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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

そもそも金融政策でデフから脱却しようという発想そのものが間違い「まず大幅な賃金アップが先決」

2018年08月11日 | 格差社会
 ◆ 先進国でデフレは日本だけ。
   20年の失策を生んだ大企業のドケチな経営
(まぐまぐ!ニュース!)
by 大村大次郎『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

 7月31日、これまで5年に渡り行われてきた大規模な金融緩和の修正を発表した日銀の黒田東彦総裁。デフレ脱却の掛け声の元進められてきたこの政策、目標としてきた2%の物価上昇も未だ達成されていませんが、「失策」だったのでしょうか。これを受け、「そもそも金融政策でデフレから脱却しようという発想そのものが間違い」とするのは、元国税調査官にして経営コンサルタントの大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でその論拠を示すとともに、「本気でデフレ脱却したいのならすぐすべきこと」について記しています。
 ◆ なぜ日銀の金融緩和はデフレに効かないのか?
 7月31日、日銀の黒田総裁が、金融緩和の継続を発表しました。長期金利の上昇を容認するなどの若干の修正はありましたが、これまでの大規模な金融緩和は継続するということです。
 黒田バズーカと呼ばれる日銀の大規模な金融緩和策が始められてから5年も経つのですね。2%の物価上昇を目的に始められたこの金融緩和。当初は、すぐにでも目標達成するようなことを言われていましたが、5年経ってもまだ達成されず。今となっては「達成する見込みも立っていない」という状況です。
 そもそも、金融緩和でデフレを脱却しようという発想そのものが大きな間違いなのです。それは、バブル崩壊後の日本経済のデータをちょっと眺めてみれば、誰でもわかることなのです。
バブル崩壊後の日本経済は、デフレに苦しめられてきました。そして「デフレのために、人件費は下がり、国民生活は苦しくなった」「だからデフレを脱却すべし」という事が、さかんに言われるようになりました。が、が、この考え方そのものが実は間違っているのです。
 「デフレになったから人件費が下がった」のではなく「人件費が下がったからデフレになった」のです。それは、少しデータを調べれば誰でもわかります。
 ◆ デフレの原因は「賃金」
 日本の平均給料の推移と、物価の推移を見比べてみれば、それは一目瞭然なのです。
 国税庁のデータによると、日本の給料は、この20年間で20ポイントも下がっているのですが、給料が下がり始めたのは平成9年なのです。
 しかし物価が下がり始めたのは平成10年です(金融庁データ)。
 つまり給料の方が早く下がり始めているのです。これをみると、デフレになったから給料が下がったという解釈は、明らかに無理があります
 現在の日本のデフレの最大の要因は、賃金の低下と捉えるのが自然でしょう。また理屈から言っても、これは自然な考えのはずです。給料が下がったので消費が冷え、その結果物価がさがったというのが、ごく当然の解釈になるはずです。
 ◆ この20年間、先進国で賃金が上昇していないのは日本だけ
 これは国際間のデータ比較も、明確にそれを指示しています。実は、近年、先進国の中で、デフレで苦しんでいるのは日本だけなのです。そして、先進国の中で、この20年間で、給与が下がっているのは、先進国ではほぼ日本だけなのです。
 この20年のうち、先進国はどこの国でもリーマン・ショックを経験し、同じように不景気を経てきました。でも、OECDの統計によると、先進国はどこの国も、給料は上がっているのです。EUやアメリカでは、20年前に比べて平均収入が30ポイント以上も上がっているのです。日本だけが給料が下がっているのです
○この20年間、デフレで苦しんでいるのは先進国では日本だけ
○この20年間、人件費が下がり続けているのは先進国で日本だけ
 この二つの事実を重ね合わせたとき、「日本は人件費が下がっているからデフレになっている」ということがわかるはずです。
 つまり、日本のデフレの原因について「日本国内でのデータ」と「国際比較でのデータ」の二つのルートで同じ解答を示しているのです。
 しかし、日本の政治家や経済評論家、財界たちは、ずっとこの事実に目を向けず、「デフレから脱却すれば、すべてが好転する」というようなことを言ってきました。そして、金融政策で、デフレから脱却しようと試みてきたのです。
 しかし、いくら、金融緩和したところで、給料が減っていれば、安いものしか買えないわけですし、物価が上がらないのは当然なのです。だから「デフレを脱却すれば人件費が上がる」という発想をやめ「まず人件費を上げることが先決」という考えを持つべきだったのです。
 ◆ 日本の企業は世界で一番ケチ
 日本の企業の財務状況が悪く、人件費が上げられないという状況であれば、人件費が下がっても仕方ないかもしれません。が、日本の企業は、現在のところ世界でもっとも内部留保金をため込んでおり、お金は腐るほど持っているのです。
 日本の企業は、バブル崩壊後、「国際競争力を高める」という建前のもと、賃金の上昇を抑えて、非正規雇用の割合を増やしてきました
 しかも、バブル崩壊後の日本企業は、決して景気が悪かったわけではなく、高い収益率を維持してきました。
 その結果、会社の中にお金が溜りこみ、内部留保金は400兆円に達しています。これは日本経済の倍以上の規模を持つ、アメリカよりも大きいものであり、断トツの世界一なのです。
 しかも、日本企業は、内部留保金を投資に回すことも少なく、現金預金で200兆円を持っているのです。
 つまり、日本経済は、
「バブル崩壊後も決して悪くはなかったのだけれど、金が企業の内部で滞留しているために国民のところまで流れてこず消費が増えない」
「だからデフレで苦しんでいる」のです。
 ◆ 人件費を上げることがまず第一
 さすがに政府も最近になってこのことに気づき、安倍首相などは、財界に賃金アップを働きかけたりもしています。だからここ数年では、若干、賃金も上がっています。
 が、それでも、バブル崩壊以降に下がった分に比べると、焼け石に水という程度なのです。本気でデフレから脱却しようと思うのであれば、まず賃金の大幅アップをするべきなのです。
 少なくとも、他の先進国がこの20年間、行なってきた分の賃金上昇くらいはやらないと、到底、日本はデフレから脱却したりはできませんし、国民生活も良くはならないのです。
 日銀がどれほど大規模な金融緩和をしても、「水道の元栓は全開にしているけれど、蛇口が錆びていて水が出ない」というような状況なのです。
 ※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2018年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
『まぐまぐ!ニュース!』(2018.08.03)
https://www.mag2.com/p/news/366881
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