正などが大きな政治問題のひとつになって浮上している。こうした方向を推進する政府の政策に対し、国民世論からの批判も多い。そのような声は当然、野党の政治要求にも反映することになるし、平和・人権団体がそれぞれの要求を掲げ言論活動を活発させることになる。警察は政党その他このような団体などの政治ビラによってこうした批判的世論が高まることを恐れる政府の意向を汲み、先走りして世論封じを行っている傾向がみられる。
3.都市部では、一般にマンションなどの集合住宅が多く、住民の多くはこうした住宅に集中して居住している。マンションと呼ばれる共同住宅は玄関に施錠がなく、これまで建物内への出入りは自由であり、一階の玄関では近くに設けられた集合ポスト(郵便受け)若しくは各戸玄関扉に設けられた個別ポスト(郵便受け)を通じて様々な郵便や宣伝物が住民に届けられてきた。このような共同住宅へも政治ビラの各戸配布はその必要と効果の上からしばしば行われてきた。
4.問題はこうした自由に出入りできるマンションなどの集合住宅の敷地又は建物内の玄関・階段・通路などの共用部分において、政治ビラを携行若しくは配布する者に対し、これを犯罪とみなし、度々警察がこれに干渉し強制捜査の対象としていることである。
例をあげれば
a)自衛隊及びその家族の居住する寮へのイラク派兵反対のビラの各戸郵便受けへの配布した者を逮捕(立川自衛隊官舎ビラ配布事件) 2004.2.27
b)マンションへのイラク派兵反対及び憲法改正反対のビラの集合郵便受けへの配布した者を逮捕(中央区月島マンションビラ配布堀越事件) 2004.3.3
c)マンション敷地内において年金問題を扱った野党機関紙号外ビラを携行し歩行していた者を逮捕(東村山ビラ携行事件) 2004.5.2
d)警察官寮へのビラを各戸郵便受けへ配布していた者を逮捕
e)マンションへの都議会だより及び区議団だより等のビラの各戸郵便受けへの配布していた者を逮捕 2004.12.23
などである。
a)及びe)については刑法の住居侵入罪、b)及びd)については国家公務員法違反、c)については軽犯罪法が適用された。いずれも法条の要件を拡張解釈することによって、言論表現の自由を抑圧する扱いであった。
5.これらの事件の特徴は、第一にいずれも警察関係者と思われるマンション住民に呼び止められ、その場で携帯電話などで警察に通報され、現場にかけつけた警察官に任意同行を求められ、警察署で逮捕され、多くは勾留され起訴されたものであること、第二は捜査には刑事警察ではなく公安警察が乗り出し、公安警察主導で捜査が進められ、こうした政治ビラを公安事件として扱っていることである。
マンションの集合及び各戸の郵便受けに毎日多数届けられる一般の商業用のビラは全く不問に附されているにもかかわらず、政府に批判的な政治ビラだけがこうした取り締まりの対象になっているところに重大な問題がある。
6.いうまでもなく、政治ビラ配布は言論表現行為のひとつであり、最大現尊重されなくてはならない。上記配布を犯罪として取り締まった各ケースは、いずれの場合も、その内容においても、配布態様においても規約第19 条Ⅲの制限を可能とする事由にどれも該当しない。現在裁判所において審理中のものが、一審では無罪判決が出ているが、控訴審の高裁ではいずれも有罪の判決となっている。
政治ビラ配布にたいする逮捕及びその後の捜査を含む取り締まりは規約第19 条違反であり、これを敢行している警察捜査に対し、監督機関である国家公安委員会及び都道府県公安委員会は、冒頭に述べた適切な措置をとるべきであるのに、これを怠っている。警察組織の最高組織は警察庁であり、国の機関である。
よって、日本政府に対し、冒頭の監督及び指導を強く求める。
2008年 3月
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/08counterreport.pdf
自由権規約第5回日本政府報告に対する「カウンターレポート」
18.一般市民の政治ビラ配布に対する干渉・弾圧(19条)
A 結論と提言
日本政府は、政治的内容を含むビラを配布するという表現行為は、基本的に自由であるとの立場に立ち、都道府県警察、及び、その管轄下にある警察署が度々行っているビラ配布に対する任意性のない同行、及び、逮捕等規約第19条にある言論表現行為の自由を著しく侵す捜査に対して、法規の厳格解釈の立場から厳しく監督すべきであり、捜査権の濫用に対し、関係機関を通じてこれを中止するよう指導すべきである。
B 規約人権委員会の懸念事項・勧告
該当なし
C 意見
1.昨今、とりわけ東京をはじめとする都市部において、選挙政策もしくは政治的意見を記載したビラその他の印刷物(以下単に「政治ビラ」という)に対し、警察は、それを携行若しくは配布したというだけで、それらの者に対し、様々な法令を駆使して職務質問、任意同行、逮捕等を行っており、言論の自由をめぐる状況は従来にない様相となっている。
ここでビラと呼ぶものは一枚チラシから数ページのリーフレット形式のものまであって、野党やその議員や平和・人権団体がその要求を記載した文書若しくは要求アンケート用紙などであり、日本国憲法上も言論表現の自由又は政治活動の自由として保障されている表現行為である。
日本においてはこのような政治ビラはこれまで街頭配布及び各戸への配布というかたちで日常化しており、従来、何ら問題となることはなかった。
2.日本においては、今日自衛隊のイラク派兵及びその自衛隊を軍隊化する内容の憲法改正などが大きな政治問題のひとつになって浮上している。こうした方向を推進する政府の政策に対し、国民世論からの批判も多い。そのような声は当然、野党の政治要求にも反映することになるし、平和・人権団体がそれぞれの要求を掲げ言論活動を活発させることになる。警察は政党その他このような団体などの政治ビラによってこうした批判的世論が高まることを恐れる政府の意向を汲み、先走りして世論封じを行っている傾向がみられる。
3.都市部では、一般にマンションなどの集合住宅が多く、住民の多くはこうした住宅に集中して居住している。マンションと呼ばれる共同住宅は玄関に施錠がなく、これまで建物内への出入りは自由であり、一階の玄関では近くに設けられた集合ポスト(郵便受け)若しくは各戸玄関扉に設けられた個別ポスト(郵便受け)を通じて様々な郵便や宣伝物が住民に届けられてきた。このような共同住宅へも政治ビラの各戸配布はその必要と効果の上からしばしば行われてきた。
4.問題はこうした自由に出入りできるマンションなどの集合住宅の敷地又は建物内の玄関・階段・通路などの共用部分において、政治ビラを携行若しくは配布する者に対し、これを犯罪とみなし、度々警察がこれに干渉し強制捜査の対象としていることである。
例をあげれば
a)自衛隊及びその家族の居住する寮へのイラク派兵反対のビラの各戸郵便受けへの配布した者を逮捕(立川自衛隊官舎ビラ配布事件) 2004.2.27
b)マンションへのイラク派兵反対及び憲法改正反対のビラの集合郵便受けへの配布した者を逮捕(中央区月島マンションビラ配布堀越事件) 2004.3.3
c)マンション敷地内において年金問題を扱った野党機関紙号外ビラを携行し歩行していた者を逮捕(東村山ビラ携行事件) 2004.5.2
d)警察官寮へのビラを各戸郵便受けへ配布していた者を逮捕
e)マンションへの都議会だより及び区議団だより等のビラの各戸郵便受けへの配布していた者を逮捕 2004.12.23
などである。
a)及びe)については刑法の住居侵入罪、b)及びd)については国家公務員法違反、c)については軽犯罪法が適用された。いずれも法条の要件を拡張解釈することによって、言論表現の自由を抑圧する扱いであった。
5.これらの事件の特徴は、第一にいずれも警察関係者と思われるマンション住民に呼び止められ、その場で携帯電話などで警察に通報され、現場にかけつけた警察官に任意同行を求められ、警察署で逮捕され、多くは勾留され起訴されたものであること、第二は捜査には刑事警察ではなく公安警察が乗り出し、公安警察主導で捜査が進められ、こうした政治ビラを公安事件として扱っていることである。
マンションの集合及び各戸の郵便受けに毎日多数届けられる一般の商業用のビラは全く不問に附されているにもかかわらず、政府に批判的な政治ビラだけがこうした取り締まりの対象になっているところに重大な問題がある。
6.いうまでもなく、政治ビラ配布は言論表現行為のひとつであり、最大現尊重されなくてはならない。上記配布を犯罪として取り締まった各ケースは、いずれの場合も、その内容においても、配布態様においても規約第19 条Ⅲの制限を可能とする事由にどれも該当しない。現在裁判所において審理中のものが、一審では無罪判決が出ているが、控訴審の高裁ではいずれも有罪の判決となっている。
政治ビラ配布にたいする逮捕及びその後の捜査を含む取り締まりは規約第19 条違反であり、これを敢行している警察捜査に対し、監督機関である国家公安委員会及び都道府県公安委員会は、冒頭に述べた適切な措置をとるべきであるのに、これを怠っている。警察組織の最高組織は警察庁であり、国の機関である。
よって、日本政府に対し、冒頭の監督及び指導を強く求める。
2008年 3月
国際人権活動日本委員会
自由法曹団
日本国民救援会
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟
自由法曹団
日本国民救援会
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/08counterreport.pdf
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